健康経営/産業保健コラム健康経営実行支援コンサルティング

2026年は経営層、企業文化への浸透が鮮明に 第3回健康経営推進検討会が開催

2025.7.31
第3回健康経営推進検討会

2025年7月18日、経産省は第3回健康経営推進検討会を開催し、健康経営優良法人認定制度の新たな方針と2026年度の改訂案を議論しました。従来の取り組みを強化する形での改訂が多く行われた一方、新たに食育実践優良法人顕彰制度との連携の詳細なども発表されました。今後企業にどのようなことが求められるのかを主要な変更点とともに解説します。

改めて求められる『健康経営』の価値とは

健康経営を今まで主導してきた経済産業省は、2014年の健康経営度調査の開始以来、『健康経営』を日本経済社会の基盤へと昇華させていきたいという強い意志を持って進めてきました。近年では推進の柱として

  • 健康経営の可視化と質の向上
  • 新たなマーケットの創出
  • 健康経営の社会への浸透・定着

の3点を掲げて推進しています。この方針を引き継ぐ形で、本年度からは認定制度の運営が日本経済新聞社へと移管され、官民が連携して普及を加速させる新体制がスタートしています。今回の調査票改訂は、この新体制下でこれら3本柱を具体化する第一歩と言えるでしょう。

特に今回の改訂では企業価値を高める健康経営の本質的意義を見つめ直し、調査票をベースに、多様な健康経営が推進できる体制づくりを狙ったほか、地域・社会への還元など社会的意義にも注目した内容が盛り込まれています。また、近年力を入れている女性の健康課題に関しては、理解を促進するだけでなく、よりフラットな視点から性差に関する課題として捉え直すことが行われています。

また、制度に関しても、改訂頻度や銘柄企業の選定方法の再検討なども議論の俎上に上がりました。
ここからはより具体的な変更点と照らし合わせながら見ていくことにしましょう。より本質的な健康経営を求めて行われているため、改訂ポイントは多岐にわたりますが、特にこれから申請を考えている企業が気をつけておくべき箇所があります。それぞれ、調査票の改訂部分、優良法人認定に係る項目、新たに今年度から始める農林水産省との取り組みの3つに分けて説明します。

経営層の関与など、健康経営優良法人の今後が見える3大改訂ポイント

まずは、経済産業省や健康経営事務局が重視してきた経営層の関与を含む大きな改訂ポイントから。これらは組織的に健康課題を解決するには欠かせない要素であり、今後の健康経営の方向性を左右する項目でもあります。

①経営層の「本気度」を問う新基準~議事録から意思決定内容へ

これまで、経営層の関与を測る指標の一つとして「経営レベルの会議で健康経営を議題化した回数」が問われてきました。しかし、この形式では「議題にはしたが議論は形式的」といった実態が見えにくく、形骸化を招く懸念がありました。そこで2026年認定からは、この設問を抜本的に見直し、取締役会や経営会議といった会議体で、健康経営に関して何を「決定」し、どのような「報告」を受けているか、その具体的な中身を問う形式に変更されます。

出所:第3回健康経営推進検討会事務局資料(今年度施策及び調査等の方向性について)より抜粋

この変更に合わせて、昨年度、健康経営優良法人認定事務局編として改訂された健康経営ガイドブックに基づいた健康経営推進方針、目標、KGI、KPIの定義の整理も求められます。企業は経営戦略の中に健康経営をどう位置づけ、具体的な投資(リソースや予算)の意思決定を行い、その効果をどうモニタリングしているのか、一連のガバナンスプロセスを明確に示すことが求められるようになるわけです。まさに、経営層の「本気度」がこれまで以上に厳しく評価されることになります。

出所:令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動及び申請認定に関するご報告から抜粋

②PHRデータ活用が本格化 録るだけから活用を見据えた戦略立案へ

PHR(Personal Health Record)の活用は、従業員一人ひとりの健康意識を高める上で、近年需要が高まっています。今回の改訂ではPHRの活用をさらに一歩進め、組織的な健康課題の解決に繋げる取り組みを評価する視点が強化されました。特に大きいのが産業医や保健師といった専門職・医療職との連携体制の評価です。従業員が自身のPHRを基に、相談を行える体制が整っているかを評価項目に追加することで、データに基づいた個別のアドバイスを受けやすい環境づくりを促す狙いです。

