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健康経営とは? その内容やメリット、取り組み事例をまとめて解説

公開日: 2024.11.13
更新日: 2026.2.19
健康経営とは? その内容やメリット、取り組み事例をまとめて解説

企業経営におけるホットワードとなっている「健康経営」。すでに導入を始めている企業、あるいは導入を検討している企業も増加傾向にあるようです。従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する健康経営は、はたして日々の企業活動にどんな影響を与えるものなのでしょうか。健康経営の全体増について、あらためて紹介していきます。

健康経営とは?

健康経営とは、従業員の健康を経営戦略の一環として捉え、積極的な健康増進の取り組みを行うことによって、組織全体のパフォーマンスや生産性を向上させる経営手法を指します。企業が従業員の健康管理や職場環境の改善に力を入れることで、従業員の満足度やモチベーションが高まり、結果として企業の競争力や収益性が向上することが期待されます。

健康経営の基になった思想について

健康経営の概念、思想の発端となったのは、経営学と心理学の専門家であるロバート・H・ローゼン(Robert H. Rosen)氏が米国で1992年に出版した著書「The Healthy Company」で提唱したこととされています。(訳書は「ヘルシー・カンパニー―人的資源の活用とストレス管理」宗像恒次監訳、産能大学出版部、1994年)
ローゼン氏は、自著の中でヘルシー・カンパニーでは「健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる」とされ、それまで別々のものとして考えられていた「経営管理」と「健康管理」を統合することで「企業の業績を向上させることができる」という概念を提唱しています。

また、ロバート氏は従業員の健康管理を経営課題として認識し、従業員の健康増進と生産性向上の両面にアプローチするための2つの対策を提唱しました。

  • 従業員の抵抗力を高める対策
    従業員のストレス管理や禁煙、体重コントロールといった機会を提供
  • 労働環境をつくりあげる対策
    人的資源管理などを通じた従業員の生産性向上につなげる

20世紀後半から労働災害や従業員の健康問題が増加する中で、健康経営の概念が経営戦略に取り入れられるようになることで、ロバート氏の提唱したヘルシー・カンパニーは広まり、健康経営の概念の形成に大きく影響を与えることとなりました。

経済産業省による健康経営の推進

日本においては、経済産業省が健康経営の普及と推進に積極的に取り組んでいます。経済産業省では健康経営を下記のように定義しています。

“「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。“

経済産業省「健康経営」

経済産業省は、健康経営の実践が企業の競争力強化や国全体の生産性向上に寄与することを認識し、企業に対して健康経営の導入を奨励しています。具体的には「健康経営優良法人認定制度」を設け、健康経営に積極的に取り組む企業を評価・認定する仕組みを構築しています。この制度により、企業は従業員や取引先に対して健康経営に取り組んでいることを示すことができ、さらに採用面や投資面でも有利に働く可能性があります。

先述の通り、健康経営は経済産業省が中心となって推進している取り組みですが、よく誤解されがちな点として、「健康」に関する施策というイメージから、厚生労働省が推進していると誤解や勘違いをされる場合があります。しかし、健康経営はあくまでも経済産業省が企業の競争力強化や国全体の生産性向上を目的として進めています。一方で、厚生労働省は産業保健の分野で、職場における従業員の健康や安全管理を推進しており、両者の取り組みは相互に補完的であるものの、それぞれ異なる目的と役割を持っています。

参考:経済産業省「健康経営」

NPO法人健康経営研究会の役割

健康経営の啓発活動を担っている主要な組織の一つが、NPO法人健康経営研究会です。この団体は、健康経営に関する研究や情報提供、セミナー開催などを通じて、企業や地域社会における健康経営の浸透を促しています。健康経営研究会は、企業や自治体と連携し、健康経営を通じた社会的な価値創出を目指しています。また、企業の実践事例を収集・共有し、健康経営に関心を持つ企業が具体的な施策を取り入れやすくするための情報を提供しています。

健康経営研究会の登録商標としての「健康経営」

実は「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会が登録商標として保有している用語です。そのため、健康経営という言葉を使用する際には、この商標に関する認識も重要です。健康経営研究会の存在と商標保護は、健康経営が日本において明確なブランドや価値観として確立されつつあることを示しています。また、この登録商標により、健康経営の概念が広がる過程で、その品質と理念が保たれることが期待されています。

