【千の提言#6】安全衛生部と各部署が強力タッグ!要受診率100%達成の秘訣とは(キヤノンマーケティングジャパン)

「健康第一主義」を名実ともに実践するキヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下キヤノンMJ)。組織全体を通して全力で健康経営に取り組む姿は、多くの企業にとって参考になるものばかりです。今回はその中でも、がん検診受診率70%超え、要受診者の医療機関受診率100%達成という偉業をどう成し遂げたかについて伺いました。健康支援室の保健師さんたちの努力をお楽しみください。
キヤノンマーケティングジャパン株式会社
1968年キヤノン販売として設立。2006年キヤノンマーケティングジャパンに社名変更。グローバルキヤノングループの中で、日本国内でのマーケティング活動やソリューション提案を行う。2025年ビジョン「社会・お客さまの課題をICTと人の力で解決するプロフェッショナルな企業グループ」を掲げ、キヤノン製品とITソリューションを組み合わせることで社会課題の解決に取り組む。2024年に「未来マーケティング企業」を宣言し、キヤノンMJグループパーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」を制定。単体従業員数約4,500名、グループ従業員数約1万6,000人。「健康経営銘柄2024」に選定(通算3度目)。「健康経営優良法人ホワイト500」は8年連続で取得している。
健康経営優良法人 受賞・認定歴
2017年:健康経営優良法人ホワイト500認定
2018年:健康経営銘柄選定・健康経営優良法人ホワイト500認定
2019年:健康経営銘柄選定・健康経営優良法人ホワイト500認定
2020年:健康経営優良法人ホワイト500認定
2021年:健康経営優良法人ホワイト500認定
2022年:健康経営優良法人ホワイト500認定
2023年:健康経営優良法人ホワイト500認定
2024年:健康経営銘柄選定・健康経営優良法人ホワイト500認定

左
佐野 淳(さの・じゅん)
総務・人事本部
グループ安全衛生部 部長
中央
木下 あけみ(きのした・あけみ)
総務・人事本部
グループ安全衛生部 品川健康支援室 主管 保健師
右
猪股 紗季(いのまた・さき)
総務・人事本部
グループ安全衛生部 品川健康支援室 保健師
アイデアと全国に広げる営業魂が、健康管理を活性化させる
──ここまでは比較的仕組みや成り立ちの話でしたが、ここからはより具体的な取り組みについてお伺いできればと思います。特に特徴的な取り組みはなんですか?
木下あけみ様:一言で言ってしまえば徹底したシステム化、ペーパーレス化をして、健康増進へ一直線に向かえるようにしていることです。これはキヤノンMJの社内風土なんですが、組織的・戦略的にかなり徹底して仕組みを作って取り組む会社だと思います。特徴的なのが、がん検診の受診促進でしょうか。
──いろいろな企業さんでも進めていますが、伸び悩みやすい取り組みです。

木下あけみ様:キヤノン健保のがん検診制度を利用して受けていただくのですが、当初の2004年から2005年あたりは非常に伸び悩みました。当時はがん検診の項目も決まっておらず、指定の医療機関もなく、受診費用のみ補助される制度でした。従業員からしたらがん検診はなかなか触れる機会のないものですから、不安や疑問が沢山ある状態です。それに対して「自分の力で、手探りで項目を決めて受けてください」と言っているようなものですから、増えるわけがありません。結果8%くらいの受診率に留まりました。
このままではいけないということで、2006年から促進活動に力を入れまして、2010年には70%以上が受けるというところまで持っていったわけです。
──8%から70%はかなりの急上昇ですね。普通こんなに上がらないと思うのですが、どんなことをされたんですか?
木下あけみ様:まず、いくつかの医療機関に頼んで、がん検診のセットを作っていただき、役員や本部長の予約代行まで行う形で受診を促すことから始めました。この結果、最初の2年で経営層の受診率を100%にすることができました。経営層の皆さんはそれなりのご年齢ですから、何か見つかったり、早期の治療につながったりします。そういう体験があると、部下へも勧めてくれるようになりました。この経営層の率先垂範が大きかったと思います。
次は、経営層が受けたがん検診のセットを「キヤノンMJパック」として、全国の医療機関に導入を働きかけました。パックを入れてくれた医療機関を、どんどん従業員に紹介し、実績を作ることで、気軽に受けられる風潮を作ったわけです。また、「立て替え払いをするのが大変だ」という従業員も多かったので、健保にも医療機関と契約してもらい、その場での支払いなく受けられるようにしました。受け皿を整えたことで、受診率が上がってきました。

