クラウド型の健康管理システムとは?オンプレミス型との比較や機能を解説

近年、企業における従業員の健康管理は、単なる法令遵守の枠を超え、生産性向上や企業価値を高める「健康経営®」の重要な柱となっています。しかし、紙やエクセルでの管理に限界を感じ、業務効率化を検討している担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこでおすすめなのが「クラウド型健康管理システム」です。本記事では、健康管理システムの基礎知識から、オンプレミス型との違い、具体的な機能、選び方のポイントまでを網羅的に解説します。自社に最適なシステムを選定し、効果的な健康管理体制を構築するための参考にしてください。
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健康管理システムとは?定義と導入目的
健康管理システムとは、従業員の健康診断結果やストレスチェックの結果、就業情報などの健康データを一元的に収集・管理・分析するためのITツールです。
健康管理システムの定義と目的
健康管理システムの基本的な定義は、企業が保持すべき従業員の健康情報をデジタル化し、効率的に運用するための仕組みを指します。
このシステムの最大の目的は、煩雑な管理業務を効率化し、従業員の健康状態を正確に把握して、適切な保健指導や労務管理につなげることです。対象者の抽出や判定作業を自動化することで、人事担当者や産業医の負担を軽減します。また、組織全体の健康レベルを可視化し、衛生委員会での報告資料作成をスムーズにするなど、労働衛生管理の質を向上させることも重要な目的です。企業が従業員に対して「健康で長く働いてほしい」という希望を形にするための基盤といえるでしょう。
クラウド型健康管理システムの特徴
現在主流となっているクラウド型健康管理システムは、インターネット経由でサービスを利用する形態です。
最大の特徴は、自社でサーバーを設置する必要がなく、簡単な設定ですぐに利用を開始できる点にあります。オンプレミス型に比べて導入のハードルが低く、全国に拠点を持つ企業でもスムーズに導入可能です。
インターネット環境があれば、PCやスマートフォンから自身のデータを確認したり、ストレスチェックを受検したりと、従業員にとっても気軽に利用できるメリットがあります。煩雑になりがちな紙の報告書やデータ入力の手間を省き、システム上で画面表示や判定結果の確認が完結するため、業務効率が格段に向上します。コスト面でも、初期費用を抑えられるケースが多く、ポイントを絞った運用が可能です。
クラウド型とオンプレミス型の違い
健康管理システムを導入する際、最も比較検討されるのが「クラウド型」と「オンプレミス型」の違いです。それぞれの特徴を理解し、自社の環境に合ったタイプを選ぶことが成功の鍵となります。
導入形態とコスト構造の比較
オンプレミス型は、自社内にサーバーやネットワーク機器を設置し、ソフトウェアをインストールして運用する形態です。一方、クラウド型はベンダーが提供するインターネット上のサーバーを利用します。
主な違いを以下の表にまとめました。
| 比較項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
| 初期費用 | 安価(サーバー購入不要) | 高額(サーバー・機器購入が必要) |
| ランニングコスト | 月額・年額利用料が発生 | 保守管理費、電気代など |
| 導入スピード | 早い(アカウント発行のみの場合も) | 遅い(機器調達・構築が必要) |
| カスタマイズ性 | パッケージ機能が主(制限あり) | 柔軟に独自開発が可能 |
| 保守・メンテナンス | ベンダーが実施(自動更新) | 自社で実施(専門知識が必要) |
| アクセス性 | 場所を選ばず利用可能(テレワーク対応) | 社内ネットワーク内のみ(VPN必要) |
どちらを選ぶべきか?