健康経営研究会では健康経営を下記のように定義しています。

“健康経営とは『企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても 大きな成果が期待できる』との基盤に立って、健康を経営的視点から考え、戦略的に実践することを意味しています。今後は、『人という資源を資本化し、企業が成長することで、社会の発展に寄与すること』が、これからの企業経営にとってますます重要になっていくものと考えられます。“

NPO法人健康経営研究会(2021年)

NPO法人健康経営研究会「健康経営とは」

参考:NPO法人健康経営研究会「健康経営とは」

健康経営が注目されるようになった背景を振り返る

健康経営が注目されているのは、従業員の健康ケアによるメリットが従業員のみならず、従業員を人的資本として企業活動を行う企業側にも多くもたらされるためです。

従業員が心身ともに健康な状態を保つことができれば、欠勤率が低下し、企業は安定した生産性を継続的に維持することができます。さらに、健康的な従業員は日々の仕事に対して高いモチベーションを保つことができるため、現状よりも高いパフォーマンスを発揮する可能性も高まります。

業務に積極的な従業員たちによって活性化された職場では、効率性・生産性がさらに高まり、結果的に企業の業績・収益の向上も期待できるでしょう。企業の業績が好調に推移すれば、従業員の意欲もさらに湧きやすくなり、職場はどんどん活性化していく……このような好循環が生まれやすくなる点も、企業が健康経営に注目すべきポイントだといえます。

また、日本が直面する課題である人口減少や高齢化の進展に伴い、企業が健康経営に取り組む必要性はますます高まっています。そこで、健康経営の重要性について、人口構造の変化や健康寿命の延伸、企業価値の向上に焦点を当てて解説していきます。

日本の人口減少と生産年齢人口の減少

2020年から2050年にかけて、日本の総人口は20%減少する見込みです。特に生産年齢人口とされる15歳から64歳の人口は30%以上減少すると予測されています。

高齢化と要介護者の増加

高齢化が進むことで、全人口の約40%が高齢者となり、そのうち約10%が要介護状態になると予測されています。このため、早期に対策を講じなければ、経済の維持が困難になる可能性が指摘されています。

健康寿命の延伸の重要性

平均寿命が延びる中で、健康な状態で長期間経済活動を続けられる「健康寿命」の延伸が重要なテーマとなっています。2040年には健康寿命を75歳以上にすることを目指し、65歳から74歳の方も生産年齢人口に含めた場合、2050年には生産年齢人口が全体の66%に達する見込みです。

生産年齢人口の拡大と健康課題の増加

現在の2023年時点では生産年齢人口の割合は59%ですが、15歳から74歳までを生産年齢人口とした場合、2050年には2023年よりも高い割合となる見込みです。しかし、単に生産年齢人口が増えるという見方だけでなく、年齢に伴う健康課題も増加するため、将来を見据えた対応が必要です。

健康課題が仕事や家事に与える影響

厚生労働省のデータによると、健康問題が仕事や家事に影響を与えている人の割合は、例えば60代の女性で6.9%、70代では8.3%、男性では60代で6.0%、70代で5.8%となっています。将来的にはこれらの割合がさらに増加することが予測されるため、現在の健康課題への対応だけでなく、将来の健康問題を未然に防ぐための早期対応も重要になっています。

健康経営導入による具体的なメリット

従業員の健康状態が悪く、ストレスを蓄積したままの状態では、仕事のパフォーマンスは大きく低下します。そればかりではなく、不調を抱えた従業員が休職や欠勤を重ねれば、企業全体の生産活動に打撃を与えるリスクもあるでしょう。低調なモチベーションが停滞した雰囲気の職場環境は、人間関係を悪化させる火種にもなりやすく、従業員の離職増加を招きかねません。

そして人的リソースが不足すれば、新たな人員の補充が急務となりますが、人員補充をするには希望する人材の募集に時間がかかったり、そもそも新たな採用・育成自体に大きなコストが必要になったりといったリスクをはらみます。従業員の健康状態を把握し、その維持・向上に向けて労働環境の改善施策をはかる健康経営は、社員の定着率を向上させるためにも重要なのです。

