健康経営計画の作り方を完全網羅!先進企業の成功事例もご紹介

企業を取り巻く環境が激変する昨今、従業員の健康は企業の競争力を左右する重要な「資本」として捉えられるようになりました。本記事では、健康経営担当者や人事・労務、経営層の方に向けて、健康経営計画の定義やその重要性を再確認するとともに、現状分析から目標設定、具体的な施策の実行、そして効果を測る評価方法に至るまで、策定のプロセスを網羅的に解説します。先進企業の成功事例や外部リソースの活用方法も交え、自社の健康経営をより効果的に推進するための実践的なノウハウを提供します。関連ページ:
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健康経営計画の重要性とは?
従業員の健康は、企業の持続的な成長において欠かせない重要な基盤です。近年、人的資本経営への注目が高まる中で、「健康経営」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、単に健康診断を実施したり、休暇の取得を推奨したりするだけでは、真の健康経営とはいえません。企業全体で戦略的に取り組むためには、「健康経営計画」の策定が必須です。
健康経営計画の定義と目的
健康経営計画とは、企業が従業員の健康を保持・増進するために策定する、戦略的かつ具体的な施策の全体像を指します。これは、単なる福利厚生の一環ではなく、経営理念に基づいた経営戦略の一つとして位置づけられます。
健康経営計画の最大の目的は、従業員の健康向上を通じて、企業の生産性向上を図ることです。健康経営宣言などで企業トップが健康経営へのコミットメントを公表し、長期的な視点で従業員の心身の健康をサポートする体制を構築します。具体的には、保健師等の専門家と連携した定期的な健康管理、病気や不調の防止に向けた取り組みなどを計画に含めます。
2022年以降、日本全体で健康経営への関心がさらに高まっており、従業員本人だけでなく、社会全体に対しても企業が果たすべき役割として重要視されています。健康経営計画は、企業が従業員の健康にどう投資し、どのようなリソースや予算を各施策へそれぞれ割り当てるのかを明確にするための設計図となるのです。経営層から現場の従業員までが共通の目的意識を持ち、管理会計の手法も取り入れながら一貫した取り組みを進めるための強力な指針となります。
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企業における健康経営の必要性
なぜ今、企業において健康経営がそれほどまでに求められているのでしょうか。
企業の競争力向上
健康経営は企業の競争力向上に直結します。従業員が健康で活力に満ちた状態であれば、労働生産性が高まり、結果として企業価値の向上につながります。経済産業省が推進する「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人認定制度」に選定される企業が増加していることからも、健康経営が企業評価の重要な指標として社会から認知されていることがわかります。
従業員の満足度向上
従業員の満足度を高める点でも健康経営は不可欠です。適切な労働時間の管理やワークライフバランスの推進、インフルエンザ等の感染症予防、生活習慣病予防など、従業員の健康づくりおよび生活習慣の改善をサポートする体制は、従業員のエンゲージメント向上に寄与します。上司や経営陣が従業員の健康を重視する姿勢は、離職率の低下や優秀な人材の確保にもメリットをもたらします。
法令遵守とCSR
法令遵守と企業の社会的責任(CSR)という観点でも健康経営は重要な役割を担います。労働安全衛生法などの法令に基づき、50名以上の事業場における産業医の選任や定期健康診断の実施は企業の義務です。しかし、法令で定められた必須項目を満たすだけでなく、それを超えて自主的に健康経営に取り組むことが、現代の企業には求められています。企業において、健康経営の責任者を明確にし、健康保険組合などと連携して毎年継続的に取り組みを行うことは、ステークホルダーに対する責任を果たすことでもあります。自社の取り組みの全体像を把握し、基本となる健康方針を社会に発信していくことが、今後の企業経営において重要性を増していくでしょう。
健康経営計画の策定プロセス
健康経営を成功に導くためには、計画的かつ論理的なアプローチが必要です。ここでは、健康経営計画を策定するための具体的なプロセスを解説します。
現状分析と課題の特定
健康経営計画の第一歩は、自社の現状を正確に把握し、解決すべき課題を特定することです。思い込みや感覚に頼るのではなく、データに基づいた客観的な分析が不可欠です。
データの収集と状況の整理