クラウド型は、初期費用を抑えてスピーディーに導入したい企業や、テレワークなど多様な働き方に対応したい企業に最適です。法改正時のアップデートも自動で行われるため、常に最新の法令に対応した運用が可能になります。
一方、オンプレミス型は、社内規定によりデータを外部に出せない企業や、独自の複雑な業務フローに合わせてシステムをフルスクラッチで開発したい企業に向いています。ただし、サーバーの保守期限やセキュリティパッチの適用など、自社での運用負担が大きくなる点には注意が必要です。近年では、セキュリティ技術の向上により、多くの企業が利便性の高いクラウド型へ移行する傾向にあります。
健康管理システムの必要性
なぜ今、多くの企業で健康管理システムの導入が進んでいるのでしょうか。その背景には、企業責任の増大と生産性向上への意識変化があります。
企業における健康管理の重要性
企業には、労働契約法に基づく安全配慮義務があり、従業員が健康に働ける環境を整える責任があります。法人組織において、従業員の健康状態を把握せずに放置し、過重労働による健康被害が発生した場合、企業は法的責任を問われるだけでなく、社会的信用も失墜しかねません。
産業医との連携や、高ストレス者への面接指導、保健指導の実施など、法令で定められた業務は多岐にわたり、自社のアナログ管理だけでは膨大な手間がかかるのが現状です。また、衛生委員会の開催や労働基準監督署への報告など、担当者が抱える業務量は増加の一途をたどっています。システムを導入し、健康リスクを早期に発見・対処することは、企業を守るリスクマネジメントとしても不可欠です。
従業員の健康維持と生産性向上
従業員の健康は、企業の生産性に直結します。心身の不調は、欠勤や休職だけでなく、出勤していてもパフォーマンスが低下する「プレゼンティズム」を引き起こします。
健康管理システムを活用して、従業員の健康データを分析し、適切な改善策を講じることは、組織全体の作業効率を高めるために重要です。例えば、特定の部署で残業時間が多い、ストレスチェックの結果が悪いといった傾向が見えれば、人事異動や業務量の調整、柔軟な勤務体系の導入など、具体的な対策を打つことができます。勤怠データと健康データを紐づけて管理することで、長時間労働の削減や社員のエンゲージメント向上につなげることが可能です。
健康管理システムの機能とメリット
健康管理システムには、業務を効率化し、健康経営をサポートするための多彩な機能が搭載されています。
主要機能の一覧
一般的な健康管理システムでは、以下のような機能を利用できます。
- 健康診断管理: 定期健診結果のデータ取り込み、未受診者への勧奨メール配信、結果一覧の画面表示。
- ストレスチェック: Web上での検査実施、集団分析、高ストレス者の抽出。
- 過重労働管理: 勤怠システムとの連携による長時間労働者の把握、面談管理。
- 産業医・保健師連携: 面談記録の作成・保存、意見書の管理。
- ダッシュボード機能: 組織全体の健康状態をグラフやチャートでTOP画面に概要表示。
これらの機能により、スタッフは詳細な項目までドリルダウンして確認したり、各種報告書を自動作成したりすることが可能です。システムによって掲載されるメニューや操作感は異なりますが、下記のように「管理者が行う業務」と「従業員が行うアクション」の双方を支援する構成になっています。
健康データの一元管理の利点
健康診断の結果、ストレスチェック、勤怠情報などがバラバラに管理されていると、個別のデータ照合に時間がかかり、全体像の把握が困難です。
システムによる一元管理を行えば、散在していた個人情報を統合し、必要な情報を即座に抽出できます。例えば、「残業が月80時間を超え、かつ健診結果に異常がある人」といった複合条件での検索も容易になり、業務の大幅な効率化が実現します。データの統一フォーマット化により、入力ミスを防ぎ、情報の正確性が向上することも大きなメリットです。
健康課題の可視化とリスク管理(AI活用の重要性)
蓄積されたデータを分析し、組織の健康課題を可視化できる点もシステムの強みです。
さらに、最新のシステムでは単に集計するだけでなく、医学的エビデンスに基づいたAI分析が可能です。例えば、健康診断結果と問診データから従業員の「余命」や「健康リスク」を偏差値のようにスコア化(例:EBHS Lifeなど)できる機能があれば、専門知識がない人事担当者でも「どの部署にどのような対策が必要か」が直感的に判断できます。
これにより、経営層に対しても「なんとなく健康」ではなく、「スコアが〇ポイント改善した」という定量的な投資対効果(ROI)を示せるようになります。業務効率化に加え、こうした「攻めの健康経営」の基盤を作ることが、システム導入の大きな意義です。
健康管理システムの比較ポイント
数あるクラウド型システムの中から自社に最適なものを選ぶためには、以下の比較ポイントを押さえることが重要です。
導入実績とユーザー数の確認
