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特定保健指導を受けてもらうためには…実施率を向上させる施策を紹介

2024.4.16
特定保健指導を受けてもらうためには…実施率を向上させる施策を紹介

「特定保健指導」。この言葉を聞いて、多くの企業の健康経営や産業保健のご担当者様は、「うちの会社も実施率がなかなか上がらなくて…」と、頭を抱えているのではないでしょうか。本記事では特定保健指導の重要性や課題、実施率を向上させるために取り組むべき施策などについて解説します。

特定保健指導の重要性と現状の課題

悩む様々な職業の人々

特定健康診査(特定健診)と特定保健指導は、40歳~74歳までの被用者保険(健康保険組合や全国健康保険協会など)や国民健康保険の加入者を対象とした保健制度で、2008年4月に始まりました。いわゆる「メタボ健診」といわれるもので、メタボリックシンドロームに着目した特定健診と、その結果に生活習慣病のリスクがある人に向けた保健指導を指します。膨らみ続ける医療費の適正化をはかりながら、生活習慣病を予防することに期待されています。

しかしながら、特定保健指導の実施率は依然として低い水準に留まっており、多くの企業や健康保険組合がその向上に課題を抱えています。実施率が向上しない主な要因としては、対象者の多忙、特定保健指導の必要性への理解不足、時間的制約、または内容への魅力の欠如などが挙げられます。これらの課題を克服し、特定保健指導の実効性を高めることは、企業の健康経営を推進する上で不可欠です。

また、特定保健指導を受けないことによるリスクも無視できません。指導を受ける機会を逸することで、生活習慣病のリスクが高まり、将来的に重症化する可能性が増大します。これは個人の健康寿命を縮めるだけでなく、企業の生産性低下や医療費増大にも直結するため、企業として特定保健指導への積極的な関与が求められます。

特定保健指導を受けないとどうなる?

特定健診・特定保健指導は法律で定められた制度であり、健康保険組合に対しては実施が義務付けられていますが、対象者の受診は義務ではなく、従業員が特定保健指導を受けないことによって企業がペナルティを受けることもありません。しかし、特定健診や保健指導の実施率が低い場合、健康保険組合は国に納める後期高齢者支援金を増額されます。

後期高齢者支援金は、健康保険制度の一つである後期高齢者医療制度に対する支援金を指します。現在75歳以上の人は都道府県単位の広域連合で運営される後期高齢者医療制度という健康保険制度に加入していますが、その財源は国費が5割、加入者本人の負担が1割、そして残り4割は現役世代の人々が毎月支払う健康保険料でまかなわれています。特定健診や特定保健指導の実施率が基準を満たしていない健康保険組合に加算された後期高齢者支援金は、現役世代が納めている保険料から多く支払われることになるため、結局は、現役世代全体に対してペナルティが課されている構造になっています。

また、企業や従業員が特定健診や特定保健指導を受けない、受けさせないことによるペナルティはないものの、対象者が生活習慣を改善しない場合は生活習慣病を発症する恐れがあります。その場合、生産性が大幅に損なわれる可能性があるため、企業や従業員にとっても直接的なデメリットになります。
特定保健指導の対象になること自体、生活習慣が良くない状態にある可能性を示しているので、特定健診や特定保健指導を受けてもらうことは健康経営を推進する企業にとっては重要だといえるでしょう。

特定保健指導実施率向上のための施策①:コラボヘルス

では企業として、特定健診と特定保健指導を推進するためにはどうすればいいのでしょうか。キーワードとなるのが、企業と健康保険組合などの保険者が足並みを揃える「コラボヘルス」です。コラボヘルスとは、健康保険組合と企業が連携することによって保険加入者である従業員の健康づくりを支援することを指し、厚生労働省からも実践することが推奨されています。

特定保健指導の実施は保険者である健康保険組合に義務付けられているものですが、特定保健指導のメリットを対象者に伝え、参加を促進するためには、企業側の協力は欠かせません。例えば、就業時間内に特定保険指導を受けられるように企業が社内規則を整備して指導を受けやすい環境をつくるなど、双方が同じ目的を共有して足並みを揃えることで効果を発揮できます。

こうしたコラボヘルスの推進において、厚生労働省は健康保険組合に対して「データヘルス」を取り入れることを推奨しています。これは、健康保険組合の加入者の健康データを分析することでパーソナライズ化された予防対策や保健指導を効果的に実施するというものです。診療報酬明細書のデータや健康診断のデータを組み合わせることで、分析結果に基づいた保健事業に取り組みやすくなるというわけです。

先述のとおり、特定健診や特定保健指導の実施率が低いことで企業が受ける直接的なペナルティはありません。しかし、特定保健指導を受けさせることは従業員の生活習慣の改善、ひいては生活習慣病の発症リスクを減らして、元気に活躍してもらうことにつながります。従業員の健康を保ち、生産性を向上できれば、健康経営を推進する企業としてのイメージアップも期待できます。理想的な健康経営の実現のためにも、企業と健康保険組合双方で目的や役割分担を明確にしながら特定健診や特定保健指導の実施率向上に努めることはとても重要だといえるでしょう。

