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会社員の健康診断はどこまでが企業側の義務? 注意点や実施後に対応すべきことを解説

2025.5.26

「会社員の健康診断はどこまでが企業の義務になる?」
「健康診断実施後に対応すべきことはある?」

自社社員の健康診断を実施するにあたって、企業で対応すべき業務はどこまでか悩む人事労務担当の方も多いでしょう。

企業には健康診断の実施だけでなく、結果の通知や適切な管理なども義務付けられています。実施しなければ罰則に科される可能性があるため、対応すべき業務を把握することが重要です。

本記事では、会社員の健康診断において企業側に義務付けられていることや、実施する際に考慮すべきポイントを解説します。

会社員の健康診断はどこまでが企業側の義務?

会社員の健康診断において、企業側は実施と結果の通知、管理を行う義務があります。

企業は条件を満たす会社員に年1回の健康診断を受けさせなければなりません。たとえ小さな会社でも、条件を満たす会社員が一人でもいる場合は、健康診断の実施が必要です。

また、健康診断の結果が出たら、本人に文書で通知し、さらに個人票を作成して5年間保管することも義務付けられています。

健康診断の結果によっては、医師からの意見を聴取したり、その意見に従って適切な措置を講じたりしなければなりません。定められた義務を守らなかった場合は、50万円以下の罰金に科される可能性があります。

一方、会社員側にも健康診断を受診する義務があります。ただし、違反した場合の罰則は設けられていません。自主的に健康診断を受けない会社員には、企業側から健康診断の受診を促すことが重要です。

そもそも健康診断は義務の有無以前に、働くうえでの健康を維持するという重要な役割があります。自社社員の健康を守る観点でも、企業は定期的に健康診断を実施すべきだといえます。

参考:「労働安全衛生法」(e-GOV法令検索)

企業に実施義務がある健康診断の種類

企業に実施義務がある健康診断は、以下の3種類に分けられます。

  • 一般健康診断
  • 特殊健康診断
  • その他の健康診断

それぞれの内容について解説します。

一般健康診断

一般健康診断は以下の5種類に分けられます。

種類対象実施時期
雇入れ時の健康診断常時使用する労働者雇入れの際
定期健康診断常時使用する労働者(特定業務従事者を除く)1年以内ごとに1回
特定業務従事者の健康診断深夜業を含む業務や異常気圧下における業務などに従事する労働者左記業務への配置換えの際、6ヶ月ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断海外に6ヶ月以上派遣する労働者海外に6月以上派遣する際、帰国後国内業務に就かせる際
給食従業員の検便事業に付属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者雇入れの際、配置替えの際

引用:「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」(厚生労働省)

常時使用する会社員に対しては、雇入れの際と1年以内ごとに1回健康診断を実施しなくてはなりません。深夜帯(午後10時~午前5時までの業務)に就業している会社員や海外に6ヶ月以上派遣する会社員は健康診断の実施時期が変わります。

特殊健康診断

特殊健康診断は、鉛や有機溶剤などの人体に有害な物質を扱う業務に従事する会社員に対して実施する健康診断です。実施の対象になる業務は以下のとおりです。

  • 高気圧業務
  • 放射線業務
  • 除染等業務
  • 特定化学物質業務
  • 石綿業務
  • 鉛業務
  • 四アルキル鉛業務
  • 有機溶剤業務

出典:「特殊健康診断」(厚生労働省)

特殊健康診断は、雇入れ時と配置替え時に加え、6ヶ月以内ごとに1回実施しなくてはなりません。

その他の健康診断

その他の健康診断は、以下の2つが挙げられます。

  • じん肺健康診断
  • 歯科医師による健康診断

じん肺健康診断は、常時粉じん作業に従事する会社員や従事したことのある会社員に対して、1~3年ごとに1回実施します。

歯科医師による健康診断は、歯に有害な塩酸や硫酸などのガス、蒸気、粉じんを発散する場所に従事する会社員に対して、6ヶ月以内ごとに1回実施します。

参考:「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」(厚生労働省)

会社員が受診する定期健康診断の項目

会社員が受診する定期健康診断の項目は以下のとおりです。

  • 既往歴および業務歴の調査
  • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
  • 胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査
  • 血圧測定
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 尿検査
  • 心電図検査

医師が必要ないと認める場合は、いくつかの項目を省略できます。雇入時の健康診断では、医師の判断による検査項目の省略はできません。

参考:「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」(厚生労働省)