さらに、健康経営導入によるメリットとしては、保険料負担の軽減も挙げられます。社会保険など企業で加入している保険料は、企業と従業員が支払いを折半して負担する仕組みです。つまり、従業員が心身の不調をきたして治療を受ける頻度が増え医療費がかかると、企業が負担する保険料が増加してしまいます。反対に、健康経営によって従業員が健康を維持し、治療の機会を減らすことができれば、企業の負担費用を減らすことができます。このように、健康経営による従業員の心身における健康の維持・増進は、企業のコスト抑制にも効果を発揮するのです。

さらに労働市場において、QOLを重要視する求職者は増加傾向にあり、「健康的に働けるかどうか」は仕事を選択する上で大きな指標となりつつあります。そんな中、従業員の健康に真摯に向き合い健康経営を実施する姿勢は、企業イメージの向上に役立ち、求職者に対して魅力的なアピールポイントにもなり得ます。健康経営を実践する企業であることが就職希望者を増やし、結果的に優秀な人材を集めるためのファクトにもなるというわけです。

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中小企業が健康経営に取り組むメリットとは?

中小企業の経営者のなかには、健康経営の存在を知っていても「企業規模が小さいと投資に対するメリットも小さくなってしまうのでは?」と、なかなか手がつけられない方も少なくないかもしれません。

しかし、元々従業員数が少なく、各人が担う業務や役割の範囲が広くなりがちな中小企業では、一人の従業員のパフォーマンスが企業全体にもたらす影響は大きく、健康被害により従業員が離職・休職することになればそのダメージが企業とって甚大なものになることも。従業員の健康を促進し離職や休職を減らす取り組みは、事業を継続するためにも必須だといえるでしょう。

また、労働人口の減少による人材不足も中小企業にとっては大きな課題。まずは在籍している従業員に健康で長く働いてもらうためにも、健康経営を推進することは重要になります。

そもそも従業員の健康課題が解消されず通院する人が増えれば、医療費の負担が増えてしまいます。健康経営によって自社の健康課題を解決すれば、医療費削減という直接的なメリットもあるのです。

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健康経営を評価し、広く知らしめるための各種認定制度

健康経営とは、企業が従業員の健康に配慮することで経営面においても大きな成果が期待できるという考えから、従業員の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に実施することです。

こうした企業の取り組みを促進するために、健康経営に取り組む企業を可視化し、従業員や求職者、関係企業や金融機関などのステークホルダーから社会的に評価を受けることができる環境の整備を目的に、企業に対する健康経営の認定制度も存在しています。

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中小企業にも拡大!健康経営への評価の証となる「健康経営銘柄」とは?

「健康経営銘柄」とは、東京証券取引所に上場している大企業の中から優良な健康経営を実践している企業を選ぶ制度です。健康経営の認定制度は当初「健康経営銘柄」のみでしたが、未上場企業であっても優れた活動をしている企業が多数あることから、対象範囲を広げるべく2016年度から「健康経営優良法人」認定制度による「中小規模法人部門」もスタートしました。

認定制度によって選出される「健康経営優良法人」。その種類とは?

健康経営優良法人認定制度では、大規模法人・医療法人を対象とした「大規模法人部門」と、中小規模法人・医療法人を対象とした「中小規模法人」に分けられ、それぞれで健康経営優良法人を選定します。なかでも特に優良な健康経営を実践している上位法人に対しては「ホワイト500」(大規模法人部門)、「ブライト500」(中小規模法人部門)という特別称号も与えられます。

人口減少にともない労働力人口も減少を続ける今、企業の人手不足はこれからも加速していくことが予想されます。人材確保が企業の喫緊の課題となるなか、健康経営優良法人の認定取得や「ホワイト500」「ブライト500」の取得は、従業員の健康を大切にする企業の姿勢を広く社会にアピールするきっかけとなり、ワークライフバランスを重視する求職者が集まりやすくなる要因にもなります。この「人材の確保がしやすくなる」という点は、企業からの注目が集まっている大きな理由のひとつといえます。

