女性の健康課題とは? 健康経営の実現につながる解決策や企業事例を解説
「女性の健康課題とは?」
「健康経営を実現するために、企業が取り組むべき解決策は?」
このように、健康経営を推進するうえで、女性の健康課題をどう捉え、どのような施策につなげればよいのか悩んでいる人事担当者の方もいるでしょう。
女性の社会進出により働く女性が増えている一方で、健康面のサポートが十分にできていないことが問題視されています。近年は健康経営優良法人の認定要件にも女性の健康課題に関する項目が設けられており、企業としても注視すべき課題の一つです。
本記事では、企業が把握するべき女性の健康課題や、健康経営の実現につながる解決策も含めて解説します。
女性特有の健康課題とは

女性特有の健康課題は以下のとおりです。
- 月経に伴う体調不良
- 婦人科疾患
- 不妊治療
- メンタルヘルス不調
- 女性ホルモンの減少に伴う症状
- 更年期障害
それぞれの課題について詳しく解説します。
月経に伴う体調不良
女性特有の健康課題として、月経にまつわる体調不良が挙げられます。内閣府男女共同参画局による調査で、月経による体調不良で生活に支障があると回答した割合は以下のとおりです。
| 症状 | 生活に支障があると回答した割合 |
|---|---|
| 月経痛(下腹部痛、腰痛、頭痛など) | 72.9% |
| 月経中の体調不良(だるさ、下痢、たちくらみなど) | 69.7% |
| 月経前の不調(月経前症候群など) | 66.3% |
| 月経中のメンタルの不調 | 64.1% |
| 経血量が多い | 57.0% |
参考:「令和5年度男女の健康意識に関する調査報告書第2章調査結果」(内閣府男女共同参画局)
最も多かったのは月経痛で72.9%、回答者の約7割が下腹部痛や腰痛、頭痛などの症状を経験していると答えています。
上記の症状に対する対処法として、市販薬や漢方を服用している方は34.8%、症状が重い場合に休暇を取得している方は13.5%でした(※)。一方、とくに対処していない方は43.0%の割合にのぼります。
月経の症状には個人差があり、とくに対処していない方もいる一方で、市販薬や漢方などに頼らなければ日常生活を送れない方も少なくありません。企業は従業員が働きやすい環境を整えるために、症状に応じた柔軟な対応が求められます。
(※)「令和5年度男女の健康意識に関する調査報告書第2章調査結果」(内閣府男女共同参画局)
婦人科疾患
婦人系の疾患も、女性特有の健康課題として挙げられます。厚生労働省による調査で、2021年1月〜12月に新たにがんと診断された女性の罹患数は以下のとおりです。
| 部位 | 女性のがん罹患数 |
|---|---|
| 乳房 | 98,782名 |
| 子宮頸部 | 10,690名 |
| 子宮体部 | 19,071名 |
| 卵巣 | 13,456名 |
参考:「令和3年全国がん登録罹患数・率報告」(厚生労働省)
女性のがん罹患数では、「乳がん」が98,782名と最も多い状況です。婦人系の疾患はがんだけでなく、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気があります。
婦人科疾患は初期段階では自覚症状が乏しいことや、月経痛と類似した症状のために、発見が遅れるケースも少なくありません。婦人科疾患の早期発見・治療を促すには、定期的な検診が必要です。
不妊治療
不妊治療と仕事の両立も、女性特有の健康課題として捉えるべきです。厚生労働省の調査によると、不妊治療中の従業員に向けて支援制度を実施している企業の割合は10.6%でした(※)。
支援が進まない背景には、従業員が不妊治療を行っていることを企業が把握できていないことや、従業員からの要望が寄せられていないことなどが挙げられます。しかし、不妊治療は定期的な通院が必須で、仕事の日程調整が難しい場合が多くあります。
また、症状によっては投薬や手術しなければならないこともあり、体力的・精神的な負担は大きいものです。そのため、不妊治療と仕事を両立できず、雇用形態の変更を希望する方や離職する方も少なくありません。
このような背景から、不妊治療を続けながら仕事と両立できる職場づくりが求められます。
(※)「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」(厚生労働省)
メンタルヘルス不調
育児や介護などのライフイベントに伴うメンタルヘルス不調も、女性が抱える健康課題として挙げられます。厚生労働省が精神および行動の障害の受療率を、人口10万人あたりの人数に換算して調査した結果は以下のとおりです。
| 精神および行動の障害の受療率 | 入院 | 外来 |