健康診断の実施が必要な会社員の範囲

会社員の健康診断は正社員全員が対象です。アルバイトやパート社員でも、以下2つの条件を満たしていれば健康診断の実施が必要です。

  • 週の労働時間が正社員の4分の3以上である
  • 契約期間が1年以上、もしくは契約更新により1年以上になる見込みがある(特定業務従事者の場合は6ヶ月以上)

派遣社員の一般健康診断は、労働契約を結んでいる派遣元に実施義務があるため、派遣先で実施する必要はありません。一方、特殊健康診断は派遣先で実施します。

たとえば、自社の鉛を扱う業務を派遣社員に任せているようなケースであれば、派遣社員の特殊健康診断の実施義務は自社にあります。

また、役員は会社員を使用する会社側の立場ですが、労働者性のある業務に就いている役員に対しては健康診断の実施が必要です。

参考:「健康診断Q&A」(厚生労働省)
参考:「パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう」(厚生労働省)
参考:「派遣元が実施すべき事項」(厚生労働省)

健康診断の費用を会社員側が負担することはある?

原則、会社員の健康診断にかかる費用は企業が負担します。ただし、オプション検査や人間ドックなど、法定項目以外の検査費用を負担する義務はありません。

また、健康診断により再検査や精密検査が必要になった場合も企業に費用負担の義務はなく、基本的には会社員の自己負担になります。

しかし、検査内容によっては負担が大きくなるケースもあり、たとえば人間ドックの場合、日帰りでも1回あたり3万円以上かかることが多いため、費用がもったいないと感じる人もいるでしょう。

とはいえ、費用がかかるのを理由に社員が人間ドックや再検査を避けるのは好ましくありません。

社員の健康維持のために、自己負担になる部分を福利厚生として企業側が負担することを検討してもよいでしょう。

参考:「健康診断Q&A」(厚生労働省)

会社員の健康診断において企業が考慮すべきポイント

会社員の健康診断において企業が考慮すべきポイントは、以下の4つです。

  • 健康診断を就業時間内に実施する
  • 診断を拒まれた場合の対処方法を決める
  • 健康診断の費用を経費計上できるか確認する
  • 健康診断結果の取り扱いに注意する

それぞれの内容について解説します。

健康診断を就業時間内に実施する

社員が受診しやすいよう、就業時間内での健康診断の実施を検討しましょう。就業時間内に実施する場合は、給与の取り扱いを決める必要があります。

一般健康診断を受診する時間の給与は、企業に支払う義務はありません。しかし、給料が発生しない場合、行くだけ時間の無駄と考える社員も少なからずいるでしょう。そのため、従業員のモチベーションを考慮すると、給与を支払うのが望ましいといえます。

なお、健康診断を受ける会社員は医師を自由に選べます。会社指定の病院以外でも健康診断を受けられることを社員に周知しましょう。社員の負担を軽減することで、受診率向上につながります。

参考:「健康診断Q&A」(厚生労働省)

診断を拒まれた場合の対処方法を決める

社員が健康診断の受診を拒否した場合の対応方法も決めておきましょう。健康診断を受診させないと、企業が罰則を受ける可能性があるからです。

社員の健康を確保する目的もあるため、以下のような対応方法を検討しましょう。

  • 会社員に健康診断を受ける義務があることを説明する
  • 健康診断を受診するメリットを説明する
  • 就業規則で拒否した場合の処分を定める

健康診断は企業側だけでなく会社員側にも法的な義務があります。受診義務があることやメリットを説明して、社員に受診を促しましょう。

就業規則で拒否した場合の処分内容を定めておくと、説得がしやすくなります。ただし、受診を推奨する際はパワハラと受け取られないよう注意が必要です。

たとえば、受診しない場合の処分を強調して受診を強要するとパワハラと認識される可能性があります。伝え方に注意しながら健康診断の重要性を社員に理解してもらい、受診しやすい環境を整備しましょう。

健康診断の費用を経費計上できるか確認する

企業が負担した健康診断の費用は、一定の条件を満たすことで経費として計上できます。具体的には以下の条件です。

  • 健康診断の対象者を限定していない
  • 企業が医療機関に直接費用を支払っている
  • 健康診断の費用が常識的な範囲である

会社員が健康診断の費用を立て替えた場合や、胃カメラなどのオプションを追加したことで費用が高額になった場合は福利厚生費に該当しません。経理業務でミスが発生しないよう、条件を把握しておくことが大切です。

