健康経営の課題抽出にストレスチェック!57問と80問はどう違う?

2015年の労働安全衛生法改正に伴いスタートした、ストレスチェック制度。質問項目に決まったものはなく、独自の質問が入ったものなどさまざまなものがありますが、最も一般的な調査票としては57問と80問の2種類が存在します。設問数の異なるそれぞれにはどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。今回は、一般的なストレスチェック調査票である57問と80問について、その違いや、項目を独自で追加する際の注意点などを解説します。
ストレスチェック票に必須の3項目とは?
ストレスチェック票には、「仕事のストレス原因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域の質問事項を含まなければならないことが労働安全衛生規則によって規定されており、さらに選択する項目は科学的な根拠を基にすることが求められています。
「仕事のストレス原因」とは、仕事の作業環境や労働時間、仕事の量や人間関係など、ストレスの原因に関する質問事項になります。「心身のストレス反応」は、自分の現在の感情や、体に出ている症状など、ストレスの反応から見られる今の状態を調査するための質問項目で構成します。そして「周囲のサポート」は、自分の周りにサポートしてくれる人の存在や頼れる人の存在があるかといった項目が含まれており、今後のストレス緩和につながる可能性を確認するための質問事項です。上記3領域の質問項目を点数化し、高ストレス者を判定します。
57項目と80項目の調査票は、いずれも上述の3つの領域をカバーする内容となっており、どちらを選択しても基本的なストレスチェックとしては問題ないでしょう。なお、調査票の項目は各企業の判断で選ぶこともできますが、「性格検査」「希死念慮」「うつ病検査」といった項目を調査票に取り入れる場合は、背景事情を含めた評価や事後対応が必要不可欠であるため、フォローアップ体制が不十分な状態で取り入れるのは不適当であるとされています。ストレスチェックの主目的はあくまで課題の発見であり、「精神疾患を持つ労働者の特定ではない」という点を念頭に置いておく必要があるでしょう。
厚生労働省推奨の「ストレス簡易調査票」57項目版の特徴

厚生労働省からは、57項目で構成された「ストレス簡易調査票」の使用が推奨されており、多くの企業で活用されています。ストレスチェックに必要な3領域をすべて網羅しており、従業員のストレス状況を概観的に把握するのに適しています。5分程度で手早く調査できることもメリットです。3つの領域を評価することで企業全体のストレス状況を把握し、大まかな改善策を策定することができるようになるでしょう。
一方でこの57項目の「ストレス簡易調査票」は個人のストレス状態を調査する目的で作られているため、具体的な要因や特定のストレス反応を把握するなど、職場の環境改善に活用するには不十分であることは否めません。具体的な項目数については各企業が自由に選定できるので、職場の課題を明確にした上で、改善要素を分析したいなら、基本となる57項目をベースにして自社の環境に合わせて項目数を増やすことを検討する必要があります。こうした背景もあり、近年では80項目の「新職業性ストレス簡易調査票」を活用し、企業の目的に応じて項目数を増やす対応が主流になりつつあります。
「新職業性ストレス簡易調査票」80項目版は57項目版とどう違う?

https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/pdf/stress-check_80_j.pdf,(参照:2024年3月26日).
80項目で構成される「新職業性ストレス簡易調査票」と57項目版と相違点は、個人のストレス反応だけでなく、「働きがい(ワークエンゲージメント)」「ハラスメント」「上司のマネジメント」「人事評価」を測定できる点にあります。特にハラスメントに関しては、2020年6月(中小企業は2022年4月)にいわゆる「パワハラ防止法」が施行されたことで企業側の対策が強く求められるようになっており、職場環境の改善に重点を置く企業が増えていることもあり、80項目版が主流となりつつあります。
80項目版は多くの項目への回答を取得できるため、集団分析の精度が向上するというメリットもあります。分析から適切な職場改善の施策を行うことができればストレスの低減につながり、結果的にワーク・エンゲージメント(仕事への熱意、没頭、活力などの心理状態)を高め、企業の生産性向上も期待できます。
一方で、57項目よりも詳細な項目が増える80項目版では、回答に10〜15分程度が必要となり、57項目版よりも従業員の負担が増加するというデメリットもあります(57項目は5〜10分程度)。さらに80項目版から得られる情報は非常に詳細であるため、結果を適切に解析し活用するには、専門の知識も必要となります。自社での解析が難しい場合は、外部のストレスチェックサービスの利用を考えることも一つの選択肢として考慮しておいた方がよいでしょう。
57項目版と80項目版。いずれの調査票を選択するにせよ、その背後にあるのは問題や課題の早期発見と、それを解決するための職場環境の向上という目的があることを忘れてはなりません。集団分析の結果から職場の課題を正確に識別し、さらなる環境の改善に取り組めるよう、意識してストレスチェックを実施してください。
<参考URL>
- 職業性ストレス簡易調査票(57 項目)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/dl/stress-check_j.pdf - 職業性ストレス簡易調査票(80 項目版)|こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou/#section-3 - 厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム|厚生労働省
https://stresscheck.mhlw.go.jp/material.html
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