|---|---|---|
| 女性 | 178 | 211 |
| 男性 | 164 | 182 |
参考:「令和5年(2023)患者調査の概況」(厚生労働省)
男女を比較すると、女性の受療率が入院・外来ともに高いことが分かります。女性は年代によってホルモンバランスが大きく変動し、月経前不快気分障害(PMDD)や産後うつなど、女性特有の症状が見られることもあります。
また、出産・育児・介護などのライフイベントによる負担が重なりやすく、職場や家庭での役割分担から強いストレスを抱えるケースも少なくありません。こうした背景から女性はメンタルヘルス不調に陥りやすいため、予防・改善につながる取り組みが求められます。
女性ホルモンの減少に伴う症状
女性ホルモンの減少により骨粗鬆症や尿失禁などの症状が起こることも、女性特有の健康課題です。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨量や筋肉量を維持する役割があります。しかし、更年期〜老年期になると女性ホルモンの分泌が大幅に減少するため、骨粗鬆症や骨盤底筋の低下による尿失禁などの症状が起こりやすくなります。
実際に骨粗鬆症患者は推計1,590万人とされ、そのうち1,180万人を女性が占める状況です(※1)。また、尿失禁は中高年女性の34.5%に症状があり、男性(11.4%)に比べて高い有訴率を示しています(※2)。
こうした症状は個人差があるため、必ずしも周囲から理解されるとは限りません。女性に安心して働き続けてもらうためには、女性特有の健康課題に関する啓発活動や、症状に合わせたサポートが必要です。
(※1)「数字でみる骨粗しょう症」(公益財団法人骨粗鬆症財団)
(※2)「中高年者における尿失禁に関する調査」(J-Stage)
更年期障害
更年期障害も、女性特有の健康課題の一つです。更年期障害とは、心身の不調(ほてり・のぼせ・落ち込みなど)が日常生活に支障をきたす状態のことを指します。
厚生労働省の調査によると、更年期障害を自覚している人のうち、日常生活に影響が出ていると回答した女性割合は40〜49 歳で11.7%、50〜59歳で6.9%でした(※)。更年期障害は管理職として組織の中核を担う年代(40代〜50代)で起こりやすく、症状が原因で離職につながれば人材流出や組織運営への影響が懸念されます。
更年期障害による離職を防ぐには、全従業員に対して更年期障害に対する理解を深めることが大切です。また、従業員の症状に合わせたサポートを行ったり、職場環境を改善したりすることが求められます。
(※)「更年期症状・障害に関する意識調査(結果概要)」(厚生労働省)
ライフステージ別の女性にまつわる健康課題
女性にまつわる健康課題について、ライフステージ別に以下の表にまとめました。
| ライフステージ | 年齢の目安 | 代表的な健康課題 | 懸念される影響 |
|---|---|---|---|
| 社会人初期 | 10代後半~20代 | ・月経痛 ・月経前症候群(PMS) ・婦人科疾患 ・メンタルヘルス不調 | ・欠勤、遅刻 ・集中力や判断力の低下 ・パフォーマンスの波 |
| 出産適齢期 | 20代~30代 | ・つわり ・切迫流産 ・産後うつ ・不妊治療 | ・長期休業や離職 ・通院による業務中断 ・精神的不調 |
| キャリア中盤 | 40代~50代 | ・更年期障害 ・婦人科疾患 ・メンタルヘルス不調 | ・慢性的疲労 ・集中力低下 ・コミュニケーション不全 ・役職離脱 |
| キャリア後半~定年期 | 60代以降 | ・骨粗鬆症 ・尿失禁 | ・体力低下 ・外出や立ち仕事の制限 ・転倒やけがのリスク |
上表のとおり、女性にまつわる健康課題はライフステージごとに症状が異なります。自社に合った女性の健康課題に対する解決策を検討するには、ライフステージ別にどのような症状が起こりやすいかを把握することが重要です。
女性の健康課題が重要視される背景
経済産業省は女性の健康課題による経済損失を算出し、年間約3.4兆円も損失していると公表しました。ここでいう損失には、欠勤や休職、パフォーマンス低下、離職による採用・育成コストなどが含まれます(※)。
また、第3回健康経営推進検討会では、健康経営優良法人2026の評価項目に「女性の健康保持・増進に向けた取り組み」が組み込まれたことが公表されました。これまでも女性の健康課題に関する項目が設けられていましたが、より具体的な施策の実施が求められています。
現状では、女性特有の症状を把握できず、どのようなサポートを行えばいいのか対応できていない企業も少なくありません。その結果として、女性従業員の離職率増加や生産性の低下につながるケースが見られます。
