2024年に法令改正「リスクアセスメント」に関するポイントを解説

職場にある危険性や有害性を特定し、そのリスクの除去・低減措置を行う一連の手順を指し、職場の安全性や労災防止策について議論する際に用いられる「リスクアセスメント」。今回はそんなリスクアセスメントの必要性や実施体制、リスクアセスメントに関する労働安全衛生規則の改正ポイントについて解説します。
リスクアセスメントとは?重要性や実施のステップを紹介
リスクアセスメントとは、企業職場にある危険性や有害性を特定し、そのリスクの除去・低減措置を行うことを指す言葉で「リスクアセスメントを実行する」「リスクアセスメントに基づいた対策」「リスクアセスメントが重要である」といった使い方が一般的となっています。
労働安全衛生法では、リスクアセスメント実施義務の対象となる「社内で扱う化学物質」や、実施すべきタイミングが定められています。リスクアセスメントの導入を成功させるためには、社内のリスクアセスメント実施体制を十分に整えることが重要です。まずは、経営トップや事業所長、工場長がリスクアセスメントの実施を表明した上で、安全管理者や製造部門の責任者など、現場の従業員を中心に推進メンバーを決定します。さらにすべての従業員にヒアリングを行うなどして、全社の協力のもとで行うのが必須です。また、正確にリスクを見積もり効果的な対策を決めるためには、仕事中に感じた危険性など一般社員の声を拾うことも不可欠となります。
リスクアセスメントは、化学物質の危険性や有害性を認識し、事業者において労働者への危険または健康障害を生じるおそれの程度を見積もりつつリスクの低減対策を検討する一連のプロセスであり、以下のステップで実施すべきものとされています。
①化学物質などによる危険性または有害性の特定
リスクアセスメントの対象業務を洗い出し、安全データシート(SDS)に記載されているGHS分類などに即して危険性または有害性を特定します。
②リスクの見積もり
危険や健康障害の発生可能性と重篤度、または有害性の程度等を考慮し、リスクを見積もります。
③リスク低減措置の内容の検討
見積もったリスクに応じて、労働者の危険または健康障害を防止するための措置の内容を検討します。
④リスク低減措置の実施
策定したリスク低減措置を速やかに実施するための取り組みを進めます。
⑤リスクアセスメント結果の労働者への周知
対象業務の内容、特定した危険性・有害性およびそのリスク、ならびに実施するリスク低減措置の内容を労働者に対して周知します。
2024年4月施行の「化学物質管理者選任義務化」の法令改正について
令和4年5月に労働安全衛生規則が改正され、新たな化学物質規制の体系が示されることとなりました。その新体系では「化学物質管理者の選任」「化学物質管理者によるリスクアセスメントの実施」「その結果に基づく措置」が企業に対して義務付けられることとなりました。
「化学物質管理者」とは、事業場における化学物質の管理に係る技術的事項を管理する人物を指します。化学物質管理者は、以前から労働安全衛生法57条の3第1項に規定されるリスクアセスメントを行うに当たって適用される「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」の中に定義されていましたが、今回の改正により、新たな化学物質規制の新体系の下で「事業場の化学物質管理の技術的事項の管理を行う者」として位置付けられることとなったのです。
現在まで化学物質数は増加の一途を辿っていますが、労働災害防止を目的とした措置が規定されている物質の数は限られている一方で、化学物質による休業4日以上の労働災害の多くは規制対象外だった物質を原因としたものとなっていました。これは、事業者が規定物質以外の対策をおろそかにしがちであることが考えられ、こうした現状を受けて職場の化学物質管理の対象となる物質の範囲を大幅に拡大し、より合理的にリスクアセスメントを実施するために政省令改正が行われました。そうした制度改革の重要な柱として、リスクアセスメント対象物を取り扱う全ての事業場ではその規模にかかわらず化学物質管理者を選任することが義務付けられたのです。

化学物質管理者の職務や選任の仕方は?
化学物質管理者とは「表示および通知に関する事項」「リスクアセスメントの実施および記録の保存」「ばく露低減対策」「労働災害発生時の対応」「労働者の教育」などに携わる者とされています。その選任は事業場の規模にかかわらず、リスクアセスメント対象物を扱う全ての事業場で実施されなければなりませんが、一般消費者の生活の用に提供される製品のみを扱う事業場は選任の対象外とされています。
また事業者は、選任した化学物質管理者の氏名を事業場の見やすい箇所に掲示して、関係労働者に周知する必要があります。さらに化学物質管理者本人に対して「化学物質管理者の役割・職務」の職務をなしうる権限の付与も必要になります。
なお、化学物質管理者を複数人選任し、業務を分担することもできます。その場合には業務に抜け落ちが発生しないよう、業務を分担する化学物質管理者や実務を担う者との間で十分な連携を図る必要があるとされています。
化学物質管理者の選任要件は「化学物質の管理に係る技術的事項を担当するために必要な能力を有すると認められる者」とされています。国家資格ではないので、原則として事業者の裁量よって選任が一任されていますが、リスクアセスメント対象物を製造する事業場においては選任すべき事由が発生した日から14日以内に厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習を修了した者のうちから選任しなければならないとされています。
化学物質管理者の役割は多岐にわたるうえ、専門的な知識も必要です。個々の化学物質管理者が自分だけですべての職務を行うのは容易ではありません。自社の化学物質管理者の負荷を軽減するために、リスク低減対策について労働衛生コンサルタントに相談するなど、外部の専門家を活用することも視野に入れておく必要があるでしょう。
<参考URL>
- 職場の化学物質管理が変わります|労働安全衛生総合研究所
https://cheminfo.johas.go.jp/
- 職場で使っている「化学製品」管理の準備すすめてますか?|厚生労働省
https://chemiguide.mhlw.go.jp/
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