【千の提言#5】創業時から<健康第一主義>! 基礎からかためる骨太の健康経営(キヤノンマーケティングジャパン)

社員の健康を考えている企業は数多くありますが、経営理念に「健康第一主義」を掲げながら、世界有数の企業にまでなったのはキヤノングループ以外ないのではないでしょうか。お話を伺ったキヤノンマーケティングジャパン株式会社は、グループの中でも、日本国内におけるマーケティングから販売、ソリューション提案やサービス・サポートまでを一手に担う多忙な会社ですが、2017年以来、8年連続でホワイト500を獲得し続ける最高の健康企業の一社でもあります。そんな企業が行う健康戦略は、まさにお手本のような施策ばかりでした。これから取り組む企業にとって、推進のヒントが満載です。
キヤノンマーケティングジャパン株式会社
1968年キヤノン販売として設立。2006年キヤノンマーケティングジャパンに社名変更。グローバルキヤノングループの中で、日本国内でのマーケティング活動やソリューション提案を行う。2025年ビジョン「社会・お客さまの課題をICTと人の力で解決するプロフェッショナルな企業グループ」を掲げ、キヤノン製品とITソリューションを組み合わせることで社会課題の解決に取り組む。2024年に「未来マーケティング企業」を宣言し、キヤノンMJグループパーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」を制定。単体従業員数約4,500名、グループ従業員数約1万6,000人。「健康経営銘柄2024」に選定(通算3度目)。「健康経営優良法人ホワイト500」は8年連続で取得している。
健康経営優良法人 受賞・認定歴
2017年:健康経営優良法人ホワイト500認定
2018年:健康経営銘柄選定・健康経営優良法人ホワイト500認定
2019年:健康経営銘柄選定・健康経営優良法人ホワイト500認定
2020年:健康経営優良法人ホワイト500認定
2021年:健康経営優良法人ホワイト500認定
2022年:健康経営優良法人ホワイト500認定
2023年:健康経営優良法人ホワイト500認定
2024年:健康経営銘柄選定・健康経営優良法人ホワイト500認定

左
佐野 淳(さの・じゅん)
総務・人事本部
グループ安全衛生部 部長
中央
木下 あけみ(きのした・あけみ)
総務・人事本部
グループ安全衛生部 品川健康支援室 主管 保健師
右
猪股 紗季(いのまた・さき)
総務・人事本部
グループ安全衛生部 品川健康支援室 保健師
初代社長・御手洗毅(みたらい たけし)医師の理念「健康第一主義」を貫く
──佐野さん、木下さん、猪股さんは、キヤノンマーケティングジャパン(以下キヤノンMJ)本体の健康経営を見ていらっしゃるのでしょうか?
木下あけみ様:個社ごとに健康経営優良法人の取得は行っていますが、本日は、グループ約1万6,000名の社員全体を見ている立場として、お話させていただきます。弊社は幸運にもホワイト500を毎年取らせていただいておりますが、実はグループ各社もそれぞれ工夫をこらしていて、基本的に健康経営優良法人の取得を行っており、なかにはホワイト500に認定されている企業もいくつかございます。
──1万6,000名!ほぼ市町村の規模ですね。しかも、キヤノンMJグループとして複数のホワイト500を取得されているというのは素晴らしいですね。健康経営推進にあたってはどこに力を入れているのでしょうか?
木下あけみ様:課題としては、メンタルとメタボ、これは生活習慣病と言い換えていただいてもいいのですが、これにがんを加えた3つに集約されます。これを、社員の自己管理だけでなく、会社側の後押しや健康風土、管理職による早期のフォローなどを徹底してやっていくというところが特徴になります。

──会社として、これだけ従業員の健康に力を入れるのは大変だと思うのですが、いつ頃から本格的に行われていたのでしょうか?
木下あけみ様:実は、この考え方は創業から続いているものです。キヤノングループが製販分離する前の初代社長である御手洗毅が産婦人科医でもあったため、創業当初から「健康第一主義」を行動指針に掲げていたことが挙げられると思います。高度成長期の時代にあっても、社員の健康こそが会社や個人の繁栄の基本であるとして昔からやってきました。そこから今のような体制になった大きなターニングポイントは2004年かと思います。