出所:第3回健康経営推進検討会事務局資料(今年度施策及び調査等の方向性について)より抜粋

集計データの活用についても評価項目に追加されています。個人データを匿名加工し、個人が特定できない形で活用することで、「実施した施策の効果検証」や「次年度以降の施策検討」、「保険者と協働での施策検討」に繋げているかを問う設問が新たに評価対象(加点)となっています。ツールを導入するだけで終わってしまうことを防ぎ、健康経営施策のPDCAサイクルを回す戦略的な取り組みを重視する姿勢の表れでしょう。

出所:第3回健康経営推進検討会事務局資料(今年度施策及び調査等の方向性について)より抜粋

③未来の健康への投資となる「プレコンセプションケア」項目を追加へ

「骨太の方針2025」にも盛り込まれるなど、国を挙げて推進している「プレコンセプションケア」に関しても追加されています。プレコンセプションケアは、性別を問わず、若いうちから将来の妊娠や生涯にわたる健康を考えてヘルスケアを行うという考え方。この重要な概念の職域への浸透を図るため、調査票のアンケート項目として、プレコンセプションケアの認知度や具体的な取り組み内容(研修、相談窓口の設置など)を問う設問が新設されます。また、ヘルスリテラシーの向上を目的とした教育内容にも「将来的な健康・体力低下の予防」が追加されるなど、まずは認知拡大・教育での普及を目指した形で健康経営に組み込まれる形になります。

出所:第3回健康経営推進検討会事務局資料(今年度施策及び調査等の方向性について)より抜粋

アンケート内容は企業が従業員のライフデザインとキャリアデザインを長期的な視点で支援する姿勢を問うものであり、今後の健康経営における新たな潮流となる可能性を秘めています。

個別施策はより多様性を重視する傾向へ

続いて紹介していくのは、個別の施策に関する部分です。これまでも重視されてきた性差・高齢者、育児・介護との両立支援、コラボヘルス、地域やサプライチェーンとの連携部分に関して具体的な内容を問う質問が増えています。今まで曖昧な表現だったものをしっかりと金銭面とワーク面で分けることで、企業の取組の多様性も浮き彫りにしたい考えでしょう。

①女性・高齢従業員の健康課題から「性差・年代」への配慮へ

女性の社会進出や高齢者雇用の拡大といった就業構造の変化は、企業が向き合うべき健康課題を多様化させています。そのことから、近年の調査票には女性と高齢従業員への健康課題対策が盛り込まれていました。今回の改訂では、この動きをさらに加速させつつフラットな形に反映し、多様な人材が健康でいきいきと働き続けられる環境づくりを意識した内容へと変わっています。

その象徴として、認定要件の小項目には「性差・年代を踏まえた職場づくり」が新設され、「女性の健康保持・増進に向けた取り組み」と「高年齢従業員の健康や体力の状況に応じた取り組み」が評価項目として組み込まれています。この評価項目の新設に伴い、認定に必要な選択要件数が変更されます。

  • 大規模法人部門: 16項目中13項目以上 → 17項目中14項目以上
  • 中小規模法人部門: 15項目中7項目以上 → 17項目中8項目以上
出所:令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動及び申請認定に関するご報告から抜粋

女性の健康課題については、年間約3.4兆円とも試算される経済損失への対策が急務とされています。また、高齢従業員についても、身体機能の変化に対応した職場環境の整備や働き方の配慮が、労働災害防止と生産性維持の両面で重要です。この変更で、これまで以上に、多様な従業員一人ひとりの健康課題に目を向けた、きめ細やかな施策展開が求められることになります。

②中小規模法人でも「育児・介護との両立支援」が評価項目に

中小規模法人にとって死活問題になりつつある人材の確保と定着を解消する重要な施策として、従業員がライフイベントと仕事を両立できる環境の整備は不可欠となっています。その実態を反映する形で、昨年度はアンケート項目であった「育児または介護と就業の両立支援に向けた取り組み」が、中小規模法人部門の認定要件(選択項目)に追加される方向で検討されています。

出所:令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動及び申請認定に関するご報告から抜粋

令和6年5月に改正された育児・介護休業法の内容も踏まえ、法定を上回る柔軟な勤務制度や研修、相談体制の整備などが評価の対象となってるのが特徴です。これは、中小企業が魅力ある職場づくりを進める上で、両立支援が重要な一手であることを示すメッセージと言えるでしょう。