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「健康宣言」とは? その内容と効果を知っておこう

「健康宣言」は、健康経営を企業一丸となって取り組むことを社内外に意思表明し、発信することです。従業員の健康管理を真摯に推進するためには、自社の健康課題を抽出し、優先順位を決めながら取り組む内容を決定する必要があります。健康宣言とはそのための第一歩として、それらを社内外に宣言することを指します。たとえ現段階では何も始めていなくても、宣言に至るプロセスを経ることで従業員たちが健康増進につながる道程を理解できるというのも、健康宣言の大きな役割の一つだといえます。

健康宣言に取り組むことは「健康経営優良法人」の申請・認定にもつながります。「健康経営優良法人」とは、経済産業省が定める設定基準を満たし、健康経営の積極的な取り組みが認められた企業や法人を対象としたもので、認定されれば健康経営を実践する企業姿勢に説得力や信頼感が生まれ、イメージ向上も期待することができます。

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健康経営を始める上で欠かせないことと、取り組みの手順

健康経営を始めるには、まず健康経営宣言を行い、社内外に健康経営の実施を伝えます。そこで最も大事なのが、経営層の健康経営への関与です。企業全体に健康経営の効果を波及させるためにも、経営層の巻き込みが大事になります。その第一歩として行いたいのが、健康経営に取り組むことを宣言する「健康経営宣言の策定」です。社内広報やプレスリリースを用いて、従業員や投資家、さらに加入している健康保険組合や全国健康保険協会に向けた発信を行いましょう。

次に、健康経営を推進するための具体的な社内体制を構築していきます。取り組みを主導していくための担当者を人事部に配置するなど、全体の指揮を取る部署や人材を決定するところから始めましょう。

健康経営推進のための組織体制を整えたら、従業員の健康状況を確認します。健康診断やストレスチェックなどの結果をもとに、従業員の健康について現状を把握した上で、自社が抱える健康課題の本質を把握しましょう。健康診断結果などは事前にデータ化しておくと分析がしやすくなります。

社内で取り組むべき課題とその優先度が明らかになったら、続いてその解決方法を具体的に計画していきます。計画を策定したら、施策の実行に移ります。実行後は取り組みの効果検証結果をもとに評価とフィードバックを行い、施策・計画の見直しや改善をしていくことが大切です。

取り組みを実施した上で重要なのが、それぞれの取り組みについての評価・改善を必ず行うという点です。振り返りはしっかりと行い、取り組み自体が課題に対して適切だったか、どの程度成果が出て今後も継続の必要性があるのか、といった点を確実に評価するようにしてください。

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まずはここから!健康経営への取り組みの具体的な内容例

健康経営への取り組みは、明らかになった健康課題のうち優先順位の高いものから具体的にスタートします。たとえば健康診断の受診率が低い場合は、セミナーを開いて健康への意識改革をはかったり、残業時間が多すぎる場合は原因を見つけて効率化するシステムを導入し“ノー残業デー”を作ったりと、それぞれの課題に対して適切な対策が多く検討できるはずです。健康診断の受診率改善や残業時間の削減など、数値化できるものについては具体的な数値目標を設定した上で、具体的な取り組みの内容を決定しましょう。

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健康経営の可視化と質の向上にはデジタルデータでの一元管理が有効

従業員の健康に関するデータは、健康診断やストレスチェックの結果だけではありません。健康経営を進めるには、勤怠情報や業務履歴、産業医などとの面談記録など、従業員の心身や日々の業務に関するあらゆる情報を参考にする必要があるでしょう。

現在はこれらをExcelなどの表計算ソフトでデータ化して保管している企業が多いものの、管理されているデータはそれぞれの情報ごとに分散・独立しており、統合管理ができていないというケースも多く見受けられます。

組織改善や健康施策の立案など、健康経営を進めていくための健康データを各所に分散したままでは、さまざまな分析や施策の推進に向けた妨げになりかねません。さまざまなデータは統合したうえで一元管理できれば、健康経営に向けた課題が可視化しやすくなります。外部サービスやソリューションの導入も視野に入れつつ、社内の健康に関するデジタルデータの統合を検討してください。

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健康診断受診率と保健指導の実施率をアップするには?

