ストレスチェックの実施で有所見者が発覚した場合の対応はどうする?

2015年の労働安全衛生法改正に伴いスタートしたストレスチェック制度は、従業員のストレス度合いを把握するものであり、常時使用する従業員が50人以上の事業場については年に1回実施することが義務付けられています。すでに多くの企業で実施されている一方、チェックの結果から、高ストレスの有所見者がいることが判明した時に、何をすればよいのか悩む担当者も少なくないかもしれません。今回は、面接指導に向けて準備すべきことや、高ストレス者が職場に潜んでいる場合の対応方法などを解説。ストレスチェックで高ストレス者が判明した時に、スムーズに対応するためのノウハウを紹介します。
ストレスチェックによる高ストレス者の選定はどのように行う?
ストレスチェックには、選択式の質問票(調査票・ストレスチェックシート)を活用し、従業員のストレスの程度をスコア化します。高ストレス者に分類する点数の設定は各企業の判断に委ねられているので、自社の特性を見極めて設定するようにしましょう。ただ、厚生労働省では「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を用いることを推奨しており、実際には多くの企業がこの57項目版を使用して、高ストレス者を判定しています。
ストレスチェックを受けた労働者が高ストレス状態であるか否かの選定に企業側が関わることはできません。企業が決めた選定基準をもとに、産業医などが最終的に判断します。一方、高ストレス者と選定された従業員を面接指導の対象とするかどうかは、実施者である企業側が判断します。

高ストレス者へ実施する面接指導はどのように実施する?
高ストレス者と選定された従業員のうち、企業側が必要性を判断した対象者には、ストレスチェックの3項目(ストレス反応、ストレス要因、周囲のサポート)に加えて、勤務状況・心理的負担の状況・その他の心身状況などを確認し、解決するための指導が行われます。いわゆる面接指導です。ここでは、面接指導についての詳細を解説します。
ストレスチェックの結果によって選定される高ストレス者とは、そもそも何によって判断されているのでしょうか。厚生労働省の位置付けによると、高ストレス者とは「自覚症状が高い者や、自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポート状況が著しく悪いもの」を指します。ただ、これはストレスチェックで高ストレス者を選定するための基準ではないので、選定に向けてはストレスチェックの実施者の意見や衛生委員会での調査・審議を通し、高ストレス者の評価基準を企業ごとに設定する必要があるでしょう。
面接指導者の実施者
面接指導の実施者は労働安全衛生法において「医師」と規定されています。なかでも事業場の職場環境をよく理解している人が望ましいことから、企業の産業医がいる場合にはその産業医に依頼するのがよいでしょう。労働者の数が50人未満で産業医がいない事業場の場合は、一時的に産業医を雇用したり、地域産業保健センターのサービスを受けることも可能です。
面接指導の流れ
面接指導の流れはおおよそ次の通りです。
- 面接指導の準備
従業員から申し出を受けた事業者は、概ね1カ月以内に医師による面接指導の実施を調整する必要があります。高ストレス者から面接指導の申し出を受け次第「面接指導申出書」を作成し、面接指導を行う産業医等に郵送もしくはメールで申請を行い、日時や場所の調整を行いましょう。事業者は労働者からの申し出の記録を5年間保存する規定となっているため、「面接指導申請書」も適切な保管が望まれます。 - 面接指導の実施
医師と高ストレス者による面接指導を実施。その後、担当した医師から1カ月以内を目安に「面接指導結果報告書および事後措置に係る意見書」を受け取り、それらを参考に労働時間の短縮や業務内容の変更など、必要と思われる就業上の措置を検討します。この際、一方的な変更提案ではなく、従業員と十分に話し合いの場をもつことが大切です。 - 面接指導後の対応
従業員当人の理解や納得を得る形で就業上の措置をおこなった後も、経過を見守り、定期的にミーティングの場を設けて状況ヒアリングしましょう。また、面接指導の結果を理由に解雇・退職勧奨や、本人の同意を得ない職位変更・配置転換などをすることは禁止されています。面接指導実施後は、事業者が労働基準監督署にストレスチェックと面接指導を受けた人数の報告を行う必要があるので注意が必要です。
高ストレス者に対し企業が取り組むべき対応策は?

面接指導は、高ストレス者本人からの申し出がなければ実施できず、高ストレス者の特定もできません。ストレスチェックの結果、高ストレス者が多いにもかかわらず面接指導の申し出が少ない場合は、相談しやすい環境づくりや、ストレスの原因となっている組織課題の解決にも目を配る必要があるでしょう。
面接指導の申し出をしやすい環境づくり
高ストレス者が面接指導を申し出にくい環境である可能性を考慮し、周りの目を気にならないオンラインでの面接指導受けられる体制を整えるなど、面接指導を希望しやすい環境づくりに努めましょう。また、高ストレス者であることを申告することで不当な扱いを受けることを懸念する高ストレス者には、公平な企業姿勢を発信し、安心して申し出ができるようにするのも大切です。
社外に相談窓口を設置する
事業者側の窓口が人事担当者の場合、同期や仕事で関係性があった人など、社内であるが故の言い出しにくい状況も考えられます。こうしたハードルを下げるためには、社外に専用の相談窓口を設置するのもよいでしょう。自社を通さずに直接外部のカウンセリングを案内することで、適切なケアの実現までの道のりが短縮される可能性があります。
集団分析を行い、組織改善に取り組む
一定人数以上の集団分析であれば、高ストレス者がいる部署や組織を把握することが可能になります。高ストレス者の多い労働環境を見直し組織改善に取り組むことは、高ストレス者のケアにつながります。また、職場環境が改善されなければ、潜在的な高ストレス予備軍が高ストレス者になるリスクにもつながるので、ストレスの原因を常に探りながら解決策を考え続けることが重要になります。ストレスチェックを無駄にしないためにも、集団分析はできる限り実施してみるとよいでしょう。
ストレスチェックは実施することそれ自体がゴールではありません。高ストレス者への面談指導のスムーズな対応や、それをふまえたストレス軽減の施策を講じていく必要があります。産業医との連携強化なども視野に入れながら、高ストレス者が出にくい職場環境を整備していきましょう。
<参考URL>
- 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf - 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/24.html
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