仕事と育児の両立を支援する方法とは? 課題や解決策についても解説

「企業として、どのように仕事と育児の両立支援を行えばよいのだろう」と悩む人事労務担当の方は多いでしょう。
従業員のライフイベントによる離職を回避するためにも、仕事と育児の両立支援は重要です。柔軟な勤務体制や復職支援の充実など、両立させるための方法は多くあります。
この記事では、企業が仕事と育児の両立支援をする意義や支援方法、制度が活用されない場合の対策などについて解説します。この記事を参考に、自社にマッチした仕事と育児の両立支援を行いましょう。
企業が仕事と育児の両立支援をする意義
企業が仕事と育児の両立支援をすれば、次のようなメリットが得られます。
- 従業員の離職防止
- 健康経営の推進
- 従業員のエンゲージメント向上
- 採用力の強化
従業員の仕事と育児の両立支援をすることで、企業は従業員のライフイベントによる離職を回避できます。
採用や育成には多大なコストと時間がかかります。しかし、両立支援が不十分なために従業員が離職すれば、それらの投資が無駄になってしまうでしょう。
また、従業員の健康管理を経営の視点から重視する健康経営においても、両立支援は欠かせません。健康経営優良法人認定制度の中小企業部門でも、育児・介護の両立支援を評価項目にすることが検討されており、社会的にも両立支援を推進する動きが見られます(※)。
さらに、両立支援の制度が不十分だと従業員のエンゲージメントが低下する、採用の際に不利になるなどデメリットが多いです。
社会の流れに取り残されないように、両立支援はなるべく早めに開始し、両立支援をしていないことによるデメリットを回避しましょう。
仕事と治療の両立支援について詳細に知りたい方はこちらも併せてご確認ください。
【産業医監修】治療と仕事の両立支援~多様な人材の力を最大化する方策~
(※)「令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動及び申請認定に関するご報告」(厚生労働省)
(※)「2026年は経営層、企業文化への浸透が鮮明に 第3回健康経営推進検討会が開催」(GO100)
従業員の仕事と育児を両立させるための6つの方法

従業員の仕事と育児を両立させるための6つの方法を紹介します。
- 短時間勤務やフレックスタイム制を導入する
- 在宅勤務やサテライトオフィスの環境を整える
- 仕事と育児の両立支援制度を利用する
- 柔軟な有給休暇制度を導入する
- 産休や育休からの復職支援を強化する
- 子育てに関わる社内インフラを見直す
それぞれの方法について、詳しく解説します。
短時間勤務やフレックスタイム制を導入する
柔軟な勤務時間で働けるようにすることで、従業員が育児の時間を確保しやすくなります。
たとえば、次のような制度を導入すると、従業員が自身の都合に合わせて勤務形態を選択でき、仕事と育児を両立しやすくなるでしょう。
| 制度や勤務形態 | 概要 |
| 短時間勤務(※1) | ・育児・介護休業法で義務づけられている制度・3歳に達するまでの子を養育する従業員は、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮して勤務できる・企業によっては、小学校入学前まで利用できるなど対象年齢を拡大しているケースもある |
| 短時間正社員(※2) | ・同じ仕事をするフルタイム正社員と比較して待遇が同一であるが、1週間の所定労働時間が短い正社員制度・能力や意欲がフルタイム正社員と同等かそれ以上であるのに、育児や介護などで長時間の勤務が難しい従業員の雇用を維持できる |
| フレックスタイム制(※3) | ・あらかじめ定めた所定の総労働時間の範囲内で、労働者が日々始業・就業の時刻を決定できる制度・従業員が日々自身の都合に合わせて就業できるため、仕事と育児のバランスを取りながら働きやすい・コアタイム無しの「スーパーフレックス制度」も従業員の働きやすさ向上に役立つ |
| 中抜け勤務 | ・所定の勤務時間中に一時的に業務から離れて、育児に関わることをできる制度・法律上の義務ではないが、企業独自の施策として導入可能・子の保育園への送迎や急な通院などの際に利用できて、子育ての事情を考慮しながら仕事も滞りなく進められる |
| 週休3日制 | ・週の休日を3日にして、育児の時間に余裕をもたせる制度・週休2日では手が回らなかった育児により多くの時間をかけられるため、親子関係改善や従業員のゆとりある育児に貢献する |
| 育児時間の設定 | ・1歳未満の子をもつ従業員が通常の休憩時間と別に1日2回、30分以上の休憩時間を請求できる制度・授乳のための時間や、子どもを保育園に送迎する時間に当てられるため、従業員はゆとりをもって仕事と育児を両立できる |