システムの信頼性を測る上で、導入実績やユーザー数は重要な指標となります。
多くの企業で採用され、運用されているシステムは、機能の改善が進んでおり、安定性が高い傾向にあります。導入実績が豊富な企業を選ぶことで、過去の事例に基づいた運用ノウハウの提供も期待できます。公式サイトや比較資料をチェックし、自社と同規模・同業種の企業での採用事例があるか確認してください。また、トライアル版などがダウンロードできる場合は、実際に操作して使い勝手を試すことも有効です。二次利用可能なデータ形式に対応しているかなど、将来的な展開も見据えて検討しましょう。
セキュリティ対策の重要性
健康診断結果やストレスチェックの結果は、極めて機微な個人情報です。そのため、セキュリティ対策は選定における最優先事項といえます。
データ通信の暗号化(SSL/TLS)、不正アクセス防止機能、詳細なアクセス権限の設定など、高いセキュリティレベルが確保されているか確認が必要です。また、個人情報保護法や厚生労働省の指針に準拠し、安全にデータを送信・保存できる環境が整っているかも重要なチェック項目です。一人ひとりのプライバシーを守り、従業員が安心して検査を受けたり、面談を申し込んだりできるシステムを選びましょう。
サポート体制とサービス内容
システムは導入して終わりではなく、その後の運用が重要です。
業務フローに合わせた設定支援や、操作方法のレクチャーなど、サポート体制が充実しているかを確認しましょう。当社のようなベンダー側が、導入後の不明点に対して迅速に回答してくれるチャットサポートや、定期的なユーザー会などのサービスを提供しているかもポイントです。また、法改正に伴う機能変更やアップデートが継続的に行われるクラウド製品であれば、常に最新の状態でプラットフォームを利用できるため、担当者の負担を軽減できます。他システムとの連携機能(API連携など)も確認しておくと良いでしょう。
おすすめの健康管理システム
ここでは、市場で特に評価の高い人気のクラウド型健康管理システムを3つ厳選して紹介します。
(※各システムの特徴は執筆時点の一般的情報に基づきます。最新情報は各社公式サイトをご確認ください)
人気のクラウド健康管理システム一覧
ハピネスパートナーズ
医療DX分野で圧倒的な実績を持つエムスリーグループが提供する、健康経営トータルサポートシステムです。 健康診断の予約・結果管理・労基署報告に加え、ストレスチェックや特殊健診、業務歴管理までを一元化し、業務工数を最大87%削減(※導入試算例)できる強力な業務効率化能力が強みです。
最大の特徴は、独自のAI健康指標「EBHS(エビス)」および「EBHS Life」を標準搭載している点です。健診結果と生活習慣データから、組織の健康状態を偏差値のように可視化するだけでなく、AIが個人の「健康リスク」や「予測寿命」まで解析・スコア化します。これにより、プレゼンティーイズムやワークエンゲージメントといった指標も算出可能となり、人的資本経営で求められる「客観的エビデンス」の提示や、健康経営度調査票の作成を強力にバックアップします。
また、一般的なSaaS(クラウド型)導入で課題となりがちな「システムに合わせた業務フローの変更」を最小限に抑える高いカスタマイズ性も魅力です。「クラウドの手軽さ」と「スクラッチ開発のような柔軟性」を両立しているため、複雑な管理が必要な製造業などでも現場に負担をかけずに導入できます。最短3ヶ月で導入可能で、専門スタッフによる運用定着サポートも充実しています。
健康管理システム「ハピネスパートナーズ」の資料をダウンロード
Carely(ケアリィ)
健康診断やストレスチェックの実施から、産業医面談の調整までをワンストップで管理できるUI/UXの良さが魅力です。特に、従業員とのやり取りや専門家相談がチャットベースで行えるなど、現代的なコミュニケーション機能を備えており、スピーディーな健康経営の推進をサポートします。
Growbase(グロウベース)
数千人〜数万人規模の企業で必要とされる複雑な権限設定や、グループ会社間でのデータ統合に強みを持っています。詳細な検索条件でのデータ抽出や、PDF形式での帳票出力機能など、実務担当者が「欲しい」と思う機能が網羅されています。
これらのシステムは、いずれも検索機能や履歴管理、ペーパーレス化といった基本機能を高水準で備えており、企業の健康意識向上に大きく寄与します。
導入効果とお客様の声
実際にシステムを導入した企業からは、多くのポジティブな声が寄せられています。
ある企業によるハピネスパートナーズの導入試算例では、紙での管理を廃止しクラウド化した結果、健康診断の事務作業時間が最大87%削減されるという結果が出ています。また、「産業医との面談調整がスムーズになり、休職者の復職支援(リワーク)が適切に行えるようになった」という声も聞かれます。
