介護離職の対策は?仕事と介護の両立を支援する制度や企業事例を解説

「自社で取り組める介護離職の対策法は?」
「従業員の仕事と介護の両立を支援するには、どのような制度を導入すればいい?」
介護離職を防ぐために、どのような支援制度を導入すれば従業員に活用してもらえるのか知りたい人事労務担当者の方は多いのではないでしょうか。介護離職を防ぐためには、従業員の介護状況や健康状態を把握し、それぞれに応じた支援制度を案内することが大切です。
本記事では、企業が取り組むべき介護離職の対策について、制度活用のポイントや助成金情報も含めて解説します。
企業が取り組むべき介護離職の対策法

企業が取り組むべき介護離職への対策は以下のとおりです。
- 介護離職の支援制度を周知する
- 介護離職防止支援コースの助成金を活用する
- 従業員のメンタルヘルスケアを実施する
- アンケートや面談などで従業員の状況を把握する
- 柔軟な働き方を選べる制度を整える
- 外部の専門家と連携して相談体制を強化する
- 管理職の理解を得やすい社内風土をつくる
各対策法の内容を詳しく解説します。
介護離職の支援制度を周知する
介護離職にまつわる支援制度の利用を促すには、従業員への周知が欠かせません。要介護状態の家族がいる従業員に対して、国が実施している以下の介護支援制度を利用できる旨を周知しましょう。
| 制度の名称 | 制度の内容 |
|---|---|
| 介護休業制度 | 介護のために数週間〜数ヶ月の長期休業が取得できる制度 対象家族一人につき3回、通算93日まで取得可能 (※年度を過ぎても、取得日数はリセットされない) |
| 介護休暇制度 | 介護のために単発で休暇が取得できる制度 対象家族が一人の場合は年5日、二人の場合は年10日まで取得可能 |
| 介護短時間勤務等の制度 | 介護するため労働時間を短縮する制度 対象家族一人につき、利用開始の日から連続する3年以上の期間で2回以上利用可能 |
| 所定外労働の制限(残業免除) | 要介護状態の対象になる家族を介護するため残業免除する制度 利用回数は1回につき1ヶ月以上1年以内の期間で、回数の制限はなし |
| 時間外労働の制限 | 要介護状態の対象になる家族を介護する際に1ヶ月につき24時間、1年につき150時間を超える時間外労働させない制度 利用回数は1回につき1ヶ月以上1年以内の期間で、回数制限なし |
| 深夜業の制限 | 要介護状態の対象になる家族を介護のため、深夜22時〜5時に働かせてはならない制度 利用回数は1回につき1ヶ月以上 6ヶ月以内の期間で、回数制限なし |
参考:「介護休業制度特設サイト」(厚生労働省)
介護支援制度を周知し、従業員の介護に対する関心を高めるには、社内研修やセミナーを実施したり、パンフレットを配布したりするのが有効です。また、管理職や人事担当者向けに介護離職に関する研修を実施できると、従業員に対して適切な制度利用を促せます。
介護離職防止支援コースの助成金を活用する
介護離職防止に取り組む際は、厚生労働省が実施している「介護離職防止支援コース」の助成金を活用しましょう。
介護離職防止支援コースとは、従業員が介護休業を取得したり、介護両立支援制度を利用したりした場合に受給できる助成金です。
代替要員を補充する際に助成金を利用することで、企業は採用にかかるコストを最小限に抑えられます。これにより、人員不足による業務過多を防ぎつつ、介護が必要な従業員に対して支援制度の利用を促せるでしょう。
2025年度の介護離職防止支援コースの助成金要件は以下のとおりです。
| 制度名 | 主な要件 | 助成額 |
|---|---|---|
| 介護休業 | 従業員が介護休業を取得し、職場復帰後も雇用継続した場合 | 40万円 |
| 介護両立支援制度 | 制度を1つ導入し、従業員が利用した場合 | 20万円 |
| 制度を2つ以上導入し、従業員が1つ以上を利用した場合 | 25万円 | |
| 業務代替支援 | 介護休業を利用した従業員の代替要員を新規もしくは派遣で受け入れた場合 | 20万円 |
| 介護休業を利用した従業員の業務代替者に手当を支給 | 5万円 | |
| 介護短時間勤務を利用した従業員の業務代替者に手当を支給 | 3万円 |
参考:「2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内」(厚生労働省)
なお、介護離職防止支援コースの対象となる企業は中小企業事業者のみに限られます。また、助成金を受けられるのは、それぞれの制度で1事業者につき5人までです。
従業員のメンタルヘルスケアを実施する
従業員のメンタルヘルスケアを実施することも、介護離職の防止に役立ちます。
介護と仕事の両立は心身への負担が大きく、高ストレスな状態が続きやすくなります。放置するとメンタルヘルス不調を引き起こす可能性があり、介護離職につながりかねません。
ストレスチェックやセルフケア研修などを実施することで、従業員のメンタルヘルス不調にいち早く気付き、対策を講じられます。また、社外に相談窓口を設置するのも有効です。社内では話しにくいプライベートな内容を相談できる環境を整えておくことで、従業員の精神的な負担を減らせるでしょう。