柔軟な働き方を導入することで、仕事と育児の両立の難しさから休職や退職を余儀なくされる従業員も減らせます。その結果、安定した雇用の維持や人材定着につながり、生産性・業績の向上効果も期待できるでしょう。
(※1)「育児・介護休業法のあらまし」(厚生労働省)
(※2)「短時間正社員」(厚生労働省)
(※3)「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」(厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
在宅勤務やサテライトオフィスの環境を整える
在宅勤務制度やサテライトオフィス環境の整備を行えば、通勤時間が削減できて時間的余裕ができるため、従業員は仕事と育児の両立を目指しやすくなります。
在宅勤務を導入すれば、従業員は子どもの送迎や急な病気などにも対応しながら業務ができます。保育園の利用が一時的に難しい場合でも働き方を柔軟に調整できるため、離職防止や人材確保にも有効です。
サテライトオフィスは会社と同等のセキュリティや通信環境を備えた場所で勤務できるため、在宅勤務に不安があるという場合の有効な選択肢になります。近隣の従業員同士が交流できる拠点となり、チームワークの強化にもつながるでしょう。
なお、在宅勤務やサテライトオフィスを導入する場合、担当業務により出社格差が生じないように配慮する必要があります。出社格差があると、社員がもつ情報に差が出ることや、不公平感から会社へのロイヤリティーが低下することなどが懸念されるためです。
オフィス以外の場所でも滞りなく業務が進むように、オンラインサービスの導入や不要な業務の見直しなどを積極的に検討しましょう。
仕事と育児の両立支援制度を利用する
企業だけでの対応が難しい場合には、国や自治体が行う公的な仕事と育児の両立支援制度を利用することも検討すべきです。
次のような両立支援制度を利用することで、従業員が仕事と育児の両立を目指しやすくなります。
| 支援制度 | 概要 |
| 両立支援等助成金(※1) | ・男性従業員の育児休業時や、柔軟な働き方のためのリモートワーク、フレックスタイム制を導入した際に助成金を受け取れる制度・両立支援施策による企業の費用的負担を抑えるもの |
| 賃上げ促進税制(※2) | ・企業が一定率以上に給与などの賃上げをした場合、増加額の一部を法人税から控除できる税制度・育休中に支払った給与も対象となる場合があり、結果として育休取得の後押しする効果がある |
| プランナーによる仕事と家庭の両立支援(※3) | ・社会保険労務士・中小企業診断士などの資格をもつ人が育休(介護)復帰支援プランの策定支援をする制度・自社のみでは従業員の産休や育休に対する制度プランを立てることが難しくても、専門家がアドバイスしてくれるためスムーズに両立支援制度を整えられる |
育児・介護休業法や次世代育成支援対策推進法の改正により、仕事と育児の両立支援は企業にとっても重要な経営課題となっています。企業側の負担を抑えつつ仕事と育児の両立を目指せる制度も多く用意されているため、積極的に活用しながら従業員の仕事と育児の両立を支援しましょう。
(※1)「2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内」(厚生労働省・都道府県労働局)
(※2)「賃上げ促進税制」(経済産業省)
(※3)「『仕事と家庭の両立支援プランナー』の支援を希望する事業主の方へ」(厚⽣労働省)
柔軟な有給休暇制度を導入する
有給休暇を柔軟に利用できる制度を導入することで、仕事と育児の両立を支援できます。具体的には、次のような制度があります。
- 有給休暇を時間単位で取れるようにする
- 子の看護のための有給休暇を通常のものとは別に付与する
- 子の卒園式や入学式などの学校行事に参加するための有給休暇を付与する
通常の有給休暇だけでは日数が足りず、子どもの急な発熱などで休まざるを得ない場合や、学校行事に参加したい場合に対応しきれないケースも少なくありません。特別休暇を付与することで、従業員は安心して仕事と育児への参加を両立でき、企業としても従業員満足度の向上や定着率改善につながります。
なお、上記に挙げた制度の一部は法改正により義務化されているものもあるため、まだ社内規定を変更できていない場合は、早急に対応しましょう(※)。
(※)「育児・介護休業法改正のポイントのご案内」(厚⽣労働省)
産休や育休からの復職支援を強化する
産休や育休からの復職支援を強化することは、仕事と育児の両立を推進するうえで欠かせません。なぜなら、復職の見通しが立つことで、安心して産休や育休に入れるためです。