企業が人材確保や生産性向上を図るためには、自社の女性従業員が抱える課題を洗い出し、解決につながる施策に取り組むことが大切です。
(※)「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(経済産業省)
女性特有の健康課題に対する解決策

女性特有の健康課題に対する解決策は以下のとおりです。
- 休暇制度の整備
- 柔軟な働き方の導入
- 研修やセミナーの実施
- 婦人科疾患の検診・処方費用の負担
- 外部の専門家と連携
これらの取り組みは、健康経営優良法人の認定を受けるための調査表を踏まえた解決策です。健康経営優良法人を目指す場合は、上記の解決策を参考にして自社に合った取り組みを実施しましょう。
それぞれの解決策を詳しく解説します。
休暇制度の整備
女性の健康課題に沿った休暇制度を導入することで、体調不良時でも気兼ねなく休暇を取得しやすくなります。女性の健康課題に沿った主な休暇制度は以下のとおりです。
- 生理休暇
- 不妊治療休暇
- 妊娠・出産休暇の延長
- 更年期休暇など
「生理」や「更年期」などの名称は、プライバシーに関わるため取得をためらう従業員も少なくありません。ウェルネス休暇やセルフケア休暇などのように休暇制度の名称を変更し、取得しやすい環境を整備することが大切です。
柔軟な働き方の導入
テレワークや時差出勤などの柔軟な働き方を導入することも、女性の健康課題の解決に有効です。通院や体調不良に合わせて勤務時間を調整できると、離職や休職を防ぎやすくなるでしょう。
企業が取り入れられる柔軟な働き方は以下のとおりです。
- テレワーク
- フレックスタイム制
- 時差出勤
- 午前or午後休暇
- 週3・4出勤など
業務内容や女性従業員の状況・症状を踏まえ、本人の希望と業務の都合を調整しながら多様な働き方を選べるのが理想的です。
研修やセミナーの実施
女性特有の症状に関する従業員向けの研修やセミナーを実施することも、女性の健康課題の解決にアプローチできます。月経や更年期などの正しい知識を理解し、健康リテラシーが向上することで、従業員の症状に適した業務サポートや働き方の選択が可能になるでしょう。
従業員向けの研修やセミナーの実施方法としては、女性の健康課題に詳しい専門家を招いた対面セミナーやオンライン配信などがあります。資料を配布する際は、女性が抱える症状や悩みを羅列するだけでなく、症状ごとの対処法や周囲が配慮するべき内容などを具体的に示すことが大切です。
女性の健康課題に関する教育は、健康経営優良法人の調査項目に含まれるため、企業にとっても意義があるといえます(※1)(※2)。
(※1)「令和7年度健康経営度調査(従業員の健康に関する取り組みについての調査)」(経済産業省)
(※2)「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)認定申請書」(経済産業省)
婦人科疾患の検診・処方費用の負担
婦人科疾患の検診や処方費用を負担することも、女性の健康課題を解決する手段です。病気の早期発見や治療につながり、従業員の健康増進・保持につながります。
婦人科疾患の検診や処方にかかる費用は、福利厚生として経費計上することも可能です。ただし、福利厚生として婦人科疾患の検診や、処方費用を補助するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 全従業員が対象であること
- 社会通念上妥当な範囲内の金額であること
- 金銭ではなく現物支給であること
検診や薬にかかる自費負担が少なくなることで、従業員が進んで検診を受けやすくなります。結果として、病気の早期発見や重症化防止につながり、企業にとっても人材定着や医療費抑制の効果が期待できるでしょう
外部の専門家と連携
女性の健康課題を解決するには、外部の専門家と連携を図ることも有効です。自社のリソースだけで十分な支援ができない場合は、女性の健康課題に詳しい外部の専門家と連携し、支援サービスの導入や相談体制を強化することが大切です。
男性従業員が多い企業では、女性にまつわる悩みを男性上司に相談しにくく、適切な支援制度を利用できない場合があります。女性医師や産業医が在籍する社外相談窓口を設置できれば、女性従業員が抱える健康課題の解決につながるでしょう。
近年では、法人向けのフェムテックサービスを導入する企業もあります。フェムテックとは、テクノロジーを活用して女性の健康課題を解決・支援する製品やサービスのことです。
スマホやウェアラブルデバイスを利用して、月経や睡眠などの管理が行えるため、従業員の体調管理をサポートできます。自社の女性従業員がどのようなサポートを求めているのかニーズを把握したうえで、サービスを選定することが重要です。