社内で従業員のメンタルヘルス不調対策を講じるのが難しい場合は、ストレスチェックやセルフケア研修、EAP(メンタル不調の従業員を支援する社外プログラム)などを提供できるハピネスパートナーズをご活用ください。健康診断情報をシステムで一元管理し、従業員の健康保持・増進をスムーズにサポートできます。
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アンケートや面談などで従業員の状況を把握する
アンケートや面談を通して従業員の介護状況を把握することも、離職防止につながります。
介護は育児と異なり、サポートが長期化する可能性があるため、将来の見通しを立てにくい特徴があります。また、介護レベルは人それぞれ異なり、必要とされる支援内容も多様です。
従業員が抱える介護の悩みを確認するためにも、社内ツールを用いてアンケートを実施したり、個別面談(1on1や人事面談、産業医面談など)を行ったりしましょう。従業員が抱える悩みを確認できれば、それぞれの介護状況に応じた支援制度を案内できます。
柔軟な働き方を選べる制度を整える
従業員が働き方を選択できるように就業規則や勤務形態などの制度を整備することも、離職防止につながります。
介護は日々の生活サポートだけでなく、病院や施設の付き添いなど急な対応が求められることも少なくありません。そのため、勤務時間や曜日などが固定されていると、従業員の介護状況によっては仕事との両立が困難になるケースもあります。
仕事と介護の両立を実現するには、従業員の介護状況に合わせてテレワークや時短勤務、中抜け勤務などを選択できるのが理想的です。働き方を自由に選べると、仕事と介護を両立でき、離職防止につながります。
外部の専門家と連携して相談体制を強化する
自社だけで介護離職対策を行うのが難しい場合は、外部の専門家と連携し、社内の相談体制を強化することが効果的です。なかでも、介護離職にまつわる知識をもつ、介護離職防止対策アドバイザーと連携を図るとよいでしょう。
介護離職防止対策アドバイザーとは、一般社団法人介護離職防止対策促進機構が主催する民間資格です。従業員の介護状況をヒアリングしたうえで、企業が取り組むべき職場環境の改善や制度導入などをサポートしてくれます。
また、介護保険制度や介護サービスを適切に利用できるよう、手続きに関する情報提供やサポートも行ってくれます。
介護離職防止対策アドバイザー以外では、以下の外部支援の活用が有効です。
- 社会保険労務士(社労士):就業規則の見直しや助成金の申請をサポート
- 商工会議所・中小企業支援センター:制度説明会や個別相談などの情報提供窓口
介護に関する制度設計や助成金活用の知見が少ない企業は、このような外部支援の活用も検討しましょう。
管理職の理解を得られる社内風土をつくる
企業の介護離職対策では、管理職の理解を得られる社内環境を整えることも重要です。企業の介護支援体制が整っていても、管理職の理解と対応力に問題があると、従業員は積極的に制度を利用しにくくなります。
たとえばチーム制で業務を遂行している場合、休むことで他メンバーの業務量が増えるため、介護支援制度の利用をためらう方もいます。また、制度を利用している上位役職者が少ないことで、「上司に相談しても取り合ってくれないかも」とためらってしまうケースもあるでしょう。
このような事態がないようにするには、管理職の介護支援制度に対する理解を深めることが大切です。管理職研修に介護に関する知識や制度を身につけるプログラムを取り入れたり、介護支援制度の対応マニュアルを整備したりするとよいでしょう。また、管理職自らも介護支援制度を利用することで、従業員が制度を利用しやすくなります。
健康経営の一環として介護離職対策を推進する理由
健康経営の一環として介護離職対策を推進する理由は、従業員の心身の健康を支えながら、生産性の維持と人材流出の防止を図るためです。仕事と介護の両立は精神的・体力的にも負担が大きく、家族を介護するためにやむを得ず離職する方もいます。
こうした状況を受け、経済産業省は2030年には仕事と介護の両立による経済的損失が約9.1兆円にのぼると試算しています(※1)。
従業員の介護状況に寄り添いながら企業の生産性を保つには、健康経営の一環として介護離職対策に取り組むことが重要です。
また、2025年度の健康経営優良法人の認定要件では、大規模法人部門において「仕事と介護の両立支援の取り組み」に関する設問が追加されました(※2)。健康経営優良法人の認定を目指す企業は、仕事と介護の両立支援について、明確な取り組みを検討する必要があります。
(※1)「経済産業省における介護分野の取組について」(経済産業省)
(※2)「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)認定要件」(ACTION!健康経営)
なお、健康経営の進め方や施策事例について知りたい方はこちらの記事も併せて参考にしてみてください。
介護離職の現状は?

