セミナー実施も有効?従業員のヘルスリテラシーを向上させる施策とは

企業が主体的に従業員の健康管理に取り組み、組織の活力向上、生産性アップを目指す健康経営の推進には、従業員の「ヘルスリテラシー」の向上が重要であるといわれています。ヘルスリテラシーについては耳慣れないと感じる担当者もいるかもしれません。今回は、ヘルスリテラシーの定義や重要性、ヘルスリテラシーを高めるセミナーについて解説します。
そもそも「ヘルスリテラシー」とはなにか?

「ヘルスリテラシー」とは、健康や医療に関する情報を見つけ、理解して、活用することができる力のこと、すなわち健康情報を正しく選択して評価できる知識、さらにその情報をもとに自身の健康改善を実現できる能力のことを指します。つまり、ヘルスリテラシーが高い人は、自分自身の健康を自発的に守り、QOL(生活の質)を維持・向上することができる人であるともいえるでしょう。
シドニー大学やサウサンプトン大学で学長を勤め、公衆衛生研究の第一人者として知られるナットビームよって提唱された定義によると、ヘルスリテラシーは3つの段階に分けられます。
①基本レベルの機能的ヘルスリテラシー
「医師や薬剤師からの説明が理解できる」「医薬品の説明書を読んで理解できる」といった情報理解力のこと。健康や医療に関する日常的な情報を理解する基本能力です。
②基本レベルを発展させた相互作用的ヘルスリテラシー
「知人から健康情報を入手する」「評判のよい病院を調べて通院する」など、健康や医療に関する情報を自分で探したり、他人に伝えたりと、情報を適切に扱い行動する能力です。他とのコミュニケーションによって情報を入手し、理解するため、社会性を備えていることが前提となり、機能的ヘルスリテラシーを発展させた段階を指します。
③より高度なレベルの批判的ヘルスリテラシー
「流行中の病気を調べ、予防や治療の方法をシェアする」「健康情報を収集して自分の生活に生かしつつ、社内にも情報発信する」など、健康や医療に関する情報を鵜呑みにせず、あらゆる視点から分析した上で、主体的に活用できる能力のことです。自分自身のためだけでなく、集団やコミュニティにも影響を与えられる、より高度な段階です。
急速な情報化が進み、あらゆる情報へのアクセス・入手が容易となった近年、ヘルスリテラシーにおいて重要な情報の理解や評価、活用といった能力の重要性も高まっています。膨大な情報を精査できず、受け身で誤った情報をそのまま活用してしまうと、自身の健康を害することにつながりかねません。自他の健康を守るためにも、ヘルスリテラシーを身につける必要があるのです。
ヘルスリテラシーの向上によるメリットは?
先述の通り、ヘルスリテラシーが高い人は自分自身の健康を守り、さらなる向上が期待できる一方で、リテラシーが低い人は健康への悪影響が予想されます。たとえば、リテラシーが高い場合は病気や薬に関する正しい情報を自分で調べ、治療のメリット・デメリットを理解できるので、正しい選択ができたり、病気のサインを見逃さずに適切なタイミングで医療機関を受診したりすることが可能です。
一方、リテラシーが低ければ、病気や薬の誤った情報に振り回されてしまったり、病気の小さな自覚症状を見逃してして重症化してしまったりするリスクがあります。
従業員のヘルスリテラシーが向上すると、健康に関する企業の取り組みについても理解が深まり自発的な参加姿勢が生まれるので、健康経営の推進もスムーズになるというメリットもあります。そのため、従業員のヘルスリテラシー向上に取り組むことは、健康経営企業にとって重要なことだといえるでしょう。
健康経営において優れた取り組みを実施する企業が認定を受けることができる「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」(ホワイト500/ブライト500)の認定条件には、従業員のヘルスリテラシー向上に関する取り組みも含まれています。健康経営企業として社会的評価や企業価値を向上させるためにも、従業員のリテラシーを高め、企業の取り組みへの理解が深めることが重要だといえるでしょう。
従業員のヘルスリテラシーを高める方法

企業が主導して従業員のヘルスリテラシー向上を図るには、まず、従業員のリテラシーレベルを把握する必要があります。アンケート形式などでヘルスリテラシーや健康への関心度を確認しましょう。設問はヨーロッパヘルスリテラシー質問用紙(European Health Literacy Survey Questionnaire:HLSEU-Q47)などを参考にすると良いですが、誤解がないように、しっかりと整えることが大事です。実施に関してはストレスチェックなどと併せて行うことでスムーズに回答を集めることができるでしょう。従業員のヘルスリテラシーレベルを把握すれば、どのような施策を打つべきなのか、レベルに応じて考えることができるようになります。具体的には、下記のような施策が考えられます。
従業員に向けた健康情報の発信
従業員が自分で情報の取捨選択ができるようになるまでは、企業が正しい健康知識を提供する必要があります。後述するセミナーの実施のほか、社内で健康メディアを立ち上げる、掲示物を貼るなどの取り組みを始めてみるといいでしょう。ただ、従業員によって年代や性別、業務内容などで必要な情報は異なるため、従業員それぞれに適切な情報が届くような工夫は必要です。
専門家への相談窓口を設置する
心配な自覚症状があっても軽度であれば放置してしまいがちですが、それにより重大な疾病につながる可能性も少なくありません。病院に行くべきか悩む従業員に向けては、社内で専門の相談窓口を設置するなど、身近で気軽に相談できる体制を作りましょう。
セミナーを実施する
自社での情報提供について量や質に課題を感じるようであれば、健康セミナーを社内で実施することを検討してもよいでしょう。専門家の話を聞き、客観的なデータや最新情報を見ることで、健康についての理解を効率的に深めることができます。セミナー実施に向けた適切な人材を社内で用意できない場合は、外部委託するのもひとつの手です。オンラインセミナーを実施している企業サービスも数多く展開されているので、ぜひ検討してみください。
ヘルスリテラシーの高さは個人の健康リスクに直結するので、その向上は健康経営の視点からも積極的な施策推進が望まれるところです。まずは自社の従業員のヘルスリテラシーを把握し、状況に応じて外部の研修やセミナーも活用しながら、従業員全体で健康リテラシーを高めるよう努めてください。
<参考URL>
- Nutbeam D: Health promotion glossary. Health Promot Int 1998; 13(4): 349-64.
https://doi.org/10.1093/heapro/13.4.349
- ヘルスリテラシーって何?|公益社団法人 東京都医師会
https://www.tokyo.med.or.jp/healthliteracy
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