従業員の見えない不調を把握して改善!プレゼンティーズムの測り方

「体調はよくないものの、休むほどではない……」と、多少の無理をしてでも働いてしまうという人は少なくないかもしれません。企業にとっては、欠勤や早退による従業員の不調は把握しやすいものの、出社して働きつつも実は不調を抱えているという社員の存在の把握は難しいでしょう。しかし、何らかの不調を抱えた従業員の業務は、健康時に比べて生産性が低下している状態であることが多いと考えられています。この状態は「プレゼンティーズム」といわれ、健康経営に向けた重要な指標と一つとされています。ここではそんなプレゼンティーズムについて、その測り方、改善ポイントについてお伝えしていきます。
プレゼンティーズムにおける企業の損失とは? またその要因は?

「プレゼンティーズム」は、「アブセンティーズム」とともに語られることが多いキーワードです。「プレゼンティーズム」が、出勤していても体調不良による労働意欲や集中力の欠如から、本来のパフォーマンスが発揮できない状態を指す一方、「アブセンティーズム」は、欠勤や休職、早退などによって仕事が行えない状態を指します。働けないことで、その生産性がゼロとなアブセンティーズムに比べ、プレゼンティーズムは目に見えないパフォーマンスの低下であるため疎かにされがちですが、不調が長引くことによる損失の累積を考慮すれば、企業に与える影響は小さくありません。企業の健康関連総コストにおいて、プレゼンティーズムによる損失コストがアブセンティーズムの10倍以上を占めているという発表資料もあるほどです。
こうしたプレゼンティーズムの原因には、偏頭痛や肩こり、眼精疲労、月経不調、更年期障害などといった様々な症状がありますが、国内の罹患者が相当数に上る花粉症や不眠・睡眠障害なども大きな要因の一つと言われるようになっています。
プレゼンティーズムの要因には、肩こり、腰痛、頭痛といったフィジカルの不調、ストレスやうつ症状といったメンタルの不調、動悸、息切れ、食欲不振、便秘や下痢などストレスによる内科疾患などが挙げられ、メンタルの不調・睡眠・頭や首の痛みなどに起因するパフォーマンスの低下が特に大きな損失につながるとされています。
見えにくい不調の状況を可視化! プレゼンティーズムの測り方
感覚的な部分も多いと考えられるプレゼンティーズムですが、現在までにその損失割合を計算する指標がいくつか研究されています。ここでは、代表的な5つの測り方を紹介しましょう。
WHO-HPQ
WHOで世界的に使用されている「WHO 健康と労働パフォーマンスに関する質問紙」を用いて評価を行います。「勤務時間はどれくらいか」「身体的・精神的な理由で休んだことがあったか」「仕事の出来はどれくらいだったか」など、全12問からなる質問用紙で評価を行います。世界的に広く活用されており、海外のエビデンスも豊富な指標です。無償での利用が可能ですが、RIOMHへの入会が推奨されています。
SPQ(東大1項目版)
東京大学ワーキングで開発され、研究目的や商用目的で無料利用できます。病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事をパーセンテージで評価します。
WLQ(Work Limitations Questionnaire)
WLQは健康問題による仕事上の制約や、生産性の低下率を測定できる指標です。「時間管理」「身体活動」「集中力」「対人関係」「仕事の結果」の4つの尺度から全25問で構成されています。利用にはSOMPOヘルスサポートへの申し込みが必要で、有料である点にも注意が必要です。
WFun(Work Functioning Impairment Scale)
産業医科大学で開発された、健康問題による労働障害を測定する調査票。7つの設問からなり、合計得点(7~35 点)で評価を行います。利用には、SOMPOヘルスサポートへの申し込みが必要です。
QQmethod
健康問題を含む尺度のため、プレゼンティーズムの原因を特定しやすいのが特徴です。原因を可視化することで施策の検討がスムーズに行うことができます。持病などの健康問題や、仕事に支障をきたすような体の症状があるかを回答した後、症状がある場合は「仕事に一番影響を及ぼす健康問題」「過去3か月で何日間症状があったか」「症状があるときの仕事量」「症状があるときの仕事の質」の質問に10段階で答えることで評価を行います。無料で利用可能です。
測定結果の意味が異なるため、比較対象とはならない点に注意が必要です。いずれの測り方も確かな研究にもとづいていますが、生産性向上や従業員パフォーマンスの把握、健康経営推進の観点からは、SPQ(東大1項目版)が最も適しているとされています。
プレゼンティーズムの測定結果から、生産性の損失額をコスト換算する方法

プレゼンティーズムの測定結果を出すことができれば、その結果から企業の労働生産性損失の具体的な金額を算出することもできます。コスト換算する方法は以下の通りです。
●プレゼンティーズム損失割合
=100%-プレゼンティーズム(※各指標で計算した損失割合)%
●労働生産性損失額(円)
=プレゼンティーズム損失割合(%)×平均賃金(円)×従業員数
測定方法によって結果は異なりますが、SPQ(東大1項目版)では日本人の平均は84.9%(プレゼンティーズム損失割合は15.1%)とされているので、「15.1%×平均賃金×従業員数」の生産性損失が生じていることになります。
自社の現状を測るためにプレゼンティーズムを数値化して把握することは、健康経営に取り組むためにも重要ですが、損失額を具体的な金額として理解できれば、自社の健康投資が生産性向上の観点でどの程度の効果があったのか、コストパフォーマンスを評価することも可能です。積極的な健康経営を進めるために、ぜひ活用を検討してみてください。
<参考URL>
- 企業の「健康経営」ガイドブック|経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkokeiei-guidebook2804.pdf
- 健康経営 オフィス レポート|経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
- 逆翻訳による妥当性検証を経た WHO-HPQ(世界保健機関 健康と労働パフォーマンスに関する質問紙)日本語版の完成 | 国立国際医療研究センター
https://ccs.ncgm.go.jp/news/2013/outcome_CES_131129.pdf
- SPQの特徴|東京大学未来ビジョン研究センター
https://spq.ifi.u-tokyo.ac.jp/index.php/spq/
- プレゼンティーイズムサーベイ「LLax WLQ-J」 | SOMPOヘルスサポート
https://www.sompo-hs.co.jp/service/llax_wlq-j/
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