健康診断の受診率向上を実現するために企業が取り組むべき施策とは?

健康リスクが高まる現代において、健康診断の受診率を上げることは従業員の健康を守ることにつながるため、「健康経営の第一歩」ともいえる重要なことです。そのため、経済産業省の認定制度「健康経営優良法人」では、健康診断の受診率が高いこと(実質100%)が認定基準のひとつとされています。つまり、企業が健康診断を実施することは国からも強く求められていることでもあるのです。そこで今回は、企業としてできる受診率の上げ方や、従業員が健康診断を受診しない場合の理由別対処法などを解説します。
義務であるにもかかわらず…健康診断の実施率・受診率の実態は?
国で定められた義務である健康診断の実施・受診ですが、現状では受診率100%を達成できていません。厚生労働省による2022年のデータによると、健康診断の実施率は91.9%、受診率は81.5%となっており、ともに100%を下回っています。
事業所の人数が多いほど実施率、受診率ともに高くなる傾向が見られ、500人以上の事業所では健康診断の実施率が100%となっていますが、実施率100%の事業所であっても、受診率では80%台に留まっています。
定期健康診断を実施しなかった理由についてのアンケート調査では「健康診断を実施する費用がない」「健康診断を実施する時間がない」という回答が多く見られ、一部には「健康診断の必要性を感じない」といった回答も。とはいえ、いかなる理由があろうとも企業が労働者に対し健康診断を実施しないことはあってはなりません。それは、法的な義務であることに加えて、労働者の健康を保持することに大きな意味があります。一般健康診断における所見率(検査項目において異常が見つかった者の率)は、近年増加傾向にあります。2006年には48.0%だった有所見率は徐々に上昇し、2020年には63.6%にまで増加しています。
仕事のパフォーマンスにも大きな影響を及ぼす従業員の健康は、企業の存続と成長の源です。健康リスクが高まる現代、企業はリスクの回避や早期発見のために健康診断の受診率を高めることが必要だといえるのです。
受診率が上がらない…健康診断を受けない従業員への対処法を紹介
では、健康診断を受けない従業員がいる場合、どう対処すればいいのでしょうか。健康診断を受診しない理由は従業員によっても異なることが想定されるため、まずはそれぞれの理由をヒアリングし、状況に応じた適切な対処を講じることが大切になるでしょう。以下で代表的な理由と対策を紹介します。
「時間が取れない」
健康診断の重要性については理解していて、受診する意思があるにもかかわらず、日々の業務が多忙で健康診断のために時間が割けないという従業員の場合、企業としては予約時間に融通を利かせる、また上司や同僚などにサポートを依頼するなどして、健康診断の時間を捻出しやすくするフォローが必要になります。
「健康に不安を感じるような症状がない」
現状に健康不安がないので、わざわざ健康診断を受けなくても自覚症状が出たタイミングで医療機関を受診すればよい、と考えているケースです。こうした従業員には、心身の不調は自覚なく進行する場合もあることをしっかりと説明し、定期的な健康診断による従業員のメリットを強調して伝えていく必要があります。
「受診するのが面倒」
健康診断を受けるのが面倒だからという理由で受診しない従業員もいるかもしれません。「受診しなくても問題がない」と誤った認識を持っていることが予想されるので、健康診断の受診は自身の健康保持に必要であり、国で定められた義務でもあることを徹底して周知しましょう。
健康診断の受診率を上げるために企業が実施すべきこと

健康診断の受診率を上げるためには、従業員に対して健康の大切さについての理解促進をはかること、費用面の負担を軽減することが基本となります。以下に、具体的な取り組みについて紹介しましょう。
健康診断の重要性を周知する
単に「健康診断を受診しましょう」とアナウンスするだけでは、その重要性は伝わりません。従業員の注意を引き、健康診断を自分ゴト化してもらうために、周知する方法を工夫する必要があります。たとえば、公的なパンフレットは内容が理解しにくいことがあるため、内容をわかりやすくしてあらためて解説するなど、従業員が理解しやすくするための工夫を常に意識する必要があるでしょう。
健康診断費用を企業が負担する
特殊健康診断の費用負担は企業の義務ですが、一般健康診断では企業側に必ずしも支払い義務はありません。また、健康診断の再検査・精密検査などについても、費用負担者は労使間の協議や就業規則などで決めることとされています。ただ、自己負担では健康診断を受けたくないと考える従業員もいるので、受診率を上げるためには企業が費用を負担するのが望ましいでしょう。
産業医を導入して働きかける
健康診断の実施・受診の促進については、企業の人事担当者などが担当することもあります。しかし、医療や健康の専門家ではない立場から健康診断の必要性を伝えるのが難しいケースも少なくありません。その場合は、労働衛生の専門家である産業医の導入を検討するとよいでしょう。産業医の選任は従業員が50人以上になってからですが、先んじて選任しておくことで定期的な健康診断の重要性についての説明を委ねたり、周知のタイミングの決定などでサポートが受けられたりと、健康診断の実施においてさまざまなメリットが生まれるはずです。
働く人々の健康リスクが高まる現代、定期的な健康診断の受診がますます重要になっています。企業にとって健康診断の実施は義務であり、また従業員の健康を守るためにも大切です。今回挙げた施策を検討しつつ、受診率向上に努めてください。
<参考URL>
- 労働安全衛生法に基づく定期健康診断|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000136750.pdf
- 平成24年 労働者健康状況調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h24-46-50_01.pdf
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