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【千の提言#8】「従業員は協同者」の精神で働き方改革を実践!ベンチャー感あふれる100年企業の挑戦(ライオン)

公開日: 2025.6.13
更新日: 2026.2.19

今や健康経営の代名詞となった「ホワイト500/ブライト500」を獲得した企業たち。彼らも初めは何も知らない状態からのスタートでした。「千の提言」ではこれから健康経営を始める企業に向けて、そんな「ホワイト500/ブライト500」企業が体験した失敗や成功の体験をインタビュー。健康経営を成功に導くエッセンスをご紹介します。第8回は「従業員は協同者」という健康経営の根本のような考えを持って成長してきたライオン株式会社にお話を伺いました。チャレンジングな取り組みに驚きました。ぜひ体感してください。

ライオン株式会社
1891年に創業された、ハミガキ・洗剤を中心とした大手生活用品メーカー。パーパスである「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」を実践するように様々な分野で先進的な取り組み、サービスを提供し続けている。従業員を協同者として、健康増進活動にも力を入れている。

健康経営優良法人 受賞・認定歴
2025年:健康経営優良法人2025~ホワイト500~
2024年:健康経営優良法人2024~ホワイト500~、健康経営銘柄2024
2023年:健康経営優良法人2023~ホワイト500~、健康経営銘柄2023
2022年:健康経営優良法人2022~ホワイト500~
2021年:健康経営優良法人2021~ホワイト500~
2020年:健康経営優良法人2020~ホワイト500~
2019年:健康経営優良法人2019~ホワイト500~
2018年:健康経営優良法人2018~ホワイト500~
2017年:健康経営優良法人2017~ホワイト500~

五十嵐 章紀(いがらし・あきのり)
人材開発センター
健康サポート室 室長

川本 和江(かわもと・かずえ)
人材開発センター
健康サポート室(平井)
保健師 産業保健看護上級専門家
健康経営エキスパートアドバイザー

持続的に発展し続けるエンジンとしての健康推進策が健康経営の始まり

──そもそも、ライオンが健康経営に取り組むきっかけは何だったのでしょうか?

五十嵐様:ハッキリと取り組みが始まったのは2019年の働きがい改革の時です。当時の社長が就任した年でもあったのですが、「会社が持続的に発展し続けるためには、人がしっかり機能する会社でなければ駄目だ。そのためには働きがいのある会社にしなければいけない」ということで改革が始まりました。当時私は人事セクションにいたのですが、「働きがいを高める」フレームを策定することが人事部の重要テーマの一つとなりました。テレワークやフルフレックスなど様々なワークスタイルや服装の自由化、社内姓の導入、副業の解禁などもこの時に採用されたものになります。

働き方に合わせてワークマネジメントも変えようと、人事制度の変更やキャリアデザインサポート制度や社内e-ラーニングシステムの稼働もこの時期からになります。また、社員が自由に言うべきことを言えるように1on1ミーティングを推奨し、関係性向上プログラムという管理職がほぼ全員参加するコミュニケーションセミナーにコンサルタントを入れるなど、そのアクションの一環として従業員の健康増進施策を入れています。これらのフレームが全て回らないと働きがいが高まったとは言えないだろうと考えたわけです。

──人事主導で始められたわけですね。

五十嵐様:私が健康サポート室に着任した当初は、「健康経営」という名前から健康サポート室の活動を指しているものと考え、初期はそのつもりで進めていたのですが、健康経営について学べば学ぶほど違和感が生じてきました。あらためて「健康経営」というものについて考えてみると、人事で推進しようとしていた「働きがいを高める」ことそのものではないかという話になりました。この考え方をベースに、社内でいろいろ取り組みたいと考えていたことを繋ぎ合わせて現在の形になったという経緯があります。

こういった、社員の働きがいを高めたり、健康のサポートを行ったりするという考えの背景には、「従業員は協同者」という創業者の言葉があります。店員や職人は、一緒になって店を発展させてくれる協同者であるのだから、そういった方々にしっかりとアプローチしていかなければいけないという考えです。創業当時は、まだまだ多かった未就学の従業員に向けて『小林夜学校』という学校も開講しています。また、自分たちの商売はただ単にモノを売ってお金をもらうわけではなく、社会に貢献するものだという考えのもと、商品である歯磨き粉の裏に『慈善券』と名付けたものをつけて、「空袋を会社として買い取る」という今のベルマークのような仕組みを当時から始めていました。だからこそ、「会社のDNAは愛の精神の実践だ」という発想が社員全体に染みついており、すんなりと話が進んだという部分もあります。