とくに男性の産休取得(産後パパ育休)はまだ一般的に浸透しているといえません。あらかじめ産休や育休からの復職プランを立てておくことで、育児に参加しやすい環境を作れるでしょう。
復職プランの作成が難しい場合は、厚生労働省が公開する「育休復帰支援プランの策定マニュアル」を参考にするのがおすすめです。
さらに、仕事と家庭の両立支援プランナーによるサポートを受けられる制度もあります。より詳しいノウハウをもつプランナーにサポートしてほしい事業主は、仕事と家庭の両立支援プランナーへの相談も検討しましょう。
子育てに関わる社内インフラを見直す
子育てに関する社内インフラを見直すことも、仕事と育児の両立支援につながる施策の一つです。
たとえば、事業所やビル内に保育所を設置する企業も増えています。オフィスと保育所が近いことで、従業員は子どもの送迎や急なトラブルにも対応しやすくなります。
また、社員食堂のスペースを従業員の子どもに開放した例もあります。この事例では学校や保育所が終わった後に子どもが安心して過ごせる場所をオフィス内に確保したことで、従業員が安心して業務を行えるようになりました(※)。
自社にマッチした施策が思いつかない場合は、厚生労働省が公開している事例集を参考にしましょう。業界や企業規模が近い企業の施策を検索できて、より自社にマッチするよいアイデアが見つかります。
(※)「女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集」(厚⽣労働省)
仕事と育児の両立の現状と課題

仕事と育児の両立の現状と課題を、次の3つとして解説します。
- 女性の負担が大きい状況が続いている
- 法制度を活用できていない企業が多い
- 制度を利用しにくい雰囲気がある
それぞれどのような課題であるか、確認しましょう。
女性の負担が大きい状況が続いている
改善傾向にはあるものの、仕事と育児の両立に伴う女性の負担は依然として大きいのが現状です。
たとえば、育児休暇の取得期間は女性と男性で大きな差があります。女性の育児休暇取得割合は9割以上で期間も6ヶ月以上と長い一方で、男性は育休取得者の約5割が2週間未満の期間しかとっておらず、育児負担が女性に偏っているのが現状です。
また、育児のための短時間勤務も、多くの場合は女性が選択し、男性はまだ少数しか選択できていません。具体的な数字でみると、短時間勤務の利用経験がある割合は、女性・正社員で40.8%、女性・非正社員で21.6%であるのに対して、男性・正社員は12.3%です。

さらに、育児休業取得率は、女性は8割台で推移しているのに対して、男性は約14.0%と非常に低い水準です。育児負担の大きい女性が仕事と育児の両立で困難を抱えやすい状況が、課題の1つといえます。
参考:「仕事と育児・介護の両立に係る現状及び課題」(厚生労働省 雇用環境・均等局職業生活両立課)
法制度を活用できていない企業が多い
法制度対応のために制度を整えている企業は多いものの、まだ十分に制度を活用できていない企業は少なくありません。たとえば、育児のための所定外労働の免除制度については、利用経験のある割合が低く、女性正社員で10.6%、女性非正社員で6.8%、男性正社員で8.4%にとどまります。
子の看護休暇についても、小学校就学前までの子どもをもつ労働者のうち、取得経験があるのは女性で16.2%、男性で6.7%にすぎません。さらに、取得日数については「5日未満」が最も多く、十分に活用されているとはいえない状況です。

また、1年間に子どもの病気のために利用した制度の日数の平均を制度等別にみると、正社員の男性・女性では、「年次有給休暇制度」が最も多く見られます。
このことから、現状はまだ看護休暇が浸透しておらず、制度として存在していても利用されていないケースも多いと考えられます。企業としては、制度があるだけでは不十分であり、制度を活用して両立を実現できる環境を整えるまでが重要と考えるべきだといえるでしょう。
参考:「仕事と育児・介護の両立に係る現状及び課題」(厚生労働省 雇用環境・均等局職業生活両立課)
制度を利用しにくい雰囲気がある
仕事と育児の両立支援制度があっても、それを利用しにくい雰囲気がある職場はまだ多く存在します。
仕事と育児の両立が難しく仕事を辞めた女性のうち、約14%は「支援制度はあったが利用できずに仕事を辞めた」と回答しています(※1)。
また、出産や育児を目的として休暇・休業制度を利用しなかった男性正社員の22%が、「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから」と回答しています(※2)。
