ヘルスリテラシーとは? なぜ必要かや高める方法を解説

「ヘルスリテラシーとは?」
「ヘルスリテラシーはなぜ必要なの?」
従業員の健康増進に取り組むにあたって、上記のような疑問をもつ人事労務担当者の方もいるでしょう。
ヘルスリテラシーとは、健康情報を正しく入手して理解し、活用する能力のことです。従業員のヘルスリテラシーが低いと、健康課題の悪化や生産性の低下につながるリスクがあるため、企業は対策を講じる必要があります。
本記事では、ヘルスリテラシーの必要性や高める方法を解説します。
ヘルスリテラシーとは
ヘルスリテラシーとは健康に関する正しい情報を入手・理解し、健康管理に活かす能力のことです。厚生労働省やWHOも重要な健康概念として取り上げています。
ヘルスリテラシーは以下の4つの能力で構成されます。
| 能力 | 内容 |
| 入手 | さまざまな情報源の中から信頼できる情報を探す能力 |
| 理解 | 入手した情報を正しく理解する能力 |
| 評価 | 入手した情報が信頼できるかを判断する能力 |
| 活用 | 入手した情報を日常生活で適切に活用する能力 |
参考:「ヘルスリテラシー」(一般社団法人 日本地域看護学会)
ヘルスリテラシーが高いと正しい健康情報を見つけられ、自身が抱えている健康課題の解決に活かせます。
たとえば、企業の健康診断で「高血圧の傾向がある」と指摘された場合、ヘルスリテラシーの高い人は以下のような流れで行動します。
- 高血圧が体に及ぼす悪影響や解決策に関する信頼できる情報を探す(入手)
- 入手した高血圧に関する情報を正しく理解する(理解)
- 自分に適した対処法であるかを判断する(評価)
- 入手した情報をもとに食事や運動習慣を変えて高血圧を改善する(活用)
ヘルスリテラシーは、健康的な生活を送るうえで欠かせない重要な能力です。
ヘルスリテラシーはなぜ必要?

企業にとって従業員のヘルスリテラシーは、健康経営を推進し、企業全体の生産性を高めるために必要です。従業員一人ひとりが自身の健康を管理する能力をもつことで、健康問題による生産性低下のリスクを軽減できます。
メンタルヘルス不調や過重労働などにより心身に負担がかかっている状態で業務を続けていると、従業員は業務に集中して取り組めなくなり、生産性が低下します。体調を悪化させて、休職や退職につながる可能性もあるでしょう。
健康問題の予兆は健康診断やストレスチェックで早期に発見できますが、医療機関を受診すべきかどうかの判断ができない社員も少なくありません。
現代社会ではインターネットやSNSを通じて、誤った情報などが溢れかえっており、根拠の薄い健康情報を信じて健康に悪影響を及ぼすケースもあるでしょう。間違った情報に惑わされず、適切なケアを行うにはヘルスリテラシーを高めることが重要です。
そのため、企業は積極的に情報を提供し、教育機会を設ける必要があります。
従業員のヘルスリテラシーが低いとどうなる?
従業員のヘルスリテラシーが低いと、企業は以下のようなリスクに直面する可能性があります。
- 従業員の健康状態が悪いまま業務を続けることで、組織全体の生産性が低下する
- 病気による欠勤や休職が増加し業務に支障が出る
- 従業員の休職に伴う人事の業務が増える
健康状態が悪いまま業務を続けることで従業員のパフォーマンスに悪影響を与え、組織全体の生産性が低下します。また、病状が悪化すると、治療のために欠勤や休職が増え、業務に支障をきたす可能性もあります。
さらに、従業員が休職することで、休職手続きやフォロー面談、復職支援など人事の作業が増えるリスクもあるでしょう。
ヘルスリテラシーの低さは、従業員の健康状態を悪化させるだけでなく、企業の持続的な成長を妨げる要因にもなるため、対策を講じる必要があります。
ヘルスリテラシーが高い人の行動例