企業として介護離職対策を講じるためには、離職の現状を把握することが大切です。
具体的な現状としては、以下が挙げられます。
- 介護離職者の人数は増加傾向にある
- 介護離職者の年代は40代~50代が多い
- 介護離職対策制度を活用しない従業員が多い
それぞれの現状を詳しく解説します。
介護離職者の人数は増加傾向にある
総務省が実施した就業構造基本調査によると、介護離職者の人数は年々増加しています。2022年9月の調査では、介護離職者は約10万6千人でした(※)。
一方で2017年9月の調査では、介護離職者は約9万9千人だったため、5年間で約1万人増加している状況です。高齢者人口の増加により、介護離職者の人口も増えていると考えられます。
(※)「令和4年就業構造基本調査結果の要約」(総務省)
介護離職者の年代は40代~50代が多い
介護離職者の年代は、40代〜50代が多い傾向です。令和5年に介護・看護を理由に離職した人の年代別の割合について、以下の表にまとめました。
| 30歳〜34歳 | 35歳〜39歳 | 40歳〜44歳 | 45歳〜49歳 | 50歳〜54歳 | 55歳〜59歳 | 60歳〜64歳 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 男性 | 0.4% | 0.3% | 0.4% | 0.2% | 1.2% | 1.6% | 0.6% |
| 女性 | 0.3% | 1.3% | 0.6% | 1.4% | 4.9% | 3.4% | 2.2% |
参考:「令和5年雇用動向調査結果の概況」(厚生労働省)
上表のとおり30代・60代と比較すると、40代・50代の介護離職者の割合が高い状態です。共働き世帯が多い現代では、在宅介護と仕事の両立が難しいため、離職を決断する方が多いと考えられます。
40代〜50代は管理職が多い年代であり、離職によって組織全体の生産性低下や再編を招く恐れがあります。介護離職は、企業全体のリスクとして捉える必要があるでしょう。
介護離職対策制度を活用しない従業員が多い
企業が介護支援制度を整備していても、実際に介護休業や休暇などの制度を活用していない従業員が多いのが現状です。東京商工リサーチが2025年4月に行った調査では、介護離職者のうち支援制度を利用しなかった割合は54.7%と、全体の半数以上を占めました(※)。
介護支援制度が活用されない背景には、従業員が認知していなかったり、制度を利用しにくい職場だったりすることが挙げられます。そのため、企業は介護支援制度を整えるだけでなく、従業員に対する周知や、利用しやすい職場環境の整備も進めることが重要です。
(※)「介護離職者 休業や休暇制度の未利用54.7% 規模で格差、「改正育児・介護休業法」の周知と理解が重要」(東京商工リサーチ)
介護者が離職する理由
介護者が離職する主な理由は、以下のとおりです。
- 制度はあるが使いにくい(職場の理解が不足している、利用実績がないなど)
- 相談することで上司や同僚に迷惑をかけたくない
- 介護と仕事を両立する方法が分からず、将来の見通しが立たない
- 昇進・評価への影響を懸念して制度利用をためらう
介護は突然始まっていつ終わるかわからないため、本人だけでは対応できないことも少なくありません。従業員の介護離職を防ぐには、支援制度を利用しやすい職場環境をつくったり、介護状況に寄り添った支援制度の情報を提供したりすることが大切です。
企業が介護離職対策に取り組むメリット

企業が介護離職対策に取り組むメリットは以下のとおりです。
- 人材の流出防止
- 従業員のモチベーション向上
- 企業イメージの向上
各メリットを詳しく解説します。
人材の流出防止
介護離職対策に取り組む最大のメリットは、貴重な人材の流出を防げることです。介護支援制度が整い、実際に活用できる職場環境であれば、介護に直面した従業員でも離職することなく企業に在籍し続けられます。
とくに管理職を担う40〜50代は介護離職者が多い傾向のため、離職を防ぐことで企業の生産性や組織力の維持につながります。また、採用や育成にかかるコストも抑えられるため、経営的にも大きな効果が見込めるでしょう。
従業員のモチベーション向上