男性でも女性でも、職場の雰囲気を理由に両立支援制度を利用しないケースは多く、制度を作るだけではなく利用促進の施策まで考える必要があるでしょう。
(※1)「人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて」(厚生労働省)
(※2)「男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集」(厚生労働省)
仕事と育児の両立を目的とした制度がうまく活用されない場合の解決策

仕事と育児の両立を目的とした制度がうまく活用されない場合、次のような解決策を実施しましょう。
- 従業員の業務負担を小さくする
- 男性が育児参加しやすい制度設計にする
- 制度を利用しやすい雰囲気を作る
それぞれの解決策について、より詳しく解説します。
従業員の業務負担を小さくする
業務を効率化して長時間労働を回避すれば、従業員は両立支援制度を気軽に利用できます。また、業務の属人化を解消すれば、それぞれの従業員が一時的に職場を離れても業務が円滑に回るようになるため、同僚へ気兼ねすることなく制度利用ができるようになるでしょう。
業務量が多い場合や、属人化によって自身にしか対応できない業務がある場合は、看護休暇や産休・育休を取得しにくくなります。その結果、育児に使える時間がなくなり、仕事に偏った時間配分をせざるをえない従業員も少なくありません。
非効率な業務や常態化した属人化は大きな経営リスクであるため、仕事と育児の両立支援も兼ねて早急に対処しましょう。
男性が育児参加しやすい制度設計にする
男性が育児参加しやすい制度設計にすることは、企業における両立支援制度の利用促進につながります。
支援制度を利用しにくいと感じている割合は男性が約22%、女性が約18%と、男性のほうがやや多い傾向にあります(※1)。また、男性の育児負担が進まないことで女性に負担が集中し、結果として女性の仕事と育児の両立支援の妨げにもなっているのが現状です。
なお、男性が子の出生後8週以内に育休を開始した場合や、男性の育休取得率が30%以上アップした場合などに助成金が支給されます(※2)。助成金も活用しながら、企業の負担を抑えつつ積極的に男性も育児参加しやすい制度設計をしましょう。
(※1)「男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集」(厚生労働省)
(※2)「2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内」(厚生労働省・都道府県労働局)
制度を利用しやすい雰囲気を作る
両立支援制度を利用しやすい雰囲気を企業が作ることで、従業員は安心して制度を利用できます。
育児のための休暇を取得しにくい雰囲気や、育休・産休などの長期休暇を取得しにくい環境であるなら、制度導入と同時に業務改善も行う必要があります。なぜなら、個々人の業務負担が大きいままだと、両立支援制度を使う人に対して良い印象を持たれず、制度を利用しにくい空気感になってしまうためです。
それぞれの従業員が抱える業務量が適切で、育児で一時的に職場を離れる人が出ても残りの人員で十分に対応できる業務量になっていれば、自然に制度の利用者は増えるでしょう。
仕事と育児の両立支援制度の推進は、社会的にも重要な課題であり、全社的に取り組むべき業務であると認識して、業務改善と制度を活用しやすい雰囲気づくりに取り組みましょう。
(※)「人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて」(厚生労働省)
制度を見直して従業員の仕事と育児の両立を支援しよう
少子化が加速するにつれて、子どもをもつ従業員が仕事と育児を両立させられるような体制づくりの重要性が増しています。また、大きな法改正も行われて、社会的にも仕事と育児の両立が重要であるとの認識が広がっています。
しかし、まだ育児支援制度の活用が難しい環境もあり、男女間の格差も存在しているなど、仕事と育児の両立のための課題は多い現状です。
育児との両立による睡眠不足、精神的ストレスは生産性の低下や離職につながる可能性があります。
企業は健康診断や運動だけでなく、ライフステージ支援も健康経営の一部と捉えるべきです。
エムスリーでは、健康経営優良法人取得サポートや社外健康管理室といった取り組みで、企業の健康経営の実現や、企業で働く人の健康のサポートを実施しています。仕事と育児の両立に関するサポートも実施しているので、ぜひご相談ください。
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