──2004年にどんな事があったんですか?
木下あけみ様:この年までは、会社の人事部門の中に安全衛生担当は1名だけ、保健師も、私を含め、キヤノン健保からの出向者だけという小規模だったのです。
こういう体制ですと、なかなか予算面や各部署への指示命令もうまくいかず、人事施策と一体になった動きができませんでした。それを改善するために、新たに安全衛生課を独立した課として新設し、保健師も会社所属に切り替えたのです。このあたりから、人事施策と一体となった健康経営らしい施策が取れるようになりました。
──独立させたことで、思うように動かせるようになったわけですね。
木下あけみ様:はい、さらに2つ目のきっかけとして、2010年から健康管理分野でも3年間の中期計画を立ててPDCAを回し始めたことがあります。
──2010年からもう中期計画を立てられていたのですか? それだけしっかりと進めるところは少ないと思います。なにかきっかけがあったのでしょうか。
木下あけみ様:それまでも毎年、年度の方針や計画を立ててPDCAを回していたのですが、1年毎だとその年に成果を出さなければいけなくなるので長期の取り組みが難しくなります。そこで当時の人事本部長が、3年間の中期計画を立てることを考案しました。少し時間が前後しますが、我々が力を入れて取り組んでいるがん検診受診促進の取り組みというのが、2006年頃から動いていて、そこで立てた中期計画がうまく行っていたというのもあって、本格的に取り組んでみようとなったわけです。
──近年健康経営を始めた企業にとっては、最初から中期・長期の計画を立てなさいと言われるので慣れている部分はあると思いますが、すでに2010年からやられていたというのは早いですね。
木下あけみ様:弊社の場合、保健師が中心になってやっているというのもあるかもしれません。中期計画も3年ごとに、会社の健康状態をあらゆる面から徹底的に評価・分析・比較して立てていくようにしています。
従業員の健康は保健師が守る!全国で統一的な健康管理を実現

木下あけみ様:3つ目のターニングポイントは、2018年からのグループ健康管理体制への転換です。それまで、グループ会社はそれぞれ嘱託産業医や保健師を雇い、個別で健康管理を行っていました。そのため、本社と同レベルで健康管理を行うのは難しかったのです。
弊社はグループ各社に出向している従業員が多いという特徴があります。社員が出向中、同じように健康管理ができていないのはまずいとなり、2年かけて体制統一を行いました。

具体的には、それまで健康支援室自体は全国に5拠点ほどあったのですが、これを期に8地区に新たに区切り、全国どのグループ会社にいても、同じ対応をできるようにしました。現在は1万6,000名を保健師29名で見ている状態です。社員750人に1名の保健師がフォローする形になります。
猪股紗季様:この時期に私はちょうど入社してきたのですが、まさに激動の時期でした。今は体制が整い、安定した健康管理・運営ができるようになってきたと感じています。

──この体制を見させていただくと、産業医、保健師以外に精神科の先生もいらっしゃるんですね。
木下あけみ様:はい、保健師の常駐に加えて、産業医と精神科の嘱託医を必要数契約しています。弊社の昔からのやり方でもあるのですが、他社様では産業医の先生がオールインワンでメンタル相談を受け持たれることが多いと思うのですが、弊社としては餅は餅屋ということで、メンタル相談に関しては、精神科医に面談対応いただけるようにしています。
──保健師さんが29名もいらっしゃると、こちらはどういう業務がメインになるのでしょうか?
木下あけみ様:保健師は、産業医や精神科医と従業員との橋渡しや、コーディネート業務がメインになります。弊社では専属産業医が2名で、後は嘱託でご協力いただいている先生です。そうなると、面談でどういう対応を行ったかといった詳細情報が抜け落ちてしまう可能性があります。従業員と継続的に対応し、上司や人事との連携もシームレスに行えるようにするため、面談に保健師も同席しています。
──それはずいぶんと手厚いですね。聞く限り、保健師さんたちがとても効率的かつエネルギッシュに働いていらっしゃるように感じます。
木下あけみ様:それはあると思います。2004年当時は、世間的にもメンタル不全が増えてきた時期でもありました。従業員の皆さんをフォローするには、しっかりと人事と情報共有し、必要な対応ができる社員としての保健師が重要だったと聞いてます。
「従業員の健康を守る」こだわりから生まれた独自施策の数々
今回の記事では、キヤノンMJが健康経営を始めたきっかけから、全国統一の体制を作るところまでをご紹介しました。社是である「健康第一主義」にまっすぐと向き合い、仕組みづくりを行っていく過程は、これから健康経営や健康管理体制を構築しようとする企業にとって、お手本になるのではないでしょうか。
次回は、中編として、充実した具体施策についてご紹介します。
千の提言シリーズ
取り組む企業が16,000社を超えた健康経営。 そのお手本とも言える「ホワイト500」「ブライト500」企業は どんな失敗をし、何に悩み、どう成功パターンを発見したのか。 各企業の担当者に秘伝とも言える話を伺います。








