食育実践優良法人顕彰創設から考える健康経営における食育とは

2024年12月に開催された第1回健康経営推進検討会において、農林水産省は新たに「食育実践優良法人顕彰(仮称)」の創設および推進を発表しました。この制度は、健康経営顕彰制度に対応するものであり、推進開始から10年目を迎える健康経営において「食育」は重要な要素です。今回は、発表された食育実践優良法人(仮称)の概要を確認しつつ、健康経営における食育の取り組みについて解説します。
農水省が創設予定の食育実践優良法人(仮称)とは
今回発表された「食育実践優良法人(仮称)」は、経済産業省が推進する健康経営優良法人認定制度を活用して創設される予定の新たな顕彰・認定制度です。農林水産省は、2005年に成立した「食育基本法」に基づく「食育推進基本計画」を推進しています。現在、第4次食育推進基本計画が進行中であり、経済産業省、厚生労働省、文部科学省、こども家庭庁などの行政機関と連携し、国民全体を対象とした食育の促進に取り組んでいます。

「⾷育実践優良法⼈顕彰(仮称)」の創設について(農林⽔産省)”.経済産業省公式サイト.2024年12月.
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/001_s02_00.pdf,(参照:2024年9月5日).
多くの場合、食育は子供が対象となるケースが多いのですが、なぜ企業に向けた取り組みが創設されることになったのでしょうか。今回の取り組みの背景には、近年厚労省が行った調査によって若い世代の野菜・果物の摂取量が減っており、大人における食育の見直しの必要性が高まったことが挙げられています。
加えて、健康経営優良法人の顕彰・認定制度は10年を重ね、参加企業が小・中規模と大規模を合わせて20,000社を超える規模となっているほか、施策の一環として食生活改善に取り組んでいる法人が一定数いることから、創設の検討につながっています。
農水省は、従業員に対して健康的な食事の提供など、生活改善、食生活の改善に向けて取り組んでいる企業を顕彰することで、企業のモチベーションや活力の向上につなげたいほか、他企業との連携や発信という形で、食育の可能性を広げたい狙いがあります。
食育実践優良法人(仮称)の具体的検討内容や申請案とは
基本的には、健康経営の食生活改善施策の一環として進められることが多い食育ですが、その具体的内容をしっかりと発信できている企業はあまり多くありません。そこで食育実践優良法人(仮称)では、具体的に食生活改善につながる取り組み例にフォーカスして認定を行う仕組みを検討しているようです。具体的には、
- 健康的な朝食の提供
- バランスのとれた社食の提供
- 定期的な食育研修の実施
- 栄養指導の実施
- 健康管理アプリの提供
- 食育情報の発信
などが挙げられています。
顕彰制度の応募については、健康経営度調査が行われる時期に合わせて、農林水産省のホームページに申請サイトを設置する予定です。従業員の食生活改善の具体的な取り組みなどを含む申請事項を記入することで、同サイトから応募が可能になります。また、健康経営優良法人の認定に関する健康経営度調査票(大規模法人部門)および認定申請書(中小規模法人部門)にもリンクを掲載し、認定申請の手続きを簡略化することを目指しています。
健康経営における「食事」「食育」の位置づけとその意味
そもそも健康経営において「食生活改善」は重視されてきました。健康経営優良法人の認定要件にも食生活の改善に向けた取り組みが評価項目として含まれており、食育が企業戦略の中核を担う場面が増えてきているのも事実です。食事は健康の基本であり、従業員が高いパフォーマンスを発揮するためには、栄養バランスの取れた食生活が不可欠です。そのため、多くの取り組み企業は社内食堂のメニュー充実や健康的な飲料の提供、栄養に関するセミナーの実施など、「食」を通じた従業員支援に、すでに力を入れており、「食」を通じた健康管理が、従業員と企業の双方にとって持続可能な成長を支える要素となっています。
また、食育を実践することで、従業員の健康増進や生産性向上を助けることにつながります。社員の健康意識が向上することで、欠勤や離職率の低下、労働パフォーマンスの向上も期待できるでしょう。他にも、社内での健康的な食生活の推進や啓発は、従業員の満足度を高め、ワークエンゲージメントや企業イメージの向上にもつながります。さらに、食育の取り組みが認定制度で評価されることで、企業の社会的責任(CSR)や持続可能な発展に対する貢献が明確化し、対外的な評価を得ることが期待できます。
どう取り組む「健康経営」と「食育」
本取り組みの発表によって、今後ますます健康経営における食生活改善項目への注目度は増すと考えられています。現在でも、健康経営銘柄企業の多くが従業員の健康戦略として挙げているのが、「食」に関連した取り組みです。例えば味の素株式会社では、健康的なメニューを提供する社員食堂の設置や、従業員が栄養バランスの取れた食事を選べる仕組みづくりが進められています。
また、ある企業では、ヘルスケア専門家と連携して社内で「食育セミナー」を定期開催し、従業員の栄養意識を高めています。ほかにも、朝食を無料提供する取り組みを行った企業もあり、これにより社員の生産性と健康指標の向上を確認できた事例もあります。こうした取り組みは健康経営優良法人としての認定にもつながり、企業価値の向上にも寄与しています。
健康経営から広がる食育の可能性
農林水産省および経済産業省は、健康経営および食育を通じて持続可能かつ健康的な社会の実現に向けたビジョンを提示しています。日常的な「食事」という行為を通じてSDGs(持続可能な開発目標)に貢献することが、現代企業の重要な課題として認識されています。このため、食育と健康経営を同時に推進することがますます重要な要素となっています。さらに、フードロス削減や地産地消の食材活用などの取り組みは、環境負荷の軽減および地域経済の活性化に直結すると考えられます。
健康経営の一環として健康的な食事の選択肢を提供することは、個人の健康改善を促進し、ひいては社会全体の医療費削減にも寄与するものと期待されています。
<参考文献>
- ACTION!健康経営・健康経営推進検討会
https://kenko-keiei.jp/4833/
健康経営/産業保健コラムシリーズ
企業に義務付けられている産業保健体制の構築から 健康経営の考え方・推進法まで幅広い話題をご提供。 これを読むだけで今求められている施策・対応への理解が進みます。






