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健康診断の受診勧奨でそのまま使える文例付き!対象者の選び方と実践ステップ

公開日: 2026.8.3
更新日: 2026.8.3
健康診断の受診勧奨でそのまま使える文例付き!対象者の選び方と実践ステップ

企業の産業保健担当者や保健師の皆様は、日々の業務のなかで「健康診断で異常の所見があったにもかかわらず、二次検査を受診してくれない」「従業員に受診を促す業務に多くの工数がかかっている」といった課題に直面していないでしょうか。

従業員の健康を守ることは、企業の持続的な成長において不可欠な要素です。しかし、自覚症状のない従業員に対して受診の重要性を理解させ、行動変容を促すことは容易ではありません。

本記事では、受診勧奨の基本的な定義から、具体的な実施プロセス、対象者の選定基準、そして対象者に響くコミュニケーションのポイントまでを網羅的に解説します。受診勧奨の具体例も交えて紹介しますので、自社の産業保健活動をより効果的に推進するための参考にしてください。

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受診勧奨とは何か?

受診勧奨とは、健康診断の結果に基づき、医療機関での受診が必要と判断された対象者に対して、早期の受診を促す一連の活動を指します。ここでは、受診勧奨の定義と目的、そしてその重要性について解説します。

受診勧奨の定義と目的

受診勧奨は、従業員に対して健康診断や精密検査(二次検査)を受けるよう促す産業保健上の重要な活動です。主な目的は、個人の健康状態を正確に把握し、病気の早期発見や予防を図ることにあります。

労働安全衛生法により、企業は従業員に対して定期健康診断を実施する義務があります。しかし、健診を提供するだけで終わりではありません。健診結果で何らかの異常の所見が認められた従業員に対し、適切な医療機関への受診を促し、必要な治療や保健指導に繋げることが求められます。これにより、生活習慣病の重症化を防ぐとともに、従業員の健康維持を徹底することが可能になります。

特に、血圧や血糖値などに高いリスクを抱える人々に対して、受診勧奨は命に関わる重大な疾患を防ぐための重要な役割を果たします。企業は、担当者への研修を通じて受診勧奨のスキルを向上させ、組織全体で健康管理の意識を高める理由を明確に説明する必要があります。

受診勧奨の重要性

受診勧奨は、従業員の健康リスクを軽減するために不可欠な取り組みです。その重要性は、主に以下の3点に集約されます。

第一に、病気の早期発見と早期治療です。多くの生活習慣病は初期段階では自覚症状が乏しく、本人が自分自身の健康状態の悪化に気づきにくいという特徴があります。産業医や保健師からの適切な受診勧奨によって、本人の意識を変え、重症化する前に医療機関へ繋ぐことが大切です。

第二に、医療費の削減効果です。病気が重症化してから治療を開始すると、長期の入院や高額な治療費が必要となります。受診勧奨によって早期に治療介入できれば、従業員個人の金銭的負担を軽減するだけでなく、企業が負担する健康保険組合の医療費削減にも大きく寄与します。

第三に、社会全体の健康促進です。労働安全衛生法において、事業者は労働者の健康管理に努めることが義務付けられており、労働者側にも健康保持に努める努力義務があります。企業が積極的な支援を行うことで、従業員の健康リテラシーが向上し、結果として健康寿命の延伸という社会的な意義にも貢献します。従業員が医療機関への受診に抵抗を感じないよう、重要性を繰り返し伝えることが求められます。

受診勧奨の流れとプロセス

効果的な受診勧奨を実施するためには、計画的かつ体系的なプロセスを踏むことが不可欠です。ここでは、受診勧奨を成功に導くための具体的なステップと実施方法を解説します。

受診勧奨のステップ

受診勧奨のプロセスは、大きく分けて「目的の明確化」「対象者の選定」「重要性の伝達」という3つのステップで進行します。

まず、受診勧奨を行う目的を明確にします。例えば、「高血圧の放置による脳血管疾患を防ぐ」「糖尿病の重症化を予防する」など、どのような症状やリスクに対してアプローチするのかを定義することで、必要な保健指導や二次検査の内容を理解しやすくなります。

次に、対象者の選定を行います。健康診断の結果データを元に、受診勧奨判定値を超えている従業員を抽出します。年齢や既往歴、現在の健康状態に応じた適切なスクリーニングを行うことが重要です。