ヘルスリテラシーが高い人の行動例として、以下が挙げられます。
- 信頼性のある情報にもとづいて行動している
- 体調の小さな変化を無視せずすぐに相談する
- 自発的に健康改善に取り組んでいる
それぞれの具体例からヘルスリテラシーの高い人の特徴を解説します。
信頼性のある情報にもとづいて行動している
ヘルスリテラシーが高い人は健康に関する情報を鵜呑みにせず、その情報が信頼できるものか、客観的な根拠があるのかを確認してから行動します。
たとえば、健康上の悩みがある場合にインターネットで見つけた健康法や、友人から聞いた健康食品の話をすぐに試すことはしません。医師や薬剤師などの専門家からのアドバイス、公的機関が発信する情報なども参考にして自分に必要であるか判断します。
そのため、ヘルスリテラシーが高い人は誤った情報に惑わされて健康を害したり、無駄な出費をしたりするリスクを避けられます。
体調の小さな変化を無視せずすぐに相談する
ヘルスリテラシーが高い人は自分の体調に少しでも異変を感じたら、変化を無視せずに医師や専門の窓口に相談します。「このくらいなら大丈夫だろう」と自己判断で放置しません。
たとえば、軽い頭痛が長引く、普段と違う体の痛みがあるなど小さな変化に対しても疑問をもち、インターネットで検索するだけでなく、必要に応じて医療機関を受診します。
すぐに相談することで適切な診断や治療が受けられ、隠れた病を早期発見できたり病気の重症化を防げたりします。
自発的に健康改善に取り組んでいる
自発的に健康改善に取り組んでいるのもヘルスリテラシーが高い人の特徴です。ヘルスリテラシーが高い人は、健康は自分自身で守るものであると意識しています。
たとえば、食生活を見直してバランスのよい食事を心がける、十分な睡眠を確保するなど、日々の生活の中で積極的に健康を維持させる努力をしています。
また、健康診断の結果を把握し、数値が悪ければ自ら改善策を立てて実践することもあるでしょう。
ヘルスリテラシーの評価方法
ヘルスリテラシーは、HLS-14(14-item health literacy scale)を使い、「機能的・伝達的・批判的」の3つの観点から測定できます。この評価方法では、健康情報の理解・活用・判断に関する個人の能力を可視化でき、従業員の傾向や組織としての課題を捉えるうえで有効です。
東京慈恵会医科大学の須賀教授らが開発したHLS-14では、日本人成人のヘルスリテラシーは以下の3段階に分けて評価します。
| 種類 | 内容 |
| 機能的ヘルスリテラシー | 基本的な読み書きの能力、健康情報に関する理解力 |
| 伝達的ヘルスリテラシー | 健康情報を自分で探して、他人に伝えたり自分で活用したりする能力 |
| 批判的ヘルスリテラシー | 入手した情報を批判的に分析し、自身の健康行動に活用する能力 |
参考:「医療者と患者のコミュニケーション:ヘルスリテラシーを手がかりにして」(厚生労働省)
評価対象者は以下の14個の項目に対し、あてはまる程度で1〜5点の点数をつけます。

合計14~70点で3段階のヘルスリテラシーを評価します。ただし、主観的な自己評価にもとづく評価であるため、「何点以上であればヘルスリテラシーが十分にある」などが決まるものではありません。
この評価の目的は個人の能力に優劣をつけることではなく、組織全体の傾向を把握することです。たとえば、「情報を探す力は比較的高いが、その情報を批判的に吟味する力が弱いようだ」といった課題が見えれば「信頼できる情報源の見分け方セミナー」を開催するなど、次に行うべき施策が明確になります。
従業員のヘルスリテラシーの測定に活用する場合は、主観的な評価であることを踏まえてヘルスリテラシーを高める取り組みを検討しましょう。
従業員のヘルスリテラシーを高める方法

従業員のヘルスリテラシーを高める方法として、以下が挙げられます。
- 健康に関する情報提供の場を設ける
- 健康行動を促す仕組みを作る
それぞれの方法について詳しく解説します。
健康に関する情報提供の場を設ける
従業員のヘルスリテラシーを高めるには、健康に関する情報を入手して理解できる場を企業で設けることが重要です。自ら情報を探し出す意識がなかったり、正しい情報の探し方がわからなかったりする従業員もいるからです。
具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
- 専門家監修の記事、公的機関の情報を社内のポータルサイトで掲載する
- 管理栄養士や産業医などの専門家によるセミナーを開催する
- 社内報で健康に関する情報を取り上げる
従業員が健康情報に触れる機会を増やすことで、ヘルスリテラシーへの関心を高められます。
健康行動を促す仕組みを作る
知識を提供するだけでなく、従業員が実際に健康的な行動をしやすくなる仕組みを作ることも重要です。ヘルスリテラシーにおいては、正しい情報を活用する能力も必要であるからです。
たとえば、以下のような取り組みを検討するとよいでしょう。
- ウォーキング大会や健康レシピコンテストなどのイベントを開催する
- 社内食堂や宅配弁当に健康的なメニューを取り入れる
- ジムの施設利用費を補助する
- 階段の利用を促すポスターを作成する
- 階段に消費カロリーを記載する
- 専門家への相談窓口を設置する
健康に関するイベントを開催して、景品やインセンティブを用意すると、従業員が楽しみながら健康行動を習慣化できます。
オフィスに階段がある場合は階段の利用を促すポスターを社内に掲示する、階段に消費カロリーを記載するなどして費用をかけずに運動を促せます。
また、気軽に運動できる環境や健康的な食事を選べる機会を提供することも重要です。福利厚生制度を充実させて、従業員が自主的に健康行動をとれる環境を整えましょう。
従業員のヘルスリテラシーを高めて健康を守ろう
ヘルスリテラシーは、健康情報を正しく「入手・理解・評価・活用」する能力です。さまざまな情報があふれる現代社会で健康を守るためには、ヘルスリテラシーを高める必要があります。
従業員のヘルスリテラシーが低いと、企業の生産性低下につながる可能性があります。従業員の健康を守るためにも、企業は情報提供の場を設けたり健康行動を促す仕組みを構築したりして、従業員のヘルスリテラシーを向上させましょう。
従業員のヘルスリテラシーを向上させるには、従業員の健康状態を把握し、適切な課題設定を行うことも大切です。実際の健康状態を可視化することで、従業員一人ひとりの状況に応じたリテラシー向上の支援や健康行動の促進をしやすくなります。
EBHS Life(エビスライフ)サポートサービスは、健康診断結果と生活習慣アンケートをデータ化して従業員の健康状態を数値で評価できるサービスです。健康状態をわかりやすくスコア化できるため、従業員一人ひとりに合わせた丁寧なサポートが行えます。
従業員の健康管理に課題を抱えている場合は、ぜひご活用ください。
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