メンタルヘルスの不調を防ぐセルフケアとは? 実践方法とともに紹介!

健康経営推進に向けたメンタルヘルス対策の促進には、従業員が自分自身でおこなう「セルフケア」の実施も重要になります。メンタルヘルス不調の初期兆候は、肉体の疲労や精神面の違和感など、軽い症状として出始める場合が多く、本人すら気づかないケースも少なくありません。今回は、セルフケアの重要性についてあらためて解説するとともに、日常で実践できるセルフケアの実践方法についても紹介。早期の気づきと対策による上手なセルフケアについて学びましょう。
メンタルヘルス対策におけるセルフケアの重要性

健康経営を進める企業がメンタルヘルスへの取り組みを重視する背景には、厚生労働省が2006年に定めた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」によって職場でのメンタルヘルス対策を指摘していることが、大きなきっかけの一つと考えられます。指針の中では、メンタルヘルス対策を「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」の4つのケアに分類し、それぞれで具体的な取り組み内容が記載されています。その一つである「セルフケア」とは、労働者が自分自身でおこなうメンタルヘルス対策です。
現代において、メンタルヘルス問題は多くの企業がそのリスクを抱えており、日本におけるメンタルヘルス不調による労災請求件数も増加傾向にあります。従業員それぞれが健康なメンタルのもとで最大限に能力を発揮し、活気ある職場と業績向上を実現するためには、企業主体で取り組むメンタルヘルスマネジメントはもちろんながら、従業員それぞれが自分自身のストレスを管理するセルフケアの考え方を学び、実践していくことも同じく重要なのです。
企業が従業員に対して教育すべきセルフケア対策とは
セルフケアは、従業員が自分自身で行うメンタルヘルス対策ですが、メンタル不調がいきなり重症化して現れるケースは稀で、ほとんどの場合は軽い症状から出始めるため、メンタルヘルスについての知識がないと本人すら気づかないことも少なくありません。従業員が自身の違和感を早期に察知して対策をとるために、企業は従業員に対して「ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解」「ストレスへの気づき」「ストレスへの対処」など、セルフケアに関する教育研修や情報提供を積極的に実施していく必要あるでしょう。
まず、メンタルヘルスの不調の兆候には、以下のようなものが考えられるとされています。
身体面での兆候
- 肩こり
- 目の疲れ
- 頭痛
- 疲労
- 倦怠感
- 睡眠不良
精神面での兆候
- 無気力感
- 集中力の欠如
- ネガティブな感情(イライラ、不安、怒り)の増加
- 自責的な考え
- 落ち込み
行動面での兆候
- 遅刻や欠勤の増加
- 仕事におけるミスの増加
- 人付き合いの悪化
- 暴言暴力など攻撃的な言動の増加
- 飲酒喫煙の増加
自身のストレスサインに気づけずに事態を悪化させてしまうケースに備え、企業は従業員へ上記の兆候に対して早期にアラートが出しやすい体制を整えることが重要です。
従業員自身ができるヘルスケア対策の事例

メンタルヘルスケア対策としては、従業員自身が実践できるセルフケアの方法を伝えていくことも企業の役割。下記ではセルフケアの具体例について触れますが、これらを義務として従業員に課してしまうとそれ自体がストレスになりかねないため、自らに合ったセルフケアを選んで実践してもらうことがポイントです。合わせて、セルフケアの実践を従業員に浸透させるためには、適度な休息が仕事の生産性を上げることを啓蒙していくことも必要になります。
職場でできるセルフケアの方法
呼吸法(腹式呼吸)
腹式呼吸は、心身の緊張を緩めるために効果があるとされています。不安や緊張が強くなると呼吸が浅くなり、心拍数が上がって苦しくなるため、休憩時間等に意識して「深い呼吸」を心がけるとよいでしょう。
ストレッチ
長時間同じ姿勢になりがちな職場や、ストレスがかかる職場では、筋肉は緊張しがちです。筋や関節を伸ばす柔軟体操は筋肉の緊張をゆるめて血行を促すため、心身のリラックスに効果的。「両腕を組んで上に伸ばしながら胸を張る」「両腕を組んで前へ伸ばし、おへそをのぞきこむように背中を丸める」「椅子に座ったまま、腰を伸ばして体を後ろにひねり、背もたれをつかむ」「首・肩の力を抜き、首をゆっくりとまわす」といったストレッチは、道具を必要とせず短時間でできるので、職場でも手軽に実践することができます。
笑顔によるコミュニケーション
「笑い」には、自律神経のバランスを整えて、ストレスを軽減する効果があります。また、職場でにっこり笑顔を心がけることは周囲とリラックスした関係を築く上でも有効なので、コミュニケーション上でも健康上でもプラスになると考えられます。余裕がないと笑いが少なくなりやすいので、忙しいときほど意識的に笑顔を意識するとよいでしょう。
日常生活でできるセルフケアの方法
十分な睡眠
睡眠不足は、疲労感や情緒不安定などのストレス増加につながり、メンタル不調にもつながります。布団の中で深呼吸をするなどして、心身ともにリラックスして眠りやすい状態を作るよう心がけてください。また、眠る直前にパソコンやスマートフォンを見る、アルコールやカフェインが入った飲み物を飲む、激しい運動をするといった行動は避けましょう。
気分転換
自分の趣味や好きな活動をして楽しい気分になることは、日々のストレスから目をそらすことにつながります。スポーツをする、ジムに通う、アロマテラピー、映画、ショッピング、カラオケなど日常的な趣味を見つけておくとよいでしょう。旅行やハイキングといったアクティビティも効果的です。
相談
悩みを一人で抱え込まないことは、セルフケアにおいてはとても重要なことです。会社の同僚や上司だけではなく、友人や家族など、プライベートでも相談できる人を見つけましょう。相談することで、自分の中で状況の整理ができたり、意外な視点で物事をとらえるきっかけも生まれやすくなります。
従業員のメンタルヘルス対策は、健康経営にとって必須ではあるものの、ビジネスの現場でストレスをゼロにすることはできません。ある程度ストレスがかかることを前提に、従業員自身が対策となる知識や実践方法を身につけておくことがとても大切です。まずは自身での早期の異変察知と、企業が解決方法を提示できる体制構築を心がけることが重要だといえるでしょう。
<参考URL>
- 労働者の心の健康の保持増進のための指針|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf
- 職場のメンタルヘルス研修ツール|厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/training/
- こころの情報サイト | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
https://kokoro.ncnp.go.jp/

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