もともとそういった考えの取り組みが社内のあちらこちらにあったのは大きいです。おかげで「健康経営を始めるぞ!」と旗を振って改めて始めたというよりも、すでにある社内の取り組みを、最適なところに繋ぎ合わせていくような形で始めることができました。

──創業者の「愛の精神」や「従業員は協同者」という素地があったおかげで、なめらかなスタートを切れたわけですね。

五十嵐様:そもそも、こういった従業員を健康にする活動は2012年に制定した『ライオン健康指針』で定義し推進していました。ここでも「会社の協同者である従業員の健康は、従業員本人および家族の幸福の礎であるとともに、会社の健全な成長を支える経営基盤である」と定めています。これを達成するために、従業員の健康管理能力の向上、快適な職場環境作り、将来を見据えた活動という3つを柱とした指針を掲げています。つまり、健康経営のような考え方はだいぶ古くから会社の中にあったということです。

──健康経営が正式に制度化されたのは2016年頃だと思うのですが、それより前から当たり前のように社内で行っていたわけですから先進的ですね。それだけ早くからやっていたとなると、あまり失敗などはなかったのでしょうか。

五十嵐様:今申し上げたように、自然発生的に社内で動いていますので、経営層からするとあまり弊社が健康経営を一生懸命推進しているという認識はないかもしれません。また、社内改革というフレームで走っているのは従業員全員が知っていることですので、こちらもあまり自分が進めている感覚がないまま、会社生活の中で自然に行っていると思います。

──そうすると、経営層を巻き込んだり、経営層が率先して引っ張ったりするということはないのでしょうか。

五十嵐様:働きがい改革のフレーム自体は完全に経営とコミットしているので、巻き込むというよりも率先して動いているというのが実態です。この働きがい改革のスキームの中で、ワークスタイルのテーマやワークマネジメントのテーマ、コミュニケーションに関するテーマなどは経営層との議論で決めていますので、どちらかというと、自然に、当たり前にできてしまっているという感じかと思います。会社の中の働き方を良くして、人的資本の強化に取り組んでいるわけですから。

ベンチャー感あふれる健康経営へのアプローチ

──それだけ自然に健康経営を一丸となって進められるのは理想だと思います。各部署で取り組みをされていたというお話でしたが、実際にそれを横に広げる際に、難しく感じるようなことはなかったのでしょうか。

五十嵐様:そうですね、横断的な動きは取りやすいと思います。代表的な例ですと、弊社の研究開発本部では自分の業務時間の一部を、普段任されている研究テーマ以外の自由なテーマの活動に充てることが可能です。その際には組織を超えてチームを作ることもよくあります。

こちらのスライドのチームですが、女性の活躍支援、キャリアや健康についてケアできる活動をしたいという目的で、全く異なる部署の研究員たちが集まって実施した施策になります。2022年から毎年4回セミナーを実施し、オンライン開催で約300名ほどが参加しています。テーマは「妊活」や「更年期」など、女性のライフサイクルで欠かせない内容を取り上げるだけでなく、男性や管理職が知っておくべきものなどを取り上げています。この活動が、公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会が主催する『女性の健康経営アワード2023』で推進賞を受賞しましたが、われわれ健康経営を推進するメンバーとはまた違うポジションから発生した活動であるというのは、特徴的なことだと思います。

──それは面白いですね。皆さん独立してやられているということなんですか。

五十嵐様:そうですね。また別のチームの取り組みとしては、社内の新規事業提案の中で誕生した月経前のメンタルにスポットを当てた新規事業もあります。新規事業を始めたからにはまず社員が知ることが必要だ、ということでわれわれのチームもジョインして、社員向けのセミナーを定期的に開催しています。ちょうど、受賞したウェルビーイングラウンジチームは男性の不調にフォーカスしたセミナーを開催し、男女それぞれの健康課題に対応して提供する形になりました。

──新規事業チームとともに推進することが多いわけですね。

川本様:ざっくばらんにお話すると、専任部署もないので予算もありません。そのような中でどう活動を広げていくのかというところが工夫のしどころでした。そこで出てきたのが社内にいるいろいろな新規事業を考えているチームと連携することです。ここで紹介したウェルビーイングラウンジのメンバーを始め、オーラルケアの新規事業チームとも連携してイベントを開催したり、様々な分野で広げることができたのが非常に良かったと思います。