現在、自社がどのような状況にあるのかを知るために、健康診断の結果やストレスチェックのデータ、休業日数、労働時間の状況などを収集します。また、従業員一人ひとりの健康状態や生活習慣に関するアンケート調査などを実施し、具体的な内容を把握することも重要です。これらのデータから、従業員の体力低下や特定の疾患の傾向、メンタルヘルスの問題など、現在の状態を整理します。
従業員の意見の反映と課題の特定
データだけでは見えてこない課題を浮き彫りにするためには、従業員の生の声を聞く機会を設けることが大切です。アンケートの自由記述欄やヒアリングを通じて、従業員が健康に関してどのような点に注目し、どのようなサポートを求めているかを確認します。これにより、経営層が認識している課題と現場のニーズとのズレを防ぐことができます。
業界ベンチマークとの比較検討
自社の立ち位置を客観的に評価するために、同業他社や健康経営優良法人に認定されている企業の取り組み(ベンチマーク)を参考にすることも有効です。他社の具体的な施策や位置づけと比較検討することで、自社の取り組みがどの水準にあるのか、どのような点を見直すべきかが見えてきます。これらのプロセスを経て、解決すべき課題を明確に特定し、次の目標設定へと進むことができます(詳細は後述の目次をご参照いただければ幸いです)。
目標設定と戦略の立案
課題が特定できたら、次はその課題を解決するための目標を設定し、戦略を立案します。目標は、企業全体の健康経営の方針に沿ったものである必要があります。
SMARTな目標の設定
目標は「具体的(Specific)」「測定可能(Measurable)」「達成可能(Achievable)」「関連性がある(Relevant)」「期限がある(Time-bound)」というSMARTの原則に基づいて設定します。例えば、「従業員の健康を増進する」といった曖昧な目標ではなく、「2023年の3月までに、喫煙率を〇%低下させる」「対象者の特定保健指導の実施率を〇%向上させる」といった、明確で測定可能な指標を設定します。
戦略マップを活用した全体像の可視化
戦略を立案する上で、近年重要視されているのが「戦略マップ」の作成です。戦略マップとは、企業の最終的な経営課題の解決に対して、どのような健康施策(健康投資)を実施し、それが従業員の意識・行動変容や健康状態の改善にどうつながっていくのかという論理的なストーリーを図式化したものです。これを活用することで、各施策の位置づけが明確になり、経営層から現場までが同じ全体像を共有しながら、一貫した取り組みを進めることが可能になります。
短期・中期・長期の視点による戦略的アプローチ
目標設定においては、時間軸を意識した戦略的な考え方が求められます。作成した戦略マップで描いた道筋に沿って、最初の1年(例えば2月スタートなど)で達成すべき短期的な目標、3〜5年で目指す中期的な目標、さらにその先の長期的なビジョン(例:ホワイト企業としての定着)を明確にします。これにより、場当たり的な対策ではなく、効果的かつ戦略的な施策の一覧を策定することができます。
関係者の合意形成と方針の策定
健康経営は人事部門だけで進めるものではありません。経営層から現場の管理職、そして従業員まで、関係者全員が方針を理解し、納得していることが成功の前提となります。目標や戦略の策定過程では、各部門に意見を求め、可視化された戦略マップを共通言語として用いながら合意を形成して進めます。健康経営に関するガイドラインを設置し、仕事と治療の両立支援などの考え方を明確に社内に示す(例えば定期的なメルマガでの発信など)ことで、全社的な取り組みとしての土台を築きます。健康投資という観点から、これらの戦略が企業の集中力向上や業績にどう寄与するかを説明することも重要です。
実行計画の作成
目標と戦略が固まったら、それを具体的な行動に落とし込む「実行計画(アクションプラン)」を作成します。
具体的なアクションプランの作成とスケジュール立案
実行計画には、各目標を達成するために「誰が」「いつ」「何を」「どのように」行うかを具体的に記載します。例えば、新しい健康プログラムの導入や、健康づくりに向けた社内イベントの開催、専用の健康管理アプリの活用など、実際の施策をスケジュールに落とし込みます。いつまでに作業を完了させるかという1日単位、月単位での詳細なスケジュールを立てることで、計画が実行可能なものとなります。
必要なリソースの確保と体制構築
計画を実行に移すためには、必要なリソース(予算、人員、時間、設備)を適切に配分する必要があります。各施策の実施に必要な予算を確保し、担当部署や担当者の業務を明確にします。また、産業医や保健師などとの連携体制を構築し、専門的な知見を取り入れながら計画を進める体制づくりを行います。
進捗管理の仕組み作り
