健康診断結果で脂質の異常判定に……予防に向けて企業ができることは?

健康診断で引っかかりがちな項目のひとつである脂質の異常。中性脂肪やコレステロール値の異常が原因となって起こる異常で、放っておくと心筋梗塞や脳卒中など心血管系疾患のリスクが高まるとされています。従業員の健康リスクとなる脂質の異常を抑えるために、企業としてどんな対策が考えられるのでしょうか。今回は、脂質異常について詳しく解説しながら、従業員の脂質異常を防ぐ健康経営のアイデアについても紹介します。
そもそも脂質の異常とは?原因は中性脂肪やコレステロール

脂質の異常とは、主に血液中に余分な脂質が多くなっている状態のことを指し、中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールが多すぎたり、HDL(善玉)コレステロールが少なすぎたりする状態がこれにあたります。それぞれの特徴と基準値を見ていきましょう。
中性脂肪
体内に存在する脂質の1つで、いわゆる「体脂肪」に多く含まれます。身体活動のエネルギー源のひとつであり、私たちが生きていく上で欠かせないものですが、増え過ぎるとさまざまな健康上の問題を引き起こすことも……。食事に含まれる脂質の摂りすぎのほか、米やパンなどの炭水化物の食べ過ぎやお酒の飲みすぎも原因として挙げられます。中性脂肪の基準値(正常値)は空腹時には30~149mg/dLとされ、健康診断の結果が空腹時に150mg/dL以上、または非空腹時に175mg/dL以上の場合は、「高トリグリセライド血症」と診断され、保健指導判定となります。
LDL(悪玉)コレステロール
肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働きがあり、増えすぎると動脈硬化を引き起こします。これが悪玉コレステロールと呼ばれる所以です。健康診断では、空腹時に120mg/dl未満が基準値とされ、120mg/dl以上になると「高LDLコレステロール血症」と診断され、保健指導判定となります。
HDL(善玉)コレステロール
余剰なコレステロールを回収する役目を果たしており、善玉コレステロールとも呼ばれています。健康診断では、空腹時に40mg/dl以上が基準値とされ、それ以下になると「低HDLコレステロール血症」とみなされ、保健指導判定となります。
こうした脂質異常は動脈硬化の大きな要因となります。血液中に中性脂肪やLDLコレステロールが多い状態が続くと、余分な脂質が血管の壁に沈着して血管が狭くなり、動脈硬化の原因に。
また、脂質異常症は、肝機能障害によってもたらされていることもあり、同時に脂肪肝などの症状が見られることも多いです。
脂質異常はほとんどの場合に自覚症状が現れないので、健康診断での血液検査でその値を調べ、早い段階で異常の発見・対策をとることが重要になります。
脂質異常の主な原因は食生活
LDLコレステロールや中性脂肪の値は、遺伝的な要因や他の病気が要因で高くなるケースもありますが、多くの場合は肉の脂身やラード、生クリーム等の動物性脂肪の摂りすぎに加え、甘いものや炭水化物の摂りすぎによるカロリーオーバーが原因となります。さらにHDLコレステロールの減少を引き起こす運動不足や喫煙も、脂質異常の大きな原因だと考えられるでしょう。このため、脂質異常の予防には、以下のような食生活の見直しと生活習慣の改善が求められます。
食事
甘い食べ物、米やパン、麺類などの炭水化物、動物性の脂肪は控え、植物性・魚類の脂肪を摂りつつ、魚や大豆などのたんぱく質や野菜・果物など、バランスよく栄養を摂取する。また、食べ過ぎには注意して、腹八分目を心がけましょう。また、お酒を飲む人は週に1日は休肝日をつくりましょう。
生活習慣
歩く時間を増やす、なるべく階段を使うなど、日常生活の中に無理のない範囲で体を動かす習慣を取り入れるよう心がけてください。ジムに通う、スポーツを始めるなど、新しい運動習慣を身につけるとなおよいでしょう。喫煙習慣のある人は禁煙にチャレンジしたり、好きなことをしたりする時間をつくって、自分なりのストレス解消法を見つけてみるのも有効です。
従業員の食生活を改善する企業施策のアイデア

食生活は脂質異常に大きく関連しています。従業員の食生活を改善できれば健康診断での異常判定を減らすことができるので、企業としては積極的に施策を講じていくことが重要です。以下に取り組みのアイデアを紹介します。
食育セミナーの開催
管理栄養士や食育アドバイザーなどを招き「生活習慣病を予防するレシピ」や「簡単に作れて栄養が補える献立」などのセミナーを実施すると、従業員が普段の食生活を見直すきっかけづくりに役立ちます。継続的な食育施策とするために、定期的な開催するなどの工夫も必要になります。
昼食提供サービスの導入
昼食に野菜を豊富に使った栄養バランスのよい食事を提供することは、従業員の健康維持に有益です。一人暮らしの従業員が多い場合は、自分で作らなくても栄養バランスがよい食事が摂れ、昼食代の節約にもなるため、特に有効な取り組みだといえます。弁当や給食の「配達サービス」や、冷蔵庫にあるメニューをレンジで解凍して食べてもらう「設置型サービス」など、企業の規模やニーズに応じて選ぶとよいでしょう。
食の専門家による指導
栄養バランスが整った食事が大事だとわかっていても、自分で改善プランを立て、持続的に実行するのは、従業員とってはハードルが高いかもしれません。そこで、専門家のアドバイスを取り入れてみるのもおすすめです。地域の保健センターを利用したり、外部の相談サービスを導入したり、健康相談ができるチャットツールを活用するなど、相談の方法はさまざまあるので、自社に合ったものを探してみるといいでしょう。専門家による相談窓口の設置は、従業員が抱える食生活の課題を企業が把握しやすくなるというメリットもあります。
日頃の食習慣の見直しや改善は、脂質異常だけでなく、生活習慣病全体の予防にも有効です。従業員に健康的な生活を促し、健康診断での異常判定を減らすための取り組みとして、自社で検討してみてはいかがでしょうか。
<参考URL>
- 脂質異常症|国立循環器病研究センターhttps://www.ncvc.go.jp/coronary2/risk/dyslipidemia/index.html
- 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版|一般社団法人 日本動脈硬化学会
https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_220808.pdf
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