──お話を伺っていますと御社の場合、新規事業チームがたくさんあるのですね。

川本様:数は正確に把握できていませんが、多くの新規プロジェクトが走っています。横断のプロジェクトも入れると、かなりの数になります。新規事業にチャレンジできるイベントがあるのですが、そういったことをやり始めてから、風土的にも挑戦する方は増えています。

──100年企業とは思えないほどベンチャースピリットに溢れていますし、理想的な運営がなされていると思います。

川本様:例えば『おくち育』というサービスはお子様の噛む力を育むというコンセプトなのですが、これをまず弊社の社員に体験してもらいました。ガムを実際に社員に試食してもらったり、商品の紹介をしました。もうひとつ、法人向けウェルビーイングサポートサービス「おくちプラスユー」のサービスから、唾液検査システムSalivary Multi Test(SMT)の体験会を実施しました。2016年~2018年には、社内歯科健診で実施していましたが、その後に中途入社した従業員はSMT未体験ということもあり、体験会に多くの人が参加しました。SMTの結果の見方は、歯科衛生士の解説があり、初めて体験した検査結果から、歯科健診ではわからない口腔健康リスクを知ることができました。
自社サービスの体験会は、運動機器や健康度測定器を設置している本社GENKIアクションルームで開催しています。

──幅広い製品が多いですね。

川本様:ほかにもサステナビリティの活動も行っています。『おくちからだPJT』はこども食堂で実施している活動ですが、オーラルケアの大切さをすごろくのようなゲームで体感してもらったり、紙芝居で楽しみながら大切なケア方法を学んだりしてもらっています。全国小学生歯みがき大会の歴史は古く、昭和7年から開催し、現在では全国の小学校で実施している活動です。近年は国内だけでなくアジアでも開催しています。また、自治体と組んで、日本ではフロスの講座等も開いています。

健康経営の推進はコーディネート力が鍵

──よくある偏差値を上げるような目的ではなくて、自然発生的に生まれた取り組みがそのまま実績となっているわけですね。

川本様:無理に偏差値を上げようということはないですね。ただ、調査票にある項目の中で手薄な部分を常に考えていて、足りないところに厚みを持たせるために最適なプロジェクトと組もう、というような動きが多いですね。

──かなり幅広い範囲でのコーディネートだと思うのですが、独立した部署での動きはどのようにキャッチアップしているのでしょうか。

川本様:実はそこにはまだ仕組みができていないのです。そのため、いろいろな部署に顔を出しては、「健康経営について何かあったら教えてください」とお願いして回っています。

五十嵐様:昔から弊社は体育文化活動を会社として奨励しているので、各地区にいろいろなサークルがあります。そこが事業所ごとにイベントなどを開催していますので、そういうところで、話をすることもありますね。

──他社にはない動きというか、実に独特な取り組み方をされているんですね。

川本様:やはり専任部署がないというのが大きいのかもしれません

五十嵐様:ですから、「取り組みのキッカケは何?」と聞かれるのが意外と答えづらかったりします。

──そもそも活動や文化があったなら、なかなか言い難いですよね。こういう動きをぜひマネしたいという企業さんもいらっしゃると思うのですが、特にコーディネートをされる際に、調査票以外でどんなことに気をつけていますか。

五十嵐様:やはり一般の社員にはまだあまり健康経営という言葉や考え方が浸透していないので、経済産業省や厚生労働省が出している資料などを見せながら、社員に対して、健康に留まらない健康投資の話をしていますね。健康に投資することは、会社全体を育てることにつながるし、事業が大きく会社が強くなることで世の中に貢献できる活動なんですよと。そういうメッセージを最初に伝えた上で、一緒にやりませんかという話をしています。

愛の精神から始まるサービスが健康経営をブーストする

創業当時から健康経営的な取り組みを進めていたライオン社が取り組む施策は、なんともベンチャーマインドに溢れた取り組みが中心でした。それだけに非常にチャレンジングな施策が目立ちます。これらを生み出す土台としてどんな取り組みをしているのでしょうか。後編では、ライオンが目指す健康経営を実現するために欠かせなかった、健康管理システムの話を軸に、がん対策の強化施策など、具体的な話を伺います。

千の提言

千の提言シリーズ

取り組む企業が16,000社を超えた健康経営。 そのお手本とも言える「ホワイト500」「ブライト500」企業は どんな失敗をし、何に悩み、どう成功パターンを発見したのか。 各企業の担当者に秘伝とも言える話を伺います。

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