計画を立てるだけでなく、それが計画通りに進んでいるかを確認する仕組み(マップや構成図などを用いた可視化)も重要です。定期的なミーティングを設け、進捗状況を確認し、必要に応じて計画の修正を行う柔軟性を持たせることが、期待する成果を生み出す上で不可欠です。経営層と現場が一体となって取り組みを進めるための、具体的な実行計画の作り方が問われます。
健康経営計画の実施に向けた施策
ここでは、策定した計画を具体的にどのように実行していくか、代表的な施策について解説します。
従業員の健康意識を高める施策
健康経営の成功は、従業員一人ひとりが自らの健康に関心を持ち、自発的に行動できるかどうかにかかっています。そのためには、まず健康意識を高めるための啓発活動が必要です。
健康教育プログラムの実施と情報提供
従業員の健康リテラシーを向上させるため、定期的な健康教育プログラムを実施します。食生活の改善、適度な運動の習慣化、十分な睡眠の重要性などに関するセミナーを開催したり、社内報や社内イントラで健康に関する正しい情報を提供したりします。また、感染症の流行時期には、予防や対策に関する情報をタイムリーに発信し、従業員の感染予防への意識を高めるよう努める必要があります。
健康イベントの開催と参加勧奨
健康イベントの開催は、従業員が楽しみながら健康について考える良い機会となります。例えば、部署対抗のウォーキングイベントや、ヘルシーメニューを提供するランチイベントなどは、従業員同士の交流を深めつつ、健康への関心を高める効果が期待できます。人事部門は、これらのイベントへの参加を積極的に勧奨し、多くの社員が参加しやすい環境を整えます。
意識向上を促進する制度の導入
健康づくりに取り組む従業員を評価・支援する制度の導入も効果的です。例えば、禁煙外来の受診費用補助や、健康診断で優良な結果を出した従業員へのインセンティブ付与などが考えられます。また、健康経営優良法人などの認定制度への申請に向けて、社内全体で健康課題に取り組む機運を高めることも重要です。勤務時間内に健康に関する取り組み(例えば短いストレッチの時間など)を行うことを許可するなど、働き方と健康増進を両立させる工夫が求められます。
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健康診断やメンタルヘルス対策
健康問題の早期発見・早期治療、そして予防の観点から、健康診断やメンタルヘルス対策は健康経営の根幹をなす施策です。
定期健康診断と保健指導の徹底
労働安全衛生法で義務付けられている定期健康診断を確実に実施することはもちろん、その結果に基づいたフォローアップが重要です。健康リスクが高いと判定された従業員に対しては、産業医や保健師による面談や特定保健指導を実施し、生活習慣の改善をサポートします。また、年齢やリスクに応じて、人間ドックや各種がん検診の受診を推奨する体制を整えることも有効です。
メンタルヘルス対策と研修の導入
ストレス社会において、心の健康(メンタルヘルス)を守ることは極めて重要です。年に一度のストレスチェックの実施に加え、その結果を組織分析し、職場環境の改善につなげます。また、管理職向けのラインケア研修や、一般従業員向けのセルフケア研修を年間を通じて定期的に実施し、メンタルヘルス不調の予防と早期対応の重要性を啓発します。
相談窓口の設置と医療機関との連携
従業員が心身の不調や仕事のストレスについて、気軽に相談できる窓口を設置します。社内の産業医や保健師だけでなく、外部の専門機関と連携した相談窓口を設けることで、プライバシーに配慮しつつ、より専門的なサポートを提供できます。また、必要に応じて適切な医療機関への受診を促し、治療と仕事の両立を支援する総合的な体制を構築することが、休職や離職を避けるために重要です。インフルエンザ等の予防接種の社内実施なども、従業員の健康を守る有効な手段です。
職場環境の改善とコミュニケーション促進
従業員が健康で快適に働ける環境を整えることは、生産性の向上だけでなく、従業員のモチベーション維持にも直結します。
快適な作業環境の整備
作業環境の改善は、健康経営における重要なステップです。例えば、長時間のデスクワークによる身体的負担を軽減するために、エルゴノミクス(人間工学)に基づいたオフィスチェアやデスクを導入したり、適切な照明や空調管理を行ったりします。テレワークが普及する中では、在宅勤務環境の整備を支援することも重要です。働きやすい職場環境を整えることで、従業員のパフォーマンスを高めることができます。
コミュニケーションを促進する取り組みとチームビルディング