お客様からは、「各種データを一元的に見られるようになり、健康経営銘柄の申請に必要なデータ出力が簡単になった」「従業員から『スマホで結果が見られて便利だ』という声をいただいた」といった感想をいただいています。費用対効果を明確にし、経営層への貢献を示すためにも、具体的な削減時間や効果を測定することをおすすめします。追加機能の要望に対して柔軟に対応してくれるベンダーを選ぶことも成功の鍵です。
導入までの流れ
スムーズな運用のために、導入プロセスを段階的に進めることが大切です。
導入プロセスのステップ
一般的には、以下のステップで導入を行います。
- 現状分析と要件定義: 自社の課題を整理し、必要な機能を明確にします。
- システム選定・契約: 比較検討を行い、契約を締結します。
- 初期設定とデータ移行: 従業員情報の入力や、過去の健診データの取り込みを行います。この段階で、各種マスタの設定を実施します。
- 操作説明会の開催: 担当者および従業員向けに、操作方法の指導や説明会を行います。マニュアルの作成や配布もこの時期に行います。
- 運用開始(テスト運用): 一部の部署で先行して利用を開始し、問題がないか確認します。
- 本稼働と定着化: 全社展開し、運用をフォローします。推進担当者は、利用状況をモニタリングし、必要に応じて運用ルールの見直しを行います。
各ステップでベンダーからのサポートを受けながら、無理のない日程で構築を進めることが成功への近道です。開発を伴うカスタマイズが必要な場合は、さらに期間を要することを考慮しましょう。
健康経営の重要性と未来展望
最後に、これからの企業経営における健康管理の在り方について触れます。
健康経営の概念とメリット
「健康経営」とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。
企業が従業員の健康保持・増進に取り組むことは、単なるコストではなく、将来への投資です。メリットとしては、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果として業績向上や株価向上につながると期待されます。また、離職率の低下や、メンタルヘルス不調による休職の予防、優秀な人材の確保にも効果があります。会社全体で健康診断の受診勧奨を行ったり、健康セミナーを開催したりすることは、従業員にとって「大切にされている」という実感を生み、良い企業風土の醸成につながります。
業界のトレンドと今後の展望
健康管理システム業界は、2026年現在もさらなる進化を続けています。
これまではデータの「管理」が主目的でしたが、現在は収集したデータを活用した「予測・予防」へとフェーズが移行しています。AIによる疾病リスクの予測や、ウェアラブルデバイスとの連携によるリアルタイムなバイタルデータの活用などが、現場レベルで実装され始めています。
単に「悪い人を見つける」だけでなく、「組織の未来を予測する」視点が重要です。
例えば、エムスリーグループが提供する「ハピネスパートナーズ」に標準搭載されている『EBHS Life(エビスライフ)』では、健診結果と生活習慣データから、従業員の「健康余命」や「健康偏差値」をAIが算出します。
「A部署は同業他社平均よりスコアが低い」といった相対評価が可能になるため、経営層に対して「なんとなくの健康施策」ではなく、「数値に基づいた投資対効果(ROI)の明確な健康経営」を提案できるようになります。
また、法令面では、2025年5月に改正労働安全衛生法が公布され、50人未満の事業場におけるストレスチェック義務化の準備期間(公布から3年以内の施行)に入っています。人的資本経営の広がりにより、健康関連データの開示がより一層求められる中、弊社のようなサービス提供側も、グループ企業全体での統合管理や、産業医・保健師向け機能の強化など、市場のニーズに合わせた開発を加速させています。
変化する法規制に対応し、常に最新のソリューションを取り入れていく姿勢が、企業の持続的な成長には不可欠です。
まとめ
クラウド型健康管理システムは、複雑化する健康管理業務を効率化し、企業の健康経営を推進するための強力なツールです。セキュリティ、機能、サポート体制、コストなどを総合的に比較し、自社の課題解決に最適なシステムを選定してください。
従業員の健康は企業の財産です。適切なシステムを導入し、データに基づいた健康管理を実践することで、組織のパフォーマンスを最大化させましょう。
参考文献
- 経済産業省. 「健康経営の推進について」
- 厚生労働省. 「労働安全衛生法に基づく健康診断実施後の措置について」
- エムスリーヘルスデザイン株式会社. 「ハピネスパートナーズ」製品情報
- 株式会社iCARE. 「Carely」製品情報
- 株式会社ウェルネス・コミュニケーションズ. 「Growbase」製品情報
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
健康経営/産業保健コラムシリーズ
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