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仕事と治療の両立支援とは? なぜ必要なのかを対象疾患や事例とあわせて解説

公開日: 2025.10.9
更新日: 2026.2.19
治療と仕事の両立支援とは? 対象疾患 事例

「仕事と治療の両立支援とはどのようなものだろうか」「なぜ企業が仕事と治療の両立を支援する必要があるのだろう」

仕事と治療の両立支援について、上記のような疑問や悩みをもつ人事労務担当の方は多いでしょう。

仕事と治療の両立支援とは、病気を抱える従業員が治療をしながら、仕事を続けられるように企業が支援することです。充実した両立支援制度があれば、優秀な人材が病気を理由に離職しないため、企業にとってもメリットがあります。

この記事では、仕事と治療の両立支援の概要や企業が両立支援を行う意義、企業が利用できる助成金や支援制度などについて解説します。自社に合った取り組みを検討するための参考にしてください。

仕事と治療の両立支援とは?

仕事と治療の両立支援とは病気を抱えている従業員が、治療と仕事のバランスを取りながらその人らしい働き方を続けられるように支援することです。企業は医療機関や支援機関などと協力しながら、病気にかかった従業員がより長く働けるように、勤務環境の調整や制度設計を行う必要があります。

なお、両立支援は従業員側だけではなく、企業側にとっても多くのメリットがある取り組みです。

  • 人材の安定した長期雇用による労働力の確保
  • 従業員の安心感やモチベーションの向上による人材定着率や生産性の向上
  • 健康経営や多様な人材雇用の実現による社会的評価の向上
  • 高い能力や意欲を持つ人材の離職防止による採用コストの削減

また、両立支援は健康経営の実践にも直結します。従業員の健康維持や疾病による離職防止は、企業の生産性や持続的成長の基盤であり、健康経営優良法人認定制度でも「私病等に関する復職・両立支援の取り組み」は評価項目とされています(※)。

つまり、両立支援の整備は従業員のためだけでなく、社会的評価や認定取得にもつながる、企業経営において欠かせない施策だといえるでしょう。

(※)「健康経営優良法人2026(大規模法人部門)認定要件」(株式会社日本経済新聞社)
(※)「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)認定要件」(株式会社日本経済新聞社)

仕事と治療の両立支援がなぜ必要なのか?

企業において仕事と治療の両立支援がなぜ必要なのか、主な理由は次の3つです。

  • 高齢化で病気を抱えながら働く人が増えているため
  • 優秀な人材を雇用し続けるため
  • 法改正で両立支援が努力義務化されるため

それぞれの理由について、詳しく解説します。

高齢化で病気を抱えながら働く人が増えているため

労働人口の高齢化が進む日本においては、病気を抱える人材、疾患リスクの高い人材の雇用が必然的に増加すると見込まれています。

厚生労働省の広報誌「厚生労働」によると、高齢化が進む日本の労働人口の約3人に1人は、すでになんらかの病気を抱えながら働いている状況です(※)。今後も高齢化や定年延長、再雇用制度の拡大により、治療と就労を両立しながら働く労働者は一層増えると予測されます。

このような現状を踏まえると、企業が治療と仕事の両立支援を整備しなければ、従業員は安心して働き続けることができません。制度や環境を整えることは、社会的にも企業経営的にも避けて通れない課題となっています。

(※)「厚生労働」(厚生労働省)

優秀な人材を雇用し続けるため

企業は優秀な人材を雇用し続けるためにも、仕事と治療の両立支援を行わなければなりません。病気になってしまったことで、仕事と治療の両立ができず離職を選択する人は多く存在します。

厚生労働省が実施した中高年者縦断調査によると、健康上の問題を理由に離職した人は離職者全体のうち約10%を占めており、その割合は「定年」「契約満了」に次いで多くなっています(※)。

退職せざるを得ない環境が続く企業では、優秀で意欲的な人材が病気になったときの離職リスクが非常に大きいでしょう。優秀な人材に「病気になっても長く働きたい」と思ってもらえる環境を作るためにも、企業は仕事と治療の両立支援制度を整えなければなりません。