また、2025年7月の健康経営推進検討会において、健保組合保険者との連携に関する必須要件の変更が行われました。
健康経営優良法人認定における健保組合等保険者との連携に関する必須要件は、令和7年度の改訂で以下の点が変更されます。

  • 昨年度まで評価項目だった『40歳以上の従業員の健診データ提供』を、9割以上の法人がデータ提供をしている現状を踏まえ、誓約事項に移動
  • 『40歳未満の従業員の健診データ提供』が、新たに必須要件として追加

この変更により、データ提供をしていない、またはデータ提供について保険者に意思表示をしていない場合は不認定となります。大規模法人部門における認定要件の該当設問も変更されており、R6年度のQ30(a)およびQ31が、R7年度ではQ28およびQ29に変更されています。上記の変更も踏まえ今後も健康経営におけるコラボヘルスの重要性は高まっていくと予想されます。

特定保健指導実施率向上のための施策②:対象者の利便性向上

多忙なビジネスパーソンにとって、特定保健指導を受けるための時間や場所の確保は大きな障壁となります。この課題を解消するためには、利便性を最優先した施策が有効です。

特定健診同日実施の推進: 特定健診の受診当日に初回面接を実施することで、対象者は別途日程調整や移動の手間なく指導を受けられます。健康意識が高まっているタイミングでのアプローチは、その後の継続にも繋がりやすい利点があります。特に多忙な建設業の従事者などを抱える健康保険組合で有効性が示されています。

多様な実施方法の提供(ICT活用): 対面だけでなく、オンライン(ICT面談)や電話、メールを活用した指導方法を提供することで、場所や時間の制約を受けずに指導を受けることが可能になります。これにより、遠隔地の対象者やシフト制勤務者など、様々な働き方に対応できます。

出張型・巡回型指導の導入: 企業や事業所に専門家が出向き、その場で特定保健指導を実施することで、対象者の移動負担を軽減し、参加へのハードルを下げることができます。

予約システムの簡素化: Webサイトからの簡単な申込フォームの設置や、連絡可能な時間帯の事前収集など、予約プロセスを簡便にすることも重要です。

特定保健指導実施率向上のための施策③:対象者のモチベーション向上

「健康は大事」ということを理解している人は数多くいますが、健康を常日頃から意識している人は少ない傾向にあります。健康への関心や意欲を高めることは、特定保健指導の実施率向上に直結します。

インセンティブ制度の導入: 特定保健指導の完了者や、目標達成者に対して金銭的インセンティブ(クオカード、商品券など)や、表彰制度、ホテル食事券などを設けることで、参加への動機付けを強化できます。翌年の腹囲改善など、具体的なアウトカムに応じたインセンティブも有効です。

啓発活動の強化と情報提供の工夫: 特定保健指導の目的やメリット、放置した場合のリスク(特定保健指導を受けないとどうなるか)を視覚的に分かりやすく伝えることはモチベーションの向上に有効です。チラシやパンフレットを作成し、配布することで特定保健指導の重要性の理解促進に寄与できます。

成功事例の共有: 実際に特定保健指導を通じて健康改善を達成した人の事例や、職場内の成功体験を共有することで、他の対象者の「自分にもできる」という意識を高めることができます。

健康イベントの開催: 健康を増進することは我慢することだと思っている方は意外と多いです。ウォーキングイベントや栄養教室、健康セミナーなどを開催し、楽しみながら健康意識を高める機会を提供することで特定保健指導への参加率向上が期待できます。

トップからのメッセージ発信: 経営層や管理職が健康経営へのコミットメントを示し、特定保健指導の重要性をメッセージとして発信することで、組織全体の意識が高まります。

リピーター対策の強化: 複数回対象となるリピーターに対しては、個別の状況に応じた目標設定、継続的な声かけ、ショートメッセージによるリマインド、あるいは新たなアプローチで飽きさせない工夫(異なる専門職による指導、テーマ変更)を行うことが重要です。

モチベーション向上に向けて様々な施策がある一方で、実際に施策を推進する際には特定保健指導の対象でない方が不公平感を感じないように工夫を凝らす必要があります。特定保健指導対象者限定ではなく、全従業員が取り組める施策の実施や会社として特定保健指導の実施率向上を目指す理由を発信していくなど、自社の状況に合わせた取り組みを行うとよいでしょう。

まとめ

特定保健指導の実施率向上は、一朝一夕に達成できるものではありません。しかし、企業が主体的に関わり、個々の状況に合わせたきめ細やかな支援を提供することで、着実にその成果は現れます。健康経営を推進する企業にとって、特定保健指導は従業員の健康と企業の持続的成長を支える重要な基盤となるでしょう。

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