③健康経営の価値をさらに波及させる「ホワイト500」の認定要件拡大

健康経営のトップランナーとされる「ホワイト500」に関してもメスが入ります。ホワイト500認定企業に期待されている、自社の取り組みに留まらず社会全体へその価値を波及させる行動をより明確に定義するため、認定要件が拡大される方向になっています。これまで選択要件であったステークホルダーへの働きかけが整理され、2026年度からはホワイト500の認定要件として、「国内外のグループ会社への健康経営推進方針の浸透」と「取引先・他社への健康経営の支援」の両方を実施していることが必須となります。

出所:令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動及び申請認定に関するご報告から抜粋

単なる資料提供や意見交換に留まらない、「戦略マップ作成のノウハウ提供」や「具体的な健康経営施策の直接提供」といった、より踏み込んだ支援を評価できるよう、選択肢も具体的な内容へ変更が提案されています。これにより、ホワイト500企業にはサプライチェーン全体、ひいては社会全体の健康レベルを引き上げるハブとしての役割が明確に求められるようになりました。

④健康保険組合との連携が認定の基礎条件に

健康保険組合等保険者と事業主が連携して健康課題に取り組む「コラボヘルス」は健康経営の効果の検証だけでなく高める上でも重要な取り組みですが、ここの強化も図られています。従来は40歳以上の従業員の健診データ提供が認定の必須要件になっていましたが、その実施率が96.5%に達したことを受け、誓約事項へと移行、一方で実施率が約8割に留まっていた40歳未満の従業員の健診データ提供を新たに大規模法人部門の必須要件へと変更になります。

出所:令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動及び申請認定に関するご報告から抜粋

若年層のデータも保険者と共有することで、より早期からの生活習慣病予防や健康課題の把握が可能となり、生涯を通じた健康づくりの基盤を強化する狙いがあります。

農林水産省とコラボする形で食育実践優良法人顕彰制度の詳細が決定へ

第1回健康経営推進検討会で発表された農林水産省による食育実践優良法人顕彰制度の認定要件とスケジュールも明らかにされました。この制度は従業員の食生活改善に優れた取り組みを行う企業を顕彰する制度で、健康経営優良法人に申請していることが認定要件の一つであることが明らかにされていました。今回の発表では、従業員に対し、「食生活の改善」に資する取組を実施し、かつ、

  1. 特定の従業員や事業所を対象にした取組を含め、企業全体に取組が波及することを目指した取組であること。
  2. 取組に対して経営層の理解を得ており、企業全体として企業理念や行動指針 などで取組が明確化されていること。
  3. 取組実績があり、継続的に取り組んでいること。
  4. 取組の実施内容、導入手順、運用方法等の公表が可能であること。
  5. 暴力団及び代表者、役員、使用人その他の従業員又は構成員に暴力団員等に該当する者がいないこと。

の5要件を全て満たしている法人を認定することが明らかになりました。

出所:農林水産省 消費・安全局 消費者行政・食育課提出資料(食育実践優良法人顕彰制度について)より抜粋

認定には別途農林水産省の食育実践優良法人顕彰制度ウェブサイトより10月31日までへの申請が必要になります。農林水産省は、健康経営の枠組みを活用し、食育の推進を図りたい考えです。

経営戦略として深化する健康経営を目指す姿勢がより鮮明に

今回の改定内容を見ていくと、健康経営が新たなステージに入ったことが明確に示されています。現状、いかにうまく調査票を書くかが重要視されたり、単に制度の要件を満たすためのやらされ仕事になっている面は否定できません。これに対し、経営層の強いリーダーシップのもと、多様な従業員の活躍を支え、ステークホルダー全体へと価値を広げていく、まさに「人的資本経営の中核」としての役割を果たせることを狙った内容へと変更されています。

企業に対し、自社の理念やパーパス(存在意義)に基づき、「自社にとっての健康経営とは何か」を改めて問い直すことを迫るものでもあります。検討会の議論でも「画一的な制度対応ではなく、それぞれの企業のありたい姿を尊重すべき」との意見が出ており、今後は企業の独自性や戦略性がより一層重要になることが予想されます。来る申請期間に向けて、今回の変更点を正確に理解し、自社の取り組みを見直し、経営戦略と連動したストーリーとして語れるよう、今から準備を進めていくことが成功の鍵となりそうです。

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