(※)「中高年者縦断調査 / 令和4年中高年者縦断調査 就業の状況」(厚生労働省)

法改正で両立支援が努力義務化されるため

2026年からは仕事と治療の両立支援を行うことが努力義務化されることもあり、社会の流れとしても仕事と治療の両立が必要とされています(※)。労働人口の高齢化やそれに伴う病気のリスクを抱えて働く人口の増加を政府も問題視しており、今回の法改正に至ったと考えられます。

多くの企業が制度整備を進めるなか、対応していない企業では従業員のロイヤリティやモチベーションの低下を招き、採用面でも不利になる可能性が出てくるでしょう。

病気の発症後だけでなく、発症前から安心して仕事をしてもらえるよう制度と環境を整えておくことが、これからの企業に求められる姿勢といえます。

(※)「令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について」(厚生労働省)

仕事と治療の両立支援が必要となる対象疾患

両立支援の対象となるのは、反復・継続して治療が必要となる疾患です。短期で治癒するものは対象となりません。反復・継続して治療が必要となる疾患の例として、厚生労働省は次のものを挙げています。

  • がん
  • 脳卒中
  • 心疾患
  • 糖尿病
  • 肝炎
  • その他難病やメンタルヘルス不調

それぞれの病気で対応が異なる場合も多く、企業においても従業員の疾患に合わせた対応が求められることに留意しなければなりません。

厚生労働省の公開するガイドラインでは、上記で挙げた病気に対する具体的な留意事項が紹介されています。従業員の負担を最小限に抑えて、両立支援をスムーズにしたい場合はガイドラインを参考に対応しましょう。

また、身体疾患に罹患すると同時にメンタルヘルスに不調を抱えるケースも少なくありません。そのため、病気に罹患した従業員がいる場合は、メンタルヘルスへの配慮も重要です。

仕事と治療の両立支援を開始する流れ

仕事と治療の両立支援の流れは次の通りです。

  1. 従業員(患者)から両立支援を受けたい旨の申し出を受ける。
  2. 従業員(患者)の勤務情報提供書作成を支援する。
  3. 従業員が勤務情報提供書を主治医に提出し、主治医意見書の発行を受ける。
  4. 主治医意見書をもとに、両立支援のプランを作成するか、休業開始の対応を支援する。
  5. 治療をしながら仕事を続ける場合は、作成した両立支援プランを実行する。
  6. 一時的に休業する場合は、休業制度や休業可能期間、復職手続きを事前に説明して従業員(患者)が休業に入る。

なお、厚生労働省のガイドラインやハンドブックを活用すればより詳しい流れを把握でき、さらに必要書類の様式例もダウンロードできます。

また、治療と仕事の両立支援カードもあり、これを使えば主治医と事業者が必要な情報を従業員経由でやり取りできます。公的なものも活用しながら、主治医と協力して従業員のサポートを行いましょう。

両立支援に取り組む企業が利用できる助成金や公的機関

企業が従業員の仕事と治療の両立支援を行う際には、助成金や公的支援機関を利用できる場合があります。支援時に利用可能な制度の一部を紹介します。

助成金概要
団体経由産業保健活動推進助成金事業主団体等を通じて、中小企業等の産業保健活動(治療と仕事の両立支援を含む)の支援を行う制度
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等へ転換する事業主が受けられる助成金
障害者介助等助成金障害者の職場定着、職場復帰を図るため、必要な介助者の配置などの特別な措置を行う企業が受けられる助成金
職場適応援助者助成金企業が雇用する障害者に対して、企業在籍型職場適応援助者を配置して、職場適応援助を行わせる場合に受けられる助成金

参考:「治療と仕事の両立について」(厚生労働省)

支援機関概要
産業保健総合支援センター治療と仕事の両立支援のための専門の相談員を配置し、セミナーや個別訪問指導などの支援を行っている
障害者就業・生活支援センター障害者の職業生活における自立を図るため、関係機関と連携しつつ、障害者の就業面および生活面における一体的な支援を行っている
地域障害者職業センター企業に対して、雇用管理に関する専門的な助言その他の支援を行っている
難病相談支援センター関係者からの相談対応や労働者(患者)と事業者の間の調整支援などを行っている