最後に、受診の重要性を伝えます。対象者に対して、なぜ再検査が必要なのか、どのようなリスクが潜んでいるのかを丁寧にアドバイスします。受診を推進するためには、社内ポータルのサイトマップからアクセスできる健康情報ページや、ダウンロード可能な啓発資料を準備するなど、従業員が自発的に行動を起こしやすい環境を整えることも一部の工夫として有効です。

受診勧奨の実施方法

具体的な実施方法として、個別面談、通知資料の活用、そしてフォローアップの3つが挙げられます。

最も効果的なのは、保健師や産業医による個別面談の活用です。対象者と直接対話を行い、現在の体調や生活習慣についてヒアリングすることで、信頼関係を築きながら受診を促すことができます。

面談の実施が難しい場合や、その前段階のアプローチとしては、書面やメールによる通知を行います。この際、単に「受診してください」と案内するだけでなく、受診の必要性や具体的な検査内容を解説する資料を添付し、視覚的な理解をサポートします。また、企業の方針として、二次検査にかかる費用の一部を給付(補助)する制度がある場合は、積極的に案内することをおすすめします。

最後に、医療機関への受診が認められたかどうかのフォローアップを行います。受診結果の報告を求め、必要に応じて就業上の措置(残業制限など)に向けた意見聴取を実施するなど、産業保健スタッフが継続的に伴走するガイドラインを定めておくことが重要です。

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【実践編】ナッジ理論とガイドラインに基づく受診勧奨の例文

受診勧奨をより効果的なものにするためには、医学的根拠に基づく説明と、心理的ハードルを下げるアプローチの組み合わせが有効です。ここでは、厚生労働省のガイドラインに基づく症状別の説明文例と、行動経済学の「ナッジ理論」を取り入れた案内文の例文をご紹介します。

1.健診結果を伝えるフィードバック文例(症状別)

厚生労働省の「健診結果とその他必要な情報の提供(フィードバック)文例集」では、各検査項目の数値に基づいた具体的な説明方法が示されています。

  • 血圧高値の例文(血圧140/90~160/100mmHg未満の場合)「今回の血圧値から高血圧が疑われます。この状態が続くと、望ましい血圧レベルの人と比べて、約3倍、脳卒中や心臓病にかかりやすいことがわかっています。生活習慣の改善に取り組み、1ヶ月から3ヶ月後にかかりつけの医療機関で再検査を受けてください。」
  • 脂質異常の例文(LDLコレステロール140~180mg/dL未満の場合)「脂質検査の結果、悪玉コレステロールが高いことがわかりました。100未満の人と比べて1.5倍~2倍心筋梗塞になりやすいことがわかっています。動物性の脂肪を控え、3~6ヶ月後にかかりつけの医療機関で再検査を受けてください。」
  • 血糖高値の例文(空腹時血糖126mg/dL以上、またはHbA1c6.5%以上の場合)「今回の健診結果は、あなたが糖尿病であることを示す値です。至急、かかりつけの医療機関ないしは糖尿病の治療が受けられる医療機関を受診し、治療を開始してください。」

2.ナッジ理論(EAST)を活用した行動を促す案内文の例文

「ナッジ(そっと後押しする)」理論を活用し、無意識の心理的バイアスを取り除くことで受診率を大きく改善できます。以下の例文は、通知文やメールに組み込んでご活用ください。

  • 社会的規範(Social)を用いた例文人は周囲の行動に影響を受けやすい性質があります。「通院中の方でも、約80%の方が特定健診を受診しています。」「過去3年間で、あなたと同じ年代・健康状態の方の受診者数が1.3倍に増加しました。」
  • 損失回避(Attractive)を用いた例文人は「得る喜び」よりも「失う痛み」を避ける傾向があります。「今年度、大腸がん検診を受診されないと、来年度はご自宅へ『大腸がん検査キット』をお送りすることができません。」
  • 選択の簡素化(Easy)とコミットメントを用いた例文受診するかどうかではなく、「いつ受けるか」に焦点を当て、自ら予定を書き込んでもらうことで行動(コミットメント)を促します。「まず、受診日を決めてください!以下の『私の受診日』欄に予定をご記入のうえ、予約をお願いいたします。」

参考文献:

健診結果とその他必要な情報の提供(フィードバック) 文例集 

受診率向上施策ハンドブック 明日から使えるナッジ理論

受診勧奨の基準と対象者

誰に対して、どのような基準で受診勧奨を行うのかを明確にすることは、業務の効率化と公平性の担保に繋がります。ここでは、対象となる健康診断の種類と、基準設定の背景について解説します。