健康診断の受診率を上げるためには、従業員に対して健康の大切さについての理解促進をはかること、費用面の負担を軽減することが基本となります。

単に「健康診断を受診しましょう」とアナウンスするだけでは、その重要性は伝わりません。従業員の注意を引き、健康診断を自分ゴト化してもらうために、周知する方法を工夫する必要があります。たとえば、公的なパンフレットは内容が理解しにくいことがあるため、内容をわかりやすくしてあらためて解説するなど、従業員が理解しやすくするための工夫を常に意識する必要があるでしょう。

健康診断の実施・受診の促進については、企業の人事担当者などが担当することもあります。しかし、医療や健康の専門家ではない立場から健康診断の必要性を伝えるのが難しいケースも少なくありません。その場合は、労働衛生の専門家である産業医の導入を検討するとよいでしょう。

産業医の選任は従業員が50人以上になってからですが、先んじて選任しておくことで定期的な健康診断の重要性についての説明を委ねたり、周知のタイミングの決定などでサポートが受けられたりと、健康診断の実施においてさまざまなメリットが生まれるはずです。働く人々の健康リスクが高まる現代、定期的な健康診断の受診がますます重要になっています。

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健康診断の再検査や特定保健指導の受診を推進する方法

健康診断の再検査・精密検査などについては、費用負担者は労使間の協議や就業規則などで決めることとされており、企業側に必ずしも支払い義務はありません。ですが、自己負担では健康診断を受けたくないと考える従業員もいるので、受診率を上げるためには企業が費用を負担するのが望ましいでしょう。

また、特定保健指導を推進するためには、企業と健康保険組合などの保険者が足並みを揃える「コラボヘルス」が重要です。コラボヘルスとは、健康保険組合と企業が連携することによって保険加入者である従業員の健康づくりを支援することを指し、厚生労働省からも実践することが推奨されています。特定保健指導の実施は健康保険組合に義務付けられているものですが、そのメリットを伝えて参加を促進するためには、企業側の協力は欠かせません。例えば、就業時間内に特定保険指導を受けられるように企業が社内規則を整備して指導を受けやすい環境をつくるなど、足並みを揃えることで効果を発揮できるわけです。

特定保健指導の実施率が低いことで企業が受ける直接的なペナルティはありませんが、特定保健指導を受けさせることは従業員の生活習慣の改善、ひいては生活習慣病の発症リスクの減少につながります。理想的な健康経営の実現のためにも、企業と健康保険組合双方で目的や役割分担を明確にしながら特定健診や特定保健指導の実施率向上に努めることはとても重要だといえます。

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メンタルヘルス不調と長時間労働への対応

従業員のメンタル不調に対応するために、産業医によるメンタルヘルス対策の需要が年々高まっています。産業医が実施するメンタルヘルス対策は、従業員との面接をはじめ、ストレスチェック、企業への意見や従業員へのアドバイスなど多岐にわたりますが、なかでも長時間労働者への面接指導は重要です。時間外・休日労働時間が月80時間以上で、かつ疲労が蓄積されていると認められた長時間労働者には、産業医による面接指導が行われます。近年では、労働時間の長さとメンタルヘルスとの関係性が明らかになっており、重要視されていいるので、従業員の心身の不調をチェックしつつ、働き方について指導を行い、問題発生の予防に努める必要があります。

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女性の健康保持と働きやすい職場の実現に向けて

少子高齢化によって労働力人口が減少する一方、女性の社会進出が進み、女性の労働者は増加傾向に。現在、労働力人口に占める女性の割合は全体の44.4%にのぼり、職場の約半数が女性となっています。こうしたなか、女性従業員の健康保持や働きやすい環境の実現も重要な課題です。

女性は、女性特有の健康課題を抱えています。それらを正しく理解して適切なサポートをすることにより、体調に合わせた柔軟な働き方が可能になれば、仕事に対する自信やモチベーションを保ちながら働き続けることができ、離職者を減らすことにもつながります。

また職場の環境づくりに向けては、仕事と育児や家事の両立が難しい女性従業員に対し、労働時間や働き方を柔軟に選択・調整できる制度を整備することなどが考えられます。これには、女性の家庭環境に合わせ、時短勤務やテレワーク、フレックスタイム制など、さまざまな制度の導入が検討できるでしょう。