良好な人間関係は、職場のストレスを軽減し、メンタルヘルスを保つ上で不可欠です。オープンなコミュニケーションを奨励し、気軽に相談や意見交換ができる雰囲気を醸成します。定期的な1on1ミーティングの実施や、社内SNSの活用なども有効です。また、部署の垣根を越えたチームビルディング活動や、健康をテーマにしたランチミーティングなどを通じて、メンバー間のつながりを深める機会を設けます。
多様性に配慮した環境づくりと制度の見直し
従業員一人ひとりの背景やライフステージに応じた、柔軟な働き方を支援する制度の整備も職場環境改善の一環です。例えば、育児や介護と仕事の両立を支援する制度の拡充や、女性特有の健康課題に関するセミナーの開催、適切な食事環境(社食や健康的な弁当の提供など)の整備などが挙げられます。従業員が長く健康に働き続けられるよう、時代の変化に沿った柔軟な制度の変更や発信が求められます。
健康経営計画の評価と改善
健康経営の取り組みは、計画を実行して終わりではありません。その効果を測定し、継続的に改善していくプロセスが不可欠です。
効果測定の方法と指標
実施した施策が、当初の目的に対してどの程度の成果を上げているのかを客観的に評価するためには、適切な効果測定が必要です。
具体的な評価指標(KPI)の設定
効果を測定するためには、あらかじめ具体的な指標(KPI)を設定しておくことが重要です。例えば、「健康診断の有所見者率の低下」「ストレスチェックの高ストレス者率の減少」「有給休暇の取得率の向上」「アブセンティーズム(病欠)やプレゼンティーズム(出勤しているがパフォーマンスが低下している状態)の改善」などが挙げられます。目指す成果に直結する、有効かつ測定可能な指標を選定します。
定期的なデータ収集と見える化
設定した指標に基づいて、定期的にデータを収集します。健康診断やストレスチェックの結果といった定量データに加え、従業員満足度調査やアンケートによる定性データも収集することで、取り組みの影響を多角的に把握できます。収集したデータは、ダッシュボードツールなどを用いて「見える化」し、経営層や担当者がいつでも状況を確認できる機能を持たせることが理想的です。
結果の分析と改善点の抽出
収集したデータを分析し、施策の効果を検証します。期待した成果が得られている部分と、そうでない部分を明確にし、その理由(なぜ効果が出なかったのか、制度の周知不足か、方法が適切でなかったかなど)を深く掘り下げます。例えば、健康イベントへの参加者が増えることで、実際に精密検査の受診率が上がったかなどの関連性を確認します。これらを検証することで、次に取り組むべき改善点が明らかになり、企業の成長に寄与する健康経営の意義を再確認することができます。
PDCAサイクルの活用
健康経営を持続的に発展させるためには、PDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)を回し続けることが重要です。
計画の明確化と実行のフォローアップ
まず、「Plan(計画)」の段階で、現状分析に基づいた具体的な目標と施策を設定します。「Do(実行)」の段階では、計画に沿って施策を実践します。この際、担当者は定期的に進捗を確認し、計画通りに進んでいない場合は早期にフォローアップを行うことが重要です。例えば、eラーニングの受講率が低い場合は、期限前(例えば10月や12月など期間の区切りごと)にリマインドの案内を出すといった対応が求められます。
評価と改善策の反映による継続的な進化
「Check(評価)」の段階では、前述した効果測定の手法を用いて、取り組みの成果を客観的に評価します。そして「Action(改善)」の段階で、評価結果に基づいて施策の見直しや新たな課題への対応策を検討します。このフレームワークを活用し、得られた知見を次の計画(Plan)に反映させることで、健康経営の取り組みは継続的に改善・進化していきます。健康増進の取り組みを社内に定着させ、文化として醸成していくためには、長期的な視点でのPDCAサイクルの継続が不可欠です。経済産業省などが提供する健康経営度調査のフォーマットをダウンロードし、評価のポイントとして役立てることも有効な手段です。
成功事例から学ぶ健康経営計画
他社の成功事例や失敗から学ぶことは、自社の健康経営計画をより効果的なものにするための近道です。ここでは、具体的な2社の先進事例の概要を解説します。
先進企業の取り組み事例
健康経営を積極的に推進し、「ホワイト500」などの認定を受ける先進企業の取り組み内容を紹介します。
成功事例①全日本空輸株式会社(ANA)
全日本空輸株式会社(ANA)の事例では、経営層が持つ「安全と健康」への強い思いを従業員へ適切に周知し、施策を進めるため、「戦略マップ」の構築と精緻化に注力しています。最終的な経営目標と各施策、そしてデータ項目がどうつながるのかを可視化し、労政部や健康保険組合、さらには専門家である産業医とも連携して具体的なデータ設定を行っています。