受診勧奨の対象となる健康診断

受診勧奨の契機となる健康診断には、主に「定期健康診断」「特定健康診査(特定健診)」「がん検診」などがあります。

労働安全衛生法で義務付けられている定期健康診断は、常時使用する労働者が対象であり、その結果をもとに有所見者への対応を行います。一方、特定健康診査は40歳以上の従業員を対象としており、メタボリックシンドロームの予防と早期発見に特化しています。また、特定の有害業務に従事する労働者に対する特殊健康診断なども含まれます。

年齢や職業に応じた健康診断の重要性を理解し、対象者に対して具体的に受診のメリットを提示することが求められます。例えば、「40歳を超えると脂質異常症のリスクが高まるため、定期的な検査で判断基準となる数値をモニタリングすることが医療費の削減にも繋がる」といった形で、受診が必要な理由を明確に伝えます。適切な診断結果を取得し、再検査が必要な対象者を漏れなく抽出するシステムを構築しておくことが、業務効率化の鍵となります。

受診勧奨の基準設定

受診勧奨を行うための基準(受診勧奨判定値)は、医学的な根拠に基づき、企業ごとに適切に設定する必要があります。

この基準を設定する背景には、異常値を放置することによる重大疾患の発症リスクを防ぐという明確な目的があります。国や厚生労働省が定める指針やガイドライン(例:標準的な健診・保健指導プログラム)を参考とし、血圧、血糖、脂質などの各項目において、「どの数値を超えたら即時受診が必要か(判定基準)」「どの範囲であれば保健指導による生活習慣の改善で経過観察とするか」を定めます。

参考文献:

健診結果とその他必要な情報の提供(フィードバック) 文例集 

地域や健康保険組合によって推奨される特定保健指導の基準に若干の違いがある場合もありますが、基本的には日本産業衛生学会などの専門機関が提示する数値をベースにします。これらの基準に基づく受診勧奨は、従業員に対して「なぜ自分が個別に呼ばれたのか」という客観的な説明を可能にし、受診の必要性を論理的に伝えるための強力な後ろ盾となります。

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受診勧奨が必要な理由

なぜ企業は、多大な労力をかけてまで従業員への受診勧奨を行わなければならないのでしょうか。それは、従業員個人の健康リスクを排除するだけでなく、企業全体の経営課題に直面するからです。

従業員の健康リスク

受診勧奨の重要な目的は、従業員の健康状態の悪化を防ぐことです。健康診断のデータは、本人も気づいていない病気のリスクを可視化します。

高血圧や脂質異常症などの生活習慣病は、放置すると脳卒中や心筋梗塞など、命に関わる重大な疾患を引き起こす危険性が高まります。労働安全衛生法においても、企業は労働者の健康障害を防止するための措置を講じることが義務付けられています。人事・労務担当者や産業医が連携し、健診結果に異常が見られた従業員に対して早期に受診を促すことで、病気の重症化を未然に防ぐことが可能です。

また、健康問題は休職リスクに直結します。従業員が長期休職を余儀なくされた場合、本人のキャリアに影響を与えるだけでなく、残された社員への業務負荷の増加など、職場全体にネガティブな連鎖をもたらします。健康リスクの早期発見と介入は、結果として従業員の心身の健康を保ち、安定した労働力の確保と生産性の向上に大きく寄与します。

企業の健康経営への影響

従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する「健康経営」の観点からも、受診勧奨は極めて重要なアクションです。

第一に、従業員の健康を大切にするという企業姿勢は、社内外における企業イメージの向上に直結します。求職者に対して「安心して長く働ける会社(よい企業)」という強力なアピールポイントとなり、優秀な人材の採用や、既存従業員の定着率(リテンション)向上に繋がります。

第二に、中長期的な医療費の削減です。軽度な異常の段階で医療機関への受診や生活習慣の改善を促すことで、将来的に発生しうる高額な医療費や、健康保険組合の負担増加を抑制することが期待できます。