次に挙げられるのが、女性ロールモデルの育成です。キャリアと家庭をうまく両立している女性管理職を増やすことで女性従業員のモチベーションが上がり、活力ある女性の多い理想的な職場が実現するはずです。他にも、男性の育児休暇を推進する認可外保育園の援助や託児所の設置など、女性が育児と仕事を両立しやすくするために検討できる制度はさまざま考えられます。

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分煙の徹底と喫煙率低下の取り組み

喫煙による健康への影響が問題視され、望まない受動喫煙を防ごうという動きが世界的に広がるなか、日本においてもオフィスでの受動喫煙防止対策を強化する企業が増えています。

日本では国内の事業者に対する規制として、健康増進法と職業安定法施行規則が改正され、企業や従業員はより厳しく職場の喫煙問題に取り組む必要に迫られています。経営者や企業担当者は、まずこれらの改正ポイントをしっかりと把握し、義務となっている項目への適切な対応が求められます。

企業の受動喫煙対策の具体例としては、まず「喫煙室の設置」や「従業員への受動喫煙防止に関する説明」などがあげられます。

喫煙室の設置には、喫煙によって粉じん濃度が増加しない、換気の気流が0.2m以上、などの基準を満たす必要があります。設置できる喫煙室のタイプは施設の性質によって区分されているので注意が必要です。他にも、喫煙室のタイプを表す標識の提示もあります。さらに20歳未満の人はたとえ従業員でも、施設の区分や喫煙室のタイプにかかわらず、喫煙エリアに入ることができないことにも注意しましょう。

従業員への受動喫煙防止に関する説明は義務ではないものの、対策整備の一環としては重要だといえます。定期的に社内で勉強会を開いたり、喫煙者の従業員に対して禁煙教室を開いたり、産業医による禁煙相談を実施したりしながら、受動喫煙による健康被害のリスクも併せて説明するとよいでしょう。

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健康経営の情報発信とPR

健康経営を推進する中で、ブランディングの効果を発揮するには外部発信が重要になります。外部発信は健康経営優良法人認定の要件においても必須項目となっていることからも必要な取り組みだといえるでしょう。

外部に発信していく前に、まずは社内浸透が重要となります。そのため、社内報などで健康経営についての取り組みを具体的に広報して伝えて、社員一人ひとりが健康経営の良さを実感できる土台を整えましょう。

他にも、商談時に活用する説明資料や、採用時の説明資料に健康経営について記載し、詳細な説明を添えるのも有効な手段のひとつです。本格的に健康経営に取り組んでいる会社がまだまだ多くない中ではクライアントや求職者から興味を持ってもらいやすく、商談や採用のカギとなることもあります。同様に、採用や事業紹介をするセミナー・講演などで活用することもブランディングに寄与するためおすすめです。

コーポレートサイトなど不特定多数の方が触れる媒体で健康経営の取り組みを発信するプレスリリースも認知拡大には効果的です。

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健康経営へのさまざま会社の事例を学ぼう

健康経営については、自社の事業や労働環境に合わせ、各社でさまざまな取り組みが実施されています。

たとえば、2006年に「ANA健康フロンティア宣言」を発表し、社員の生活の質(QOL)向上を目指して活動をスタートしたANAの健康経営の取り組みは、社員の健康を企業の成長と活力向上の基盤とする理念に基づいており、2016年からはグループ全体での健康経営を推進し、従業員が健康で個性や能力を最大限に発揮できる環境づくりを重視しています。

具体的な取り組みとしては、戦略マップを用いた経営層と従業員の認識共有、産業医や健康保険組合との連携強化が挙げられます。また、「ベジチェック®」や「歩Fes.」といった、楽しさを取り入れた健康促進イベントも開催し、社員が気軽に健康に取り組める環境を整備しています。このように、ANAは「健康経営」を企業の成長戦略に位置づけ、社員の健康と幸福を支える体制づくりに注力しています。