取り組みの成果
ANAでは、この戦略マップの導入と精緻化を進めることで、従業員が健康経営の全体像や自身の健康の大切さを「自分事」として捉えやすくなるという成果を目指しています。経営層の思いが現場に届かないという多くの会社が抱える課題を、可視化されたマップという具体的なコンテンツで解決しようと取り組んでいます。これにより、従業員の参加意欲を高め、組織への貢献につなげる良いサイクルを開始しています。
成功事例②株式会社PHONE APPLI
次に、株式会社PHONE APPLIの具体例を紹介します。PHONE APPLIの事業では「データドリブン・ウェルビーイング経営」を掲げ、従業員との対話を大切にしています。独自の月次アンケート「WCS」を通じて月に1回の頻度で最新のデータを取得し、それをBIツールのダッシュボードでマネージャーが閲覧できる状態にしています。このデータを他者との比較に使うのではなく、過去からの時系列推移として把握し、メンバーとの1on1における対話の羅針盤として活用しています。
取り組みの成果
年に一度の調査では見逃してしまう小さな変化を月次データで捉えることで、不調が顕在化する前に対処する「先手の経営」を実現しています。集めたデータを取りっぱなしにせず、フィードバックループを回すことで、従業員の参加意欲を高め、より積極的な健康経営を進める土壌を作り上げました。
データは「対話」のための共通言語。データドリブン・ウェルビーイング経営の全貌
先進事例から見る成功要因の分析
上記2社の成功事例に基づく要因として、大きく3つのポイントが挙げられます。
データに基づく客観的なアプローチの採用
データに基づく客観的なアプローチの採用です。勘や経験に頼らず、健康状態やアンケート結果を定期的に取得・把握することが重要です。
データを「対話」の機会に活用
データを「対話」の機会に活用している点です。データを単なる評価指標にするのではなく、上司と部下の関係を深め、課題を解決するための共通言語として位置づけています。
経営層と現場が一体となるツールの構築
経営層と現場が一体となるためのツール(戦略マップやダッシュボード)を構築し、施策の理由や背景を適切に周知していることです。
これら3つを押さえることが、ホワイト500やブライト500などに認定されるような優れた取り組みの基盤となります。
失敗事例から学ぶ注意点と改善策
一方で、健康経営がうまくいかない失敗事例からノウハウを学ぶことも大切です。よくある失敗は、アンケートを実施したものの、データを取りっぱなしにして従業員へのフィードバックがないケースです。これでは従業員が不信感を抱き、その後、各種施策への参加率が大きく低下してしまいます。
また、初期のANAの事例にもあったように、健康情報の管理が紙やExcelのまま一元化されていないと、データの分析や進捗の把握に多大な労力がかかります。近年、こうした問題を解決する改善策として、健康管理システム(SaaS)の導入が進んでいます。データを一元管理し、施策の前後の変化をレポートに基づき可視化することで、従業員が具体的な成果を知る機会を増やすことが推奨されます。下記に記すようなリソースを適切に活用し、失敗を未然に防ぐことが求められます。
健康経営計画を進めるためのリソース
健康経営計画を効果的かつ効率的に進めるためには、社内外のリソースを適切に活用することが重要です。
外部支援機関の活用
自社だけで専門的な知識やノウハウをすべて網羅することは困難な場合があります。そのような時は、外部支援機関のサポートを積極的に利用することを検討しましょう。
専門知識を持つ機関の選定と連携
健康経営のアドバイザリーサービスを提供するコンサルティング会社や、EAP(従業員支援プログラム)機関、健康管理システム(SaaS)を提供するベンダーなど、様々な外部支援機関が存在します。自社の抱える課題や目的に合わせて、必要な専門知識や実績を持つ機関を選定することが重要です。例えば、メンタルヘルス対策を強化したい場合は、専門のカウンセラーが対応する相談窓口サービスを提供する企業と連携するといった対応が考えられます。
例えばエムスリーヘルスデザインでは、現状分析から目標設定、施策の実行までを伴走支援する『健康経営コンサルティング』や、メンタルヘルス不調の未然防止から職場復帰までを包括的にサポートする『EAP(従業員支援プログラム)』を提供しています。約40年にわたるEAPサービスの提供実績と、公認心理師や臨床心理士などの専門資格を持つスタッフが、貴社の課題に合わせた最適なサポート体制を構築します。
コストと効果の比較・評価