企業が女性の健康課題解決に取り組むメリット

企業が女性の健康課題解決に取り組むメリットは以下のとおりです。
- 健康経営優良法人の認定要件を満たせる
- 人材確保につながる
各メリットについて詳しく解説します。
健康経営優良法人の認定要件を満たせる
健康経営優良法人の認定要件を満たすには、女性の健康保持・増進に向けた取り組みが求められます。健康経営優良法人とは、従業員の健康を経営的な視点で戦略的に取り組んでいる企業や法人のことです。
健康経営優良法人2026年の認定要件では、女性の健康課題に関する教育について、具体的な取り組み内容を回答する項目が新設されました(※1)(※2)。
女性の健康保持・増進への取り組みは、健康経営優良法人認定における複数要件の一つです。健康経営優良法人の認定を取得するには多角的な取り組みが必要ですが、その一環として女性の健康課題に配慮した施策を導入することは、企業の評価向上につながります。
(※1)「令和7年度健康経営度調査(従業員の健康に関する取り組みについての調査)」(経済産業省)
(※2)「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)認定申請書」(経済産業省)
人材確保につながる
企業が女性の健康課題に取り組むことで、人材の確保につながります。総務省の労働力調査によると、2024年の女性労働人口は3,157万人であり、前年より33万人も増加しました(※)。
男性労働人口は3,800万人で女性の労働人口より多いものの、前年より1万人も減少しています(※)。女性の労働人口は増えている一方で、男性の労働人口は減少している状況です。人材不足が加速する現代において事業を安定的に継続するためには、女性が働きやすい職場づくりが重要です。
(※)「労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果」(総務省)
女性の健康課題に対する企業の取り組み事例

女性の健康課題に取り組んだ企業事例を3つ紹介します。他社の取り組み事例を参考に、自社に適した施策を検討してみてください。
女性の健康に関するセミナーを各拠点で実施した事例|株式会社新日本科学
株式会社新日本科学は、健康増進を目的に健康施策を開始しました。具体的には、女性の健康課題に対する取り組みとして「ライフステージごとの女性ホルモンの働き」や「月経周期」に関するセミナーを実施しています。
同社では、リラックスしてセミナーを受講できるよう、アロマやハーブティーを取り入れました。また、女性が抱える悩みに対して具体的な解決策を記載した資料も配布しています。
こうした取り組みの結果、女性従業員から好評を得られたと報告されています。
(※)「株式会社新日本科学|企業取組事例」(働く女性の心とからだの応援サイト)
がん検診受診率向上に取り組んだ事例|株式会社ワコール
株式会社ワコールは、生活習慣病・がん対策・メンタルヘルス対策のカテゴリーで目標計画を定めて、達成に向けて健康対策を開始しました。具体的には、乳がんや子宮がん検診の受診率向上のために、内勤者は就業時間中の受診、外勤者は定期健康診断で受診できるように整備を進めました。
がん検診の費用は、健保組合の補助金によりほぼ自己負担なく受診可能を実現しています。また、かかりつけ病院で検診する従業員には、別途補助金を申請できる制度を設けました。
こうした取り組みの結果、がんの早期発見・治療につながったと報告されています。
(※)「株式会社ワコール|企業取組事例」(働く女性の心とからだの応援サイト)
女性の健康課題に寄り添った解決策を実施しよう
女性が抱える健康課題には以下のようなものがあります。
- 月経に伴う体調不良
- 婦人科疾患
- 不妊治療
- 妊娠・出産
- メンタルヘルス不調
- 女性ホルモンの減少に伴う症状
- 更年期障害
企業は女性がライフステージごとに抱える健康課題を理解し、課題に適した解決策に取り組むことが大切です。また、女性の健康課題にまつわる取り組みは、健康経営優良法人の認定取得につながります。自社の女性従業員が抱える健康に関する悩みを把握し、解決につながる対策法を検討しましょう。
なお、健康経営優良法人の取得に関しては、女性の健康課題にまつわる取り組み以外にもさまざまな施策が必要となります。健康経営の概要やはじめ方などをまとめた資料を用意したので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
健康経営/産業保健コラムシリーズ
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