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また、運輸運送業のセイノースーパーエクスプレス株式会社では、健康経営における積極的なアクションの一環として、自社ドライバーに対し、睡眠時無呼吸症候群のリスクチェックや、睡眠における課題を可視化することができるサービス「Sleep Doc」を導入。産業医と連携しながら、リスクチェックの結果と健康診断の結果と突合して、より立体的な診断やアドバイスができる体制の模索を続けています。

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ワーク・ライフ・バランスの実現

従業員のワーク・ライフ・バランスの維持に向けた企業側の取り組みは健康経営に欠かせません。たとえば、労働時間や休暇日数を見直し。長時間の残業が続いたり、休日出勤の頻度の高かったりといった激務は、従業員の心身不調につながる大きな原因の一つになります。従業員の労働状況については積極的な把握に努め、「ノー残業デーを設定する」「休暇日数を増やす」「残業時間が多い従業員には産業医との面談を推奨する」など、ワークライフバランスを維持できる働き方をサポートすることが重要になります。

またその際には「毎月最終営業日をノー残業デーに決める」「有給休暇を5日以上取得できるようにする」など、具体的な数値目標を設定して取り組むことも大切です。

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健康経営に直結する「ウェルビーイング経営」とは?

従業員人が健康を維持できるかどうかは、日々のパフォーマンスを大きく左右する重要な問題です。さらに人口減少・高齢化を迎えている日本では「生涯現役」の必然性が増しており、「健康」の重要性がもますます高まっているといえます。

近年ではさらに、「ウェルビーイング(Well-Being)」という言葉もよく聞くようになりました。ウェルビーイングとはWHO(世界保健機関)によると、「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義されています。

従業員のウェルビーイングを維持していくには、彼らへのモニタリングを続けながら、心身の不調が顕在化する前に、早期の異常発見ができる体制構築が重要になります。定点でのモニタリングの一環として、健康診断は欠かせません。さらに、個人の診断結果を分析し、組織全体の健康課題を把握しておくことも、企業が健康経営を進めるためには重要になります。

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健康経営を考える上で理解しておくべき「平均寿命と健康寿命」という考え方

寿命には「平均寿命」と「健康寿命」という2つの考え方があります。平均寿命とは厚生労働省が作成している「生命表」から得ることができる、0歳の者が、あと平均何年生きられるかを示した年数のこと。一方、平均寿命のなかで、健康で活動的に暮らせる期間のことを「健康寿命」といい、WHO(世界保健機関)によって提唱された指標となっています。

つまり平均寿命と健康寿命との「差」は、日常生活に制限のある「不健康な期間」となり、内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によれば、2019年時点で男性8.73年、女性12.06年となっています。

高齢化が進む今後、平均寿命の延伸とともに、健康な期間だけではなく不健康な期間も延びることは十分に考えられます。平均寿命の延び以上に健康寿命を延ばすことは、高齢化社会において、個人の生活の質の低下を防ぐとともに、社会保障負担の軽減も期待できるものとして、期待されています。

まとめ

本記事では、健康経営がなぜ企業にとって大切なのか、そのメリットや導入のヒントをお伝えしました。
健康経営は、従業員の健康を守りつつ企業の生産性や職場の活力を高める強力な手段です。従業員が心身ともに健康であることで欠勤が減り、業績も上がるなど職場全体が良いサイクルに入ることができます。また、今後の人材確保にも役立ち企業のイメージアップにもつながります。

特に中小企業でも、社員一人ひとりの健康が企業全体に与える影響は大きく、健康経営の取り組みが企業の安定と成長のカギとなります。健康経営を支える認定制度や各種サポートも整備されており、今から始める価値は十分にあります。

健康経営を始めることで、従業員も職場もより健康で働きやすい場所に変わります。
たとえば、健康診断の受診率を高める、メンタルヘルスのサポート体制を見直すなど、小さな改善が大きな成果につながります。

一歩を踏み出すのに迷う方も多いかもしれませんが、まずはできる範囲で取り組んでみてはいかがでしょうか。

健康経営/産業保健

健康経営/産業保健コラムシリーズ

企業に義務付けられている産業保健体制の構築から 健康経営の考え方・推進法まで幅広い話題をご提供。 これを読むだけで今求められている施策・対応への理解が進みます。

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