外部サービスを導入する際は、初期費用やランニングコストなどの負担と、それによって得られる期待効果(業務効率化や健康指標の改善など)を慎重に比較検討します。導入後も任せきりにするのではなく、定期的に支援機関とのミーティングの場を設け、提供されるサービスの内容や効果を評価し、自社の状況に応じた柔軟な対応(サービス内容の調整など)を促すことが大切です。社外の専門家の知見を広く取り入れることで、担当者の負担を軽減しつつ、より質の高い健康経営を推進することができます。
社内リソースの最適化
外部リソースの活用と並行して、社内リソース(人材、組織体制、システム)の最適化を図ることも不可欠です。
健康経営に関する社内教育と意識向上
健康経営を一部の部署の取り組みにとどめず、全社的な活動とするためには、従業員に対する継続的な教育が必要です。健康経営の目的や自社の取り組み内容、提供しているサービスやツール(無料の健康管理アプリなど)の利用方法について、社内ポータルサイトや研修を通じて広く周知徹底します。特に管理職層に対しては、部下の健康管理や職場環境改善の重要性に関する教育を重点的に行い、現場での実践を後押しします。
役割分担の明確化と進捗管理
健康経営を推進する組織体制を明確にし、人事部門、産業保健スタッフ、現場の管理職など、関係する各部門の役割分担を整理します。その上で、定期的な会議体を設け、各施策の進捗状況を共有・確認します。計画通りに進んでいない項目については、その理由を分析し、必要なフォローや計画の見直しを柔軟に行います。
ITツールによる業務効率化
健康診断の結果管理やストレスチェックの実施、従業員の労働時間の把握など、健康経営に関わる業務は多岐にわたります。これらをExcelなどの表計算ソフトで手作業で管理することは、担当者にとって大きな負担となり、データ分析のハードルも高くなります。そこで、従業員の健康情報を一元管理できる健康管理システム(SaaS)などの優れたITツールを導入・活用することで、事務作業を大幅に削減・効率化できます。これにより、担当者は浮いた時間をより戦略的な施策の立案や、従業員への個別フォローといった本来の業務に注力できるようになり、限られた社内資本の維持と生産性の最大化につながります。
例えば、エムスリーヘルスデザインが提供する健康管理システム『ハピネスパートナーズ』は、健診結果やストレスチェック、面談記録などの健康データをクラウドで一元管理し、業務工数を大幅に削減します。さらに、独自プログラム『EBHS Life(エビスライフ)』による健康分析レポートを標準搭載しており、組織の健康課題を直観的なスコアで『見える化』します。これにより、客観的なデータに基づいた優先度の高い施策の立案と、精度の高いPDCAサイクルの実践が可能になります。
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まとめ
健康経営計画は、企業が従業員の健康を守り、組織全体の生産性を向上させるための極めて重要な戦略基盤です。思いつきの施策を単発で行うのではなく、現状分析から目標設定、具体的なアクションプランの実行、そして効果測定による継続的なPDCAサイクルの実践が求められます。本記事で解説したプロセスや、データと対話を重視する先進企業の成功事例を参考に、社内外のリソースを最大限に活用し、自社に最適な健康経営計画を構築・推進してください。従業員の心身の健康への投資は、必ずや企業の持続的な成長という形で還元されるはずです。
参考文献
経済産業省「健康経営の推進」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html
厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」
https://kokoro.mhlw.go.jp/
独立行政法人労働者健康安全機構「産業保健総合支援センター」
https://www.johas.go.jp/shisetsu/tabid/578/Default.aspx
GO100「【千の提言#3】経営層と従業員をつなぐのは「戦略マップ」:全日本空輸株式会社(ANA)」
https://go100.jp/column/senno-teigen-3_ana/
GO100「データは「対話」のための共通言語。データドリブン・ウェルビーイング経営の全貌(PHONE APPLI)」
https://go100.jp/column/senno-teigen-extra2_phoneappli/
健康経営/産業保健コラムシリーズ
企業に義務付けられている産業保健体制の構築から 健康経営の考え方・推進法まで幅広い話題をご提供。 これを読むだけで今求められている施策・対応への理解が進みます。


