従業員の安全と健康を守るために…労働衛生の教育方法について解説

健康経営への関心が集まる中、あらためて従業員の安全や健康が注目されています。けがや疾病など、さまざまなリスクが想定される中でも、従業員が安全に働くためには、最適な職場環境の整備といった努力に加え、従業員に向けた労働衛生の教育も欠かせません。今回は、労働衛生教育の概要や、それぞれの具体的な方法を解説します。
そもそも労働衛生とは? どうして重要なの? 労働衛生の基礎知識

従業員の健康や安全が担保されていない職場では、従業員は日々不安を抱えながら業務に携わらなければならず、十分なパフォーマンスを発揮できません。さらに、そうした職場環境では人材の募集や定着にも悪い影響を及ぼします。
そこで必要になるのが、従業員に対して安全な職場環境を維持しようという労働衛生(安全衛生)の考え方です。企業が理想的な労働衛生を実践していくためには、従業員を守る現場の設備投資はもちろんながら、従業員に対する教育も含まれます。たとえば、作業量やスケジュールがひっ迫した中では、労働者は業務において安全性より効率を重視し、業務の省略や簡易化をはかろうとする傾向があります。しかし、業務の簡略化は同時に、安全性を犠牲にしてしまうケースが少なくありません。従業員が安全かつ健康的に業務に従事するためには、労働者はもちろん、従業員を指揮・監督する管理監督者それぞれが、安全衛生教育の重要性を理解しておく必要があります。
また、労働衛生は設備機器や作業環境など、身体的な労働災害につながりやすい部分に着目しがちですが、長時間労働や職場の人間関係などの労働環境からくるメンタルヘルスの不調をスコープに入れることも重要です。
労働衛生のための教育に向けて知っておきたい種類と内容
労働衛生教育は、業種・職種・雇用形態などにかかわらず、全ての労働者に対して作業開始時や作業内容変更時に実施する必要あります。
「労働安全衛生法」によると、安全衛生教育の種類は6つ。そのうち実施が義務化されているものが3つ、努力義務とされるもの3つがあります。
義務化されているもの
雇入れ時・作業内容変更時の教育
企業は、新たに従業員を雇い入れる時や労働者の業務内容変更時には、労働者に対して安全衛生教育をする必要があります。基本的な安全衛生教育の内容は以下の通りです。
- 機械、原材料などの危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法
- 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法
- 作業手順/作業開始時の点検
- 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防
- 整理、整頓及び清潔の保持
- 事故時等における応急措置及び退避
- その他、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項
※ただし、機械設備や有害物質を取り扱う現場作業を伴わず、事務仕事が中心となる業種などにおいては1~4の内容は省略可能。
特別教育
厚生労働省が指定する危険有害業務に従事する従業員に対して実施が義務付けられている安全衛生教育です。特別教育を必要とする業務には、アーク溶接や小型車両系建設機械の運転など49の業務が指定されています。
職長等に対する教育
建設業や製造業、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業において、新たに職務に就くことになった職長や、作業中の労働者を直接指導・監督する者に対し、特に必要とされる事項についての安全または衛生のための教育を行う必要があります。
努力義務とされているもの
安全管理者等への能力向上教育
安全衛生業務に従事する者の能力を維持・向上させるため、対象者へ実施する安全衛生教育のことをいい、「安全管理者」「衛生管理者」「安全衛生推進者」「衛生推進者」「作業主任者」「安全衛生管理者」「その他の安全衛生業務従事者」等が該当します。基本的に対象者には初任時に教育を行い、その後も定期教育や大きな作業替えが生じた際の随時教育があります。
危険・有害な業務に従事する者に対する安全衛生教育
企業が現場の実態を踏まえつつ、「危険または有害な業務に現に就いている者」と判断される従業員に対し行う安全衛生教育です。
健康教育・健康保持促増進措置
従業員一人ひとりが自身の健康について目を向け、運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導など、健康維持・増進に努められるようサポートする教育です。従業員側もこれらを利用して、自身の健康保持や増進に積極的に役立てることが重要です。
労働衛生の教育に向けてやるべきことは?

実際の教育を行うには、どんな点に気をつけて準備を進めていけばよいのでしょうか。順を追って解説していきます。
①教育の実施計画等の作成
検討する教育の種類ごとに対象者や実施時間、実施場所、講師、教材等を記載した実施計画書を作成します。従業員に対して継続的な教育を実施できるよう、進捗確認を含めた中長期的な計画立案が理想的です。どの教育を受け、どう効果があったかの判断できるよう、各従業員の教育履歴等を記録しておくとよいでしょう。
②実施責任者の専任
対象者の選定、実施方法・実施内容の検討、場所・時間の設定、広報など、実施計画に沿った各タスクにおける担当責任者を選任します。
③実施内容の指針作成
各教育内容を充実させるためにタスクごとに注意するポイントをまとめ、検討の指針とします。以下の点などに気をつけるといいでしょう。
- 講師選定は、業務に関する知識・経験を有し、かつ、教育技法に関する知識・経験を有する者である点を重視する
- 教材には、労働災害事例等が示された具体的な内容がわかるものを採用する
- 教育実施時は、現場での実習や受講者発表の事例研究、課題解決等の討議方式を採用するなど、参加型で自分事化できる工夫をする
- 労働者の危険感受性を高めるため、危険を体感できるような教育を検討する
- 知識や技術の乏しい若年層や未経験層に対しては、実際に従事する業務に特有の危険性や有害性、危険有害物の正しい取り扱い方法、作業手順など、実践的な教育を実施する
労働衛生教育は、労働災害や業務上の疾病を避け、従業員の安全と健康を守るために非常に重要です。教育の内容はもちろん、種類や対象者を正しく理解して実施していきましょう。
<参考URL>
- 労働衛生のハンドブック|東京産業保健総合支援センター
https://www.tokyos.johas.go.jp/pdf/handbook/R05handbook.pdf - 労働安全衛生法|安全衛生情報センター
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-1/hor1-1-1-m-0.htm
健康経営/産業保健コラムシリーズ
企業に義務付けられている産業保健体制の構築から 健康経営の考え方・推進法まで幅広い話題をご提供。 これを読むだけで今求められている施策・対応への理解が進みます。