企業が介護離職対策に取り組むことで、従業員の業務に対するモチベーション向上につながります。「もしもの時に会社が支えてくれる」という心理的安全性が生まれると、従業員は将来への不安を抱えにくくなり、職場に対する信頼や働きやすさが高まります。
従業員の業務に対するモチベーションが向上すれば、離職率低下にもつながるでしょう。
企業イメージの向上
介護離職対策に積極的に取り組む姿勢は、企業のイメージ向上にも効果的です。
近年は多様性のある働き方や、ウェルビーイングな働き方への関心が高まっています。介護支援の取り組みは、企業の社会的信頼やブランド価値の強化にもつながるでしょう。
介護離職対策に取り組み企業イメージが向上できると、優秀な人材の採用競争において有利に働くと期待できます。
仕事と介護の両立を支援する企業の取り組み事例
仕事と介護の両立を支援する企業の取り組み事例を3つ紹介します。他社の事例を参考に、自社で取り組む施策内容を検討してみてください。
社内で介護支援の啓発に取り組んだ事例|アステラス製薬株式会社
アステラス製薬株式会社は2007年より、ダイバーシティ推進施策として介護支援制度の整備に取り組んでいます。同社では、介護休暇や休業などの制度充実を図ったにもかかわらず、介護支援制度の利用者は限られた人数になっていました。
仕事と介護の両立に関する情報共有のため、自社で利用できる介護支援制度をまとめた冊子を従業員に配布。また、仕事と介護の両立に関するセミナーを実施し、セミナーに参加できなかった人には動画を配信しました。
このような取り組みにより、年間10〜20名程度だった介護支援制度の利用者は、啓発活動実施後に30名以上増加したと報告されています。
(※)「コラム1介護離職の防止に向けて~介護と仕事の両立支援に取り組む民間企業~」(内閣府)
介護の相談体制の充実を図った事例|花王株式会社
花王株式会社は、2008年から介護離職に関する取り組みを行っています。同社では、介護支援制度自体は整備されていましたが、利用が進んでいない状態でした。
そこで、従業員の自助努力を支援する方針のもと、介護の相談体制の充実や啓発活動を実施。介護に直面した従業員には、自社内のコーディネーターもしくは外部窓口に相談できる体制を確立しました。
このような取り組みにより、介護支援制度の利用促進につながったとされています。
(※)「事例4:花王株式会社」(家庭と仕事の両立支援ポータルサイト)
自治体の助成金を活用し介護支援を実施した事例|コーデンシTK株式会社
コーデンシTK株式会社より、介護支援制度の充実を図るため自治体の助成金を活用した事例が報告されています。同社では仕事と育児との両立支援を実施していた一方で、介護支援の優先度が低い状況にありました。
そこで、2015年に東京都中小企業ワークライフバランス推進助成金を利用し、社内で啓発活動を開始。リーフレット配布や社内研修会を通じて制度の周知の認知を高めるとともに、社内に相談窓口も設置しました。
このような取り組みにより、人材の流出を防ぎ、従業員の介護両立に対する意識も高まったとされています。
(※)「事例6:コーデンシTK株式会社」(家庭と仕事の両立支援ポータルサイト)
介護離職を防ぐために、自社に適した対策法を取り組もう
企業が取り組むべき介護離職の対策法は以下のとおりです。
- 介護離職の支援制度を周知する
- 介護離職防止支援コースの助成金を活用する
- 従業員のメンタルヘルスケアを実施する
- アンケートや面談などで従業員の状況を把握する
- 柔軟な働き方を選べる制度を整える
- 外部の専門家と連携して相談体制を強化する
- 管理職の理解を得やすい社内風土をつくる
介護と仕事の両立は心身への負担が大きく、高ストレスな状態が続きやすくなります。その結果、メンタルヘルス不調により離職せざるを得ない方も少なくありません。メンタルヘルス不調の悪化を防ぐためには、従業員の健康状態を管理できるツールを使用するのも選択肢の一つです。
健康管理システム「ハピネスパートナーズ」では、従業員のメンタルヘルスケアとして、ストレスチェックやEAPサービスなどを利用できます。介護離職を防ぐための取り組みとして、従業員のメンタルヘルスケア推進を図る場合はぜひご活用ください。
\産業医の満足度92%、企業様の継続率97%/
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