──もはや健康増進活動というよりも、がん検診の営業ですね。当時なかったパックを広めたのはキヤノンMJさんのお力もあったというのは驚きです。
木下あけみ様:パックに関しては、厚労省の方が推奨する検査の指針をそのままパックにした感じです。この施策を進めることで、キヤノン健保も従業員が受診しやすい環境整備に着手してくださり、現在では全国約2500か所の医療機関で受けられるような体制になっています。
──凄まじい努力ですね。

木下あけみ様:受けやすい仕組みを作っても、受けてくれない人は出てきます。そういった人に対しては、営業の本能をくすぐるような取り組みを導入しました。
具体的には、がん検診の受診促進担当を全国の各地区において、推進活動をしてもらい、衛生委員会等でその進捗をグラフで示しました。営業の会社だからか、グラフにすることで、競争意識が働き、組織や地区ごとの推進が加速しました。
佐野淳様:小さい拠点のほうが完遂率は高くなりますから、みんな張り切ります。朝礼で声をかけてくれたり、みんなで声を掛け合ってくれたり。私達がやってくださいと言わなくても、各地区で、自分たちの業務として毎年促進してくれるようになってしまう。こうなると完全に定着したなと感じますね。
健康診断にも「快適さ」を追求
──がん検診の受診率に悩む企業にとっては、非常に参考になる施策ですね。他にも、掲げられているメタボ・生活習慣病対策として力を入れていることはありますか?
木下あけみ様:独自で頑張っていることと言えば、健康診断を受けた後の「要受診者」の受診結果報告を100%で定着させていることです。
──100%!? そんなこと可能なんですか?
木下あけみ様:定期健康診断の受診率は、法律上でも義務化されているため、100%で当然です。しかし、その後の要受診者に関して徹底できているところは少ないかもしれません。
弊社の場合は、2010年より前からこの取り組みを始めていますが、当時は紙の運用で、要受診者には、健診結果の封筒の中に「受診結果報告用紙」と返信用封筒を入れていました。
しかし、そこから受診に至るまで声をかけ続けるのが大変でした。そこで、健診結果を全てシステム化して受診徹底するようにしたのです。

──受診徹底というのは、どういったことをするのでしょうか
木下あけみ様:最初は要受診者を重症者と軽症者の2グループに分け、重症者だけから始めたのですが、重症者の方は、良くなったり悪くなったりを行き来している人たちです。ある年は追いかけないけど、ある年は追いかけるといった矛盾が生まれてきます。また、軽症のグループの中から脳卒中や心筋梗塞を発症する方が出たりしました。そういった理由で2012年からは要受診となった従業員全員を受診徹底することにしました。
──本当に全力で追い続けるわけですね。
木下あけみ様:2012年から、システム上で健診結果を閲覧できるようになり、要受診者の報告もシステム化しました。健診結果の案内後1か月の間に要受診者は受診してサイトから報告するようメールを送っています。それでも受診しない場合は、上司の方に心配している旨を伝えて、その方が受診できるよう業務調整や声かけをお願いしています。こうすることで、100%の受診報告率になっているわけです。

