健康経営優良法人認定の近道に!? 健康経営で活用したい助成金を解説

健康経営に着手しようとする企業にとって、まず最初にネックになるのがコストの問題。実際にどのくらいの費用がかかるのかがわからなかったり、費用感は掴めたものの予算の準備が難しかったりするなど、さまざまな課題が想定されます。そこで検討したいのが助成金の利用。政府の助成金を利用することで、健康経営実践に向けたハードルを下げることができるかもしれません。今回は健康経営で利用できる助成金について、そのメリットや種類、申請時のポイントを紹介していきます。
コスト削減だけでない! 助成金申請に向けた活動自体が健康経営実践に向けた近道に⁉︎

企業活動に好循環をもたらしてくれる健康経営ですが、その実践のためにはいろいろな費用がかかってくるもの。たとえば、従業員の運動不足解消に向けたジム利用の補助費、産業医の委託費用、健康についての従業員向けセミナーの開催費など、会社の健康課題に合わせて多岐にわたった出費が想定されます。
しかし、こうした施策が福利厚生に役立つと認められ助成金を利用できれば、コストを抑えた施策の展開が可能です。実施内容に応じてさまざまな種類の助成金を複数利用することで、健康経営に向けた全体コストを下げることができるでしょう。
助成金を使うメリットはもう一つ。それは「健康経営優良法人」の認定に向けての近道になることです。「健康経営優良法人」は、健康経営の積極的な取り組みが認められた企業や法人を対象とした認定制度で、経済産業省が定める認定基準を満たす必要があります。実は、助成金の支給要件は健康経営優良法人の認定基準と重なる部分が少なくないため、助成金の支給要件を満たすための活動が、そのまま健康経営優良法人の認定制度に向けた取り組みにもなるのです。
健康経営有料法人に認定されると、健康経営を実践する企業としての説得力や信頼感が生まれ、消費者や投資家など社内外のさまざまなステークホルダーに対してポジティブなイメージをアピールすることができます。
取り組み内容によって助成金の種類もさまざま。自社の目的に合った助成金を選ぼう
健康経営実践のための助成金には、その取り組みの種類によってさまざまな種類が存在します。自社の取り組みに合わせた助成金を選び、申請をするようにしましょう。ここでは、取り組みの方向性ごとに、具体的な助成金の事例を紹介していきます。
①従業員のメンタルヘルス維持・向上に向けた助成金
「ストレスチェック助成金」
従業員数50名未満の事業場が対象となる助成金です(50名以上の事業場でのストレスチェックは義務化されています)。ストレスチェックの実施と、ストレスチェックにもとづく医師からの指導を受けた場合に助成を受けることができます。従業員自身のストレスの認知、また結果を踏まえた職場環境の改善などに役立ちます。
「心の健康づくり計画助成金」
従業員の心の健康保持や増進を目的とした活動を支援するための助成金です。企業が各都道府県の産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の助言・支援にもとづいて「心の健康づくり計画」を作成し、計画を踏まえたメンタルヘルス対策を実施した場合に助成を受けることができます。
②労働環境の改善に向けた助成金
「働き方改革推進支援助成金」
その名の通り、働き方改革を進める企業をサポートするための助成金です。取り組み内容に応じて、「労働時間短縮・年休促進支援コース」「勤務間インターバル導入コース」「労働時間適正管理推進コース」「適用猶予業種等対応コース」「団体推進コース」の5つのコースが設けられ、助成金の額や支給条件も細かく設定されています。
③ワークライフバランスの改善に向けた助成金
「両立支援等助成金」
両立支援等助成金は、仕事と家庭が両立できる職場環境づくりを支援するための助成金で、女性の活躍に取り組む企業を支援するための内容も用意されています。従業員の状況に合わせて、「出生時両立支援コース」「介護離職防止支援コース」「育児休業等支援コース」「不妊治療両立支援コース」の4つに分かれています。
④人材育成に向けた助成金
「キャリアアップ助成金」
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための助成金。正社員化、処遇改善の取り組みを実施した事業者に支給されます。
「職場定着支援助成金」
人材の定着・確保をはかるための助成金です。評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度などの雇用管理制度を導入して雇用管理改善を行った事業者に対して支給されます。
各種条件をしっかりチェック!助成金申請の際の注意ポイント

健康経営促進のための強い後押しとなってくれそうな助成金ですが、その申請に向けてはしっかりとした準備も重要になります。
たとえば、就業規則の整備や従業員管理について。助成金の申請時には、就業規則に関して「最新の法令に適応していない」「実際の運用と異なる」などの内容不備が原因で受給できないケースも…。健康経営企業として持続的事業成長を実現するためにも、まずは労働基準法に則った就業規則や従業員管理を徹底するよう努めましょう。
次に、現状の課題解決に沿った施策と、そのための助成金を選ぶことも大切です。たとえば、離職率を下げるためのメンタルヘルス対策、あるいは従業員のリモートワークを推進するためのインフラ導入など、目的と施策によって申請できる助成金は異なります。自社の課題に対する解決策を見極め、そのための助成金を吟味してください。
また、助成金は申請できる期間が決められています。申し込みが多数の場合は早期締め切りになることもあるので、助成金受給の方針が固まったら手続き方法を確認し、可能な限り早くアクションを起こせるよう心がけてください。
健康経営の導入・継続に向けて、ぜひ活用していきたい助成金ですが、関連する助成金の種類は、多種多様。まずは自社の課題と解決施策を見極め、その上で適切な助成金を探すことが大切なのです。
<参考URL>
- 企業の「健康経営」ガイドブック - 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkokeiei-guidebook2804.pdf
- 健康経営の推進について - 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeiei_gaiyo.pdf
- 「ストレスチェック」実施促進のための助成金のご案内
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000086887.pdf
- 産業保健関係助成金 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000813511.pdf
- 働き方改革推進支援助成金 社会保険労務士法人 clovic
https://clovic-office.com/works/subsidy_apply/work_emp/
- 両立支援等助成金 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html
- キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001083208.pdf

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