参考:「治療と仕事の両立について」(厚生労働省)

病気を抱える従業員を雇用し続ける場合には、費用的負担やリソース的負担がかかることも多いでしょう。しかし、助成金や公的支援を活用すれば、従業員にも企業にも負担の小さい両立支援を目指せます。それぞれの助成金や支援制度には適用のための条件があるため、利用を検討する際は最新の適用条件を事前に確認しましょう。

また、従業員が受けられる支援制度も厚生労働省の「治療と仕事の両立について」に記載があるため、相談を受けた場合には紹介してあげると親切です。

仕事と治療の両立支援を行った事例

仕事と治療の両立支援を行った次の2つの事例を紹介します。

  • 全国46ヶ所に産業保健スタッフを配置し活用する事例
  • 休業者への支援プログラムを設定し復職支援を行う事例

それぞれの事例について、どのような支援を行ったか詳しく見ていきましょう。

全国46ヶ所に産業保健スタッフを配置し活用する事例

東京海上日動火災保険株式会社では、地域ごとの個別支援や相談に対応するために産業保健スタッフを全国46ヶ所に配置しました。さらに、定期検診とがん検診も同時に行い、一定数の早期発見につながっています。

精密検査を行う場合には、産業保健スタッフが受診結果を確認し、必要に応じて上司や人事部門と連携して両立支援を行っています。

精密検査の段階から産業保健スタッフが関わり、治療計画の確認や本人と上司への就業上の配慮や社内制度の説明を行うことも本事例の特徴です。

復職時も産業医が従業員の体調をオンライン面談で確認して判断するほか、産業保健スタッフ(産業医・看護職)に相談できる制度を整えて心理的な支援も行っています。

このような体制により、従業員の治療継続と職場復帰の両立を可能にしています。企業の調査によると、治療している従業員のみならず、周囲の従業員のエンゲージメントも向上しているそうです。

参考:「両立支援の取組事例」(厚生労働省)

休業者への支援プログラムを設定し復職支援を行う事例

従業員が休業に入る際や、復職する際にできるだけ不安が小さくなり、焦って復職を急がないように支援するプログラムを設定している企業事例を紹介します。

株式会社ツムラでは、7日以上の休職が必要な場合な従業員に対しては、休業の期間や経済的なサポートの内容を事前に説明し、不安を軽減してから休業に入らせる制度を取っています。

復職時にも、休業者支援プログラムで段階的に労働時間を増やしていく体制を整備しました。

3ヶ月を目安として、第一クールではコアタイムのみの勤務、第二クールでは2つ設定した勤務時間から1つを選択して勤務、最終クールでは残業や出張なしの所定勤務時間の通常勤務を行う形です。

事前に十分な説明を行うことで、焦った復職の防止、さらには段階的な復職による本人の体力回復などが確認されています。

参考:「両立支援の取組事例」(厚生労働省)

仕事と治療の両立支援で安心して働ける環境を作ろう

仕事と治療の両立支援とは、病気の従業員が治療を続けながらも無理なく働けるように支援することです。

労働人口が高齢化する日本において、病気を抱えながら仕事を続ける人は増加すると考えられるため、仕事と治療の両立支援は今後対応が必須になるでしょう。

両立支援の流れや企業が利用可能な助成金・公的支援機関などについては、厚生労働省のハンドブックやガイドラインを参考にしましょう。

なお、仕事と治療の両立支援は、健康経営度の調査票でも評価項目となっている重要な取り組みです。

両立支援の方針策定が難しい人事労務担当の方向けに、企業が取り組むべき環境整備のポイント、実際の支援フローを紹介した産業医監修の資料を用意しました。

この資料を読むことで、自社にマッチした両立支援の方針が策定できるようになります。印刷して社内配布も可能ですので、従業員の仕事と治療の両立支援の方法に悩む人事労務担当の方はぜひ参考にしてください。

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