──それこそ産業保健のあるべき姿なのかもしれませんね。
木下あけみ様:やはり会社には安全配慮義務があります。例えば、高血圧で受診しないといけない方が、放置したまま残業を続けた結果、何かあった場合、会社に責任が問われるケースもあるわけです。リスクを少しでも減らすことも我々の仕事だと思っています。
猪股紗季様:だからこそ、受診結果報告システムも非常に気軽に使える形にしています。保健師側で、報告期日を設定しておけば自動でリマインドが飛ぶようになっています。報告がない場合は未報告者一覧に溜まっていく形になっているので、個別に追いかけるのも、手間をかけずに行えるようになりました。これがシステム化されていなかったら、追いかけのメールを打っているだけで1日が終わってしまうこともあったでしょう。それらがないだけで、とても効率的にできていると思います。
木下あけみ様:システム化によって、ほぼすべての要受診者にアプローチできるようになりましたが、それでも受けない人は少数残ります。そういう人たちは、過去の受診までの経緯や傾向をみて対応していきます。産業医と対応を話し合ったり、上司も交えて相談したりと。そこまでやってはじめて100%になっています。
──これは、本質的に従業員の幸せを願っていないとできない仕事ですね。直接感謝されることも多いんじゃないですか?
木下あけみ様:直接感謝されることはまだまだ少ないかもしれませんが、異常があったらすぐに対応する、受診するという当たり前の健康習慣や意識をつけてもらえるだけでも嬉しいものです。
あとは、弊社のがん検診ではよく「早期発見できたから初期のがんで済んだ!」という方の声を聞くことがあるんです。会社の健康診断でがんまで見つけてくれるのかと、喜びの声をいただくこともあります。
──素晴らしいですね。ただ、これを1万6,000人全員にやろうとすると莫大な時間がかかると思います。これはやはりシステム化の要素が大きいのでしょうか?
木下あけみ様:とても大きいと思います。こちらはグループで内製したものなのですが、定期健診にまつわるものを全てウェブ化できているのが特徴です。健診の日時の案内はもちろんのこと、日時変更も電話からシステムに置きかえることができました。システム化前は社員からの日時変更の電話対応に追われて仕事にならない状態という時期もありました。今ではウェブ上で自分の好きな時間に簡単に入れ替えられるようになって、楽になったという声は聞きます。
DX" class="wp-image-4348" style="width:588px;height:auto" srcset="https://i0.wp.com/go100.jp/wp-content/uploads/2024/11/senno-teigen-6_canon-marketing-japan03.png?w=934&ssl=1 934w, https://i0.wp.com/go100.jp/wp-content/uploads/2024/11/senno-teigen-6_canon-marketing-japan03.png?resize=300%2C210&ssl=1 300w, https://i0.wp.com/go100.jp/wp-content/uploads/2024/11/senno-teigen-6_canon-marketing-japan03.png?resize=768%2C537&ssl=1 768w" sizes="(max-width: 750px) 100vw, 750px" />──面倒がなくていいですね。
猪股紗季様:健診結果の返却もペーパーレス化しているのはもちろんのこと、前述した要受診者の受診結果報告の促しや、その報告まですべてウェブになったことで、業務もかなり省力化できています。
──この辺り、要件を詰めたり、実際に指示出したりなどは工数や人員が必要になってくると思いますが、そのあたりはどうやって開発したのでしょうか?
猪股紗季様:実は今まさにそのシステムの改修を行っているところなんです。社内のIT部門の方に間に入っていただいて、グループ会社にシステムを作ってもらっていますが、我々保健師が主体となって要件を決めています。設計にあたっては過去の資料などをひっくり返したりしながら、懸命に詰めています。
──ここも健康支援室の保健師さんが主体になって進めているんですね。
木下あけみ様:もちろん社内のアシストをしてもらいながらなんですが、保健師目線から見て、こういう機能があったほうがいいなどを伝えています。自分たちで使いやすい内容をそのまま伝えられるのでやりやすいですね。
こだわり抜いた施策は現役保健師のアイデアから
がん検診受診率70%、要受診者の医療機関受診・会社報告率100%はキヤノンMJ様に所属する保健師さんたちの愛と努力の賜物ということがわかる施策の数々でした。加えて、保健師目線で使いやすい健康管理システムを自社内で開発したというエピソードは、なかなか真似できないものの、自社導入する際の選択基準として置き換えると、非常に参考になるものかと思います。次回は、デジタル化だけでない、多様な施策についてご紹介していきます。
千の提言シリーズ
取り組む企業が16,000社を超えた健康経営。 そのお手本とも言える「ホワイト500」「ブライト500」企業は どんな失敗をし、何に悩み、どう成功パターンを発見したのか。 各企業の担当者に秘伝とも言える話を伺います。