受診勧奨は単なる法令遵守のための業務ではなく、事業の持続可能性を高め、企業の成長を支えるための重要な投資(事業戦略の一環)であると認識することが重要です。

受診勧奨の実施ポイント

受診勧奨を成功させ、対象者の行動変容(実際の受診)を引き出すためには、いくつか押さえておくべき実践的なポイントがあります。

効果的なコミュニケーション方法

受診勧奨において最も重要なのは、対象者の感情に寄り添った効果的なコミュニケーションです。

「数値が悪いから病院へ行ってください」と一方的に指示するだけでは、対象者は抵抗感を抱き、行動には移りません。相手の理解を促すためには、専門用語を避け、分かりやすい言葉で解説することが必要です。

具体的なアプローチとして、以下のような例が考えられます。

  • NG例:「血圧が受診勧奨判定値を超えています。法令に基づき、速やかに医療機関を受診してください。」
  • OK例:「今回の健診で血圧の数値が少し高めに出ているようです。自覚症状がない場合でも、将来的なリスクを下げるために、今のうちに一度お医者様に診ていただくと安心ですよ。早期発見が一番の対策になります。」

このように、不安を煽るのではなく、具体的な受診のメリット(安心感、早期治療による負担軽減など)を提示し、対象者の感情に寄り添う言葉を選ぶことが、受診率を向上させる有効な方法です。また、最近ではオンライン面談ツールや健康管理システムのメッセージ機能を活用し、データに基づいた適切な情報をタイミング良く提供することも効果的です。

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受診環境の整備

従業員が「受診しなければ」と頭では理解していても、環境が整っていなければ行動は先送りされてしまいます。受診のハードルを下げるためには、企業側のサポート体制と環境整備が不可欠です。

まず、受診しやすい医療機関の情報提供が挙げられます。会社の近くや通勤経路にある病院、土日も診察を行っているクリニックなど、一般的な医療機関のリストをイントラネットのトップページ等にまとめておくと親切です。

また、精密検査にかかる費用の補助制度や、受診のために就業時間中の外出を認める(あるいは特別休暇を付与する)などの制度面での改善も重要です。費用や時間に対する負担を軽減することで、「早めに受診しよう」という意識を後押しできます。プライバシーに配慮した相談窓口の設置など、心理的・物理的な壁を取り除く環境管理が求められます。

フォローアップの重要性

受診勧奨は、対象者に通知を出して終わりではありません。その後のフォローアップを確実に行うことが、健康管理のプロセスにおいて極めて重要です。

受診後には、必ず結果(医師からの指示内容)を把握するための確認を行います。診断結果の提出を求め、その内容に基づいて産業医と連携し、就業区分の判定や必要な措置(残業制限、配置転換など)を実施します。もし対象者が受診を放置している場合は、定期的にメールや面談で状況を確認し、継続的なフォローを行います。

また、一度受診して終わりではなく、次回(翌年)の受診タイミングを提案したり、日常生活で取り組める健康維持のための記事・コラムを配信したりするなど、従業員が自身の健康を守るための行動を継続できるよう、負担のない範囲でサポートし続けることが産業保健スタッフの重要な役割です。

受診勧奨の業務負担を軽減するシステム活用

効果的な受診勧奨を実施し、対象者の行動変容を促すためには、迅速な対象者の抽出と継続的なフォローアップが欠かせません。しかし、紙やExcelでのデータ管理では、対象者の絞り込みや個別連絡に莫大な手間と時間がかかってしまいます。

エムスリーヘルスデザインが提供する健康管理システム「ハピネスパートナーズ」では、従業員の健康データをクラウド上で一元管理できます。未受診者や有所見者を簡単に抽出でき、システム上から一括で受診勧奨のリマインド送信が可能なため、煩雑な健診業務の工数を最大87%削減することが見込めます。

また、「受診勧奨のノウハウがない」「対応する産業保健スタッフが不足している」という企業様には、専門職がオンラインでサポートを行う「社外健康管理室」の活用も有効です。従業員の健康リスクを早期に防ぎ、人事担当者の負担を軽減するために、システム導入やアウトソーシングの活用をぜひご検討ください。

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まとめ

本記事では、健康診断における受診勧奨の定義から、具体的なプロセスの進め方、そして対象者の行動を促すためのコミュニケーションのポイントまでを解説しました。

受診勧奨は、単に数値を指摘して病院へ行かせるための業務ではありません。従業員一人ひとりの健康リスクに早期に介入し、重症化を防ぐことで、個人のQOL(生活の質)の向上と、企業の持続的な成長(健康経営)を両立させるための極めて重要な産業保健活動です。

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