健康診断結果の取り扱いに注意する

健康診断の結果は個人情報保護法で保護される重要な情報であるため、取り扱いに注意しましょう。企業は、会社員の同意なしに、健康診断の結果を第三者に提供できません。健康診断の管理業務に関わらない一般の社員や他社に結果が知られないよう注意しましょう。

会社員の健康診断結果を外部へ漏えいすると、罰金刑や6ヶ月以下の懲役になる場合があります。管理する責任者や保管する場所、閲覧できる人を決めて適切に管理しましょう。

参考:「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」(厚生労働省)
参考:「労働安全衛生法119条」(e-GOV法令検索)

健康診断の実施後に企業が対応すべきこと

健康診断の実施後に企業が対応すべきことは、以下のとおりです。

  • 健康診断結果を通知・報告する
  • 健康診断結果を5年間保管する
  • 医師からの意見聴取と事後措置を実施する
  • 二次健診の受診勧奨と保健指導を実施する

それぞれの内容について解説します。

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~

健康診断結果を通知・報告する

健康診断の実施後は診断結果を会社員に通知します。所見の有無に関係なく、受診したすべての会社員に通知することが企業に義務付けられています。個人用の結果報告書や健康診断個人票のうち、必要な箇所の写しを社員に配布しましょう。

また、常時50人以上の労働者を雇用している企業は、労働基準監督署に健康診断結果を報告しなければなりません。報告をしないと罰則を受ける可能性があるため、早めに準備を進めましょう。

健康診断結果を5年間保管する

企業は健康診断結果から個人票を作成し、5年間保管する必要があります。健康診断結果は配慮すべき個人情報にあたるため、適切に保管しましょう。

社員の人数が多い企業では、健康診断の情報が増えることで管理が複雑になります。紙やエクセルで保管しようとすると、作業に時間がかかるでしょう。作業を効率化させたい場合は、健康診断結果をシステムで管理するのがおすすめです。

ハピネスパートナーズなら、社員の健康データをクラウド上で一元管理できます。紙・エクセルの管理から87%の工数削減が見込まれるため、管理業務の効率化につながります。

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医師からの意見聴取と事後措置を実施する

健康診断で異常所見がある会社員がいた場合、就業上の措置について3ヶ月以内に医師の意見を聞かなければなりません。常時50人以上の労働者を雇用している企業の場合、ここでいう医師は産業医が適切とされています。

会社員が就労を続けられるか医師に意見を聞き、必要に応じて以下のような措置を講じる必要があります。

  • 配置の転換
  • 労働時間の短縮
  • 時間外労働の制限
  • 休職

社員の健康状態を考慮して、適切に対応しましょう。

参考:「健康診断を実施し、事後措置を徹底しましょう」(厚生労働省)

二次健診の受診勧奨と保健指導を実施する

健康診断の結果により再検査が必要な社員に対しては、二次検査の受診を促しましょう。二次検査の受診推奨は企業の努力義務です。

また、会社員に対して医師や保健師による保健指導を実施するよう努めなければなりません。健康診断実施後は、社員の健康状態に合わせて、生活習慣の改善や健康管理に関するアドバイスを行うとよいでしょう。

社員の健康意識を高められ、健康保持につながります。

健康診断を実施して会社員の健康状態を適切に管理しよう

企業は健康診断の実施だけでなく、診断結果の通知や保管など健康診断実施後の対応も行わなくてはなりません。健康診断を受診しない会社員がいると、企業に罰則が科せられる場合があります。

健康診断を就業時間に実施する、健康診断の受診を拒否された場合の対応方法を決めるなどの対策をして、社員に健康診断の受診を促しましょう。

実施後は、健康診断結果を適切に管理することが重要です。情報が第三者に漏れないよう注意しながら、5年間保管する必要があります。

社員の人数が多く、健康診断結果の管理に手間がかかる場合は、健康管理システムを利用するのがおすすめです。健康データを一元管理できるため、業務の効率化が図れます。

ハピネスパートナーズは強固なセキュリティ対策を実施しており、安心して個人情報を取り扱える健康管理システムです。シンプルな操作性であるため、不要なコストやリスクを削減できます。健康診断に関わる業務を効率化させたい場合は、ぜひご活用ください。

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