健康経営における投資対効果の考え方を整理しよう

健康経営を推進するにあたり重要なポイントになるのが投資対効果。従業員の健康への意識改革や促進を行うには莫大な費用がかかりますが、それに見合った効果が得られているのかを常に把握することはとても大切です。とはいえ、指標も多岐にわたるため、容易に把握できるものではないのも現実。そこで今回は、健康経営における投資対効果の考え方について解説します。
健康経営における投資対効果と費用対効果の違い
まず、健康経営への取り組みの効果を見る上で理解しておきたいのが、【費用対効果】と【投資対効果】の違いです。特に健康経営を行う上で重視した方が良いのは【投資対効果】といわれていますが、それはなぜなのでしょう?
まずは【費用対効果】と【投資対効果】の違いについて解説します。
費用対効果とは
かけた費用に対する効果のことを指し、特定のプロジェクトや施策にかかるコストと、それによって得られる利益を比較する考え方です。取り組んだプロジェクトや施策に対して即効性を期待する場合に重視するのがこの費用対効果で、おもにキャンペーンなどにおける短期間での効果を見る際に使われます。
投資対効果とは
投資によって得られる利益を、その投資にかかったコストで割ったもので、長期的な収益性を評価するために使われます。そのため、長期的な効果を期待している場合に重視する考え方となります。
健康経営は、短期的な効果だけでなく、長期的な企業の持続可能性や成長に大きく寄与するものです。そのため、すぐに効果が出なかったとしても将来的に効果が期待できるのであれば十分価値があるものといえるので、「投資対効果」を重視した方が良いという考え方が適しています。
健康経営にはどのような投資対効果があるのか?
健康経営においては長期的な効果が期待できるために投資対効果を重視した方が良いものの、どういった長期的な効果が期待できるのでしょうか?
この点については、経済産業省が2024年3月に発表した資料を抜粋して紹介します。
(出典:健康経営の推進について/経済産業省)
パフォーマンスについて
- 所属企業の健康投資レベルが高いと感じている人の方が、健康状態や仕事のパフォーマンスが良好であることが分かった

採用について
- 「企業が健康経営に取り組んでいることが就職先の決め手になる」と約6割が回答
- 求職者が働く職場に望むもののトップは、「心身の健康を保ちながら働けること」

離職について
- 健康経営度の高い企業の方が離職率は低い傾向
(2021年における全国の一般労働者の離職率と比較しても低い傾向) - 従業員にとって働きやすい環境を整えることで離職防止に
- 人材獲得につながり、採用倍率が上がった

上記のような結果もあるとおり、
- 健康経営を長期的に行うと従業員の健康状態が上がる
- パフォーマンスや帰属意識が高まる
- 離職率低下につながる
という良いサイクルが生まれ、持続的な効果や利益が生まれることがご理解いただけたのではないでしょうか。
また、別の資料では、TOPIX(東証株価指数)では健康経営度調査における上位評価20%の企業の株価時価総額が平均より上回る水準で推移しているというデータもあります。
(出典:データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン/厚生労働省)
情報を総合的に見ても、健康経営を長期的な取り組みとして行うからこそ最終的に会社の多角的な利益につながり、その結果、高い投資対効果が生まれるといえるのではないでしょうか。
投資対効果を長期的に判断するための考え方の軸とは?
大前提として、投資対効果を判断する考え方の軸は、自社の課題に沿った判断基準を設け、経営をしていく中でしかるべき時に確認していくのが良いでしょう。とはいえ、投資対効果を見る上で長期的に効果を検証するには、一般的にどのようなところに判断基準を置き、どのような確認方法とサイクルを取るのが良いか、参考になる情報を記載します。
判断基準
①従業員の健康状態
健康診断結果や疾病の発生率、メンタルヘルスの状況を評価。
②欠勤率の低下
有給休暇や病気欠勤のデータを分析し、健康施策の効果を把握。
③医療費の削減
健康施策導入後の医療費や保険料の変化を確認。
④生産性の向上
業務のパフォーマンスや効率性の改善を測定。
⑤定着率・離職率
従業員の離職率の変動を追跡し、健康施策の影響を評価。
⑥プログラムの参加率
健康施策やプログラムへの参加率をモニタリング。
⑦ワークライフバランスの改善
仕事とプライベートの調和が取れているかを調査。
⑧従業員の満足度
健康施策に対する従業員の満足度調査を実施。
確認方法
①データ収集と分析
健康診断結果や従業員アンケート、医療費データなどを定期的に収集し、データベース化する。
②従業員アンケート
健康施策に関する従業員の意見を定期的に調査する。満足度やニーズの変化を把握。
③フォーカスグループインタビュー
特定のテーマに関する意見交換を行い、従業員の具体的な声を聞く。
④健康経営指標の設定
KPI(重要業績評価指標)を設定し、具体的な数値目標を設ける。
⑤外部評価の活用
専門機関やコンサルタントによる評価やアドバイスを受ける。
確認サイクル
①年次評価
健康診断結果、医療費、従業員の満足度などを年に一度まとめて評価し、施策の効果を総合的に判断。
②四半期ごとのレビュー
生産性や欠勤率、プログラム参加率などの定量データを四半期ごとにチェックし、進捗を確認。
③月次ミーティング
健康経営に関するチームでの月次ミーティングを実施し、進行中の施策や問題点を共有。
④随時フィードバック
新しい健康施策を導入した際には、初期段階でのフィードバックを収集し、必要に応じて調整。
このような判断基準・確認方法のサイクルでモニタリングすることにより、状況を継続的に把握しながら、効果的な改善策を講じることができます。
上記を参考にしつつ、自社の課題に則した基準を長期的にモニタリングし、投資対効果があるかを正しく判断できるようにぜひ努めてみましょう。
<参考URL>
- 健康経営の推進について|経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/240328kenkoukeieigaiyou.pdf